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藤原 進之介

株式会社数強塾 代表取締役。数強塾グループ(日本数学塾・日本英語塾・日本国語塾・英論会)創設者。現役時代に数学で挫折し浪人を経て「なぜそうなるか」を徹底追求する指導哲学を確立。一生の役に立つ勉強を全国にオンライン展開。

「鴻門の会」完全解説|史記の名場面・項羽と劉邦の対決を完全読解

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数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!

今回のテーマは、漢文の定番中の定番――「鴻門の会」です。高校の教科書や大学入試問題に頻出のこの場面は、単に読めるだけでは不十分。登場人物の心理・場面の構造・語句の意味まで深く理解してこそ、入試で得点できます。

「鴻門の会って、なんとなくストーリーは知っているけど、試験になると全然点が取れない…」そんな受験生のために、今日は史記・鴻門の会を徹底的に読み解いていきましょう!


はじめに|「鴻門の会」はなぜ入試に頻出なのか

「鴻門の会」は、中国の正史である『史記』(著者:司馬遷)の「項羽本紀」に収録されている場面です。紀元前206年、秦が滅亡した直後の緊張感あふれる一幕を描いた、まさに歴史的名シーン。

なぜ入試に頻出なのか、翔先生に聞いてみました。

「翔先生:鴻門の会が入試に選ばれる理由は三つあります。①登場人物が多く、主語の把握が問われる、②心理描写が豊かで、文脈読解が必要、③漢文特有の構文・語法が凝縮されている。この三点が、入試の出題者にとって”良問を作りやすい素材”なんです。」

つまり、鴻門の会をマスターすることは、漢文全般の読解力向上に直結するのです。ただ話を知っているだけでなく、文章の構造・語句・心理まで丁寧に読む練習として、この記事を最後まで活用してください。


核心情報|「鴻門の会」の全体像を把握する

時代背景:秦末の乱世

物語の舞台は紀元前206年。強大な秦帝国が崩壊し、天下を狙う英雄たちが割拠する乱世です。この時代の主役は二人――項羽(こうう)劉邦(りゅうほう)

  • 項羽:楚の名門出身。武勇は天下無双。感情的で、誇り高い武将。
  • 劉邦:農民出身。知略に優れ、人心掌握に長ける。のちの漢の高祖。

もともと同じ反秦勢力として戦っていた二人ですが、劉邦が先に秦の都・咸陽(かんよう)を落としたことで関係が一変します。

事件の発端:曹無傷の密告

劉邦の部下・曹無傷(そうむしょう)が項羽に密告します。「劉邦は関中の王になろうとしている。秦の財宝を独り占めにするつもりだ」と。これを聞いた項羽は激怒。40万の大軍を率いて劉邦を討つべく進軍します。対する劉邦の兵は10万。圧倒的な兵力差でした。

范増の進言:「今すぐ劉邦を討て」

項羽の参謀・范増(はんぞう)は劉邦の野心を見抜き、こう進言します。

「急撃之、勿失也(急ぎ之を撃て、失う勿れ)」

―今すぐ劉邦を攻撃せよ。この機会を逃すな。

これが鴻門の会の前夜の状況です。

危機を救った張良と項伯

劉邦の軍師・張良(ちょうりょう)は、項羽の叔父・項伯(こうはく)と旧知の間柄でした。項伯は張良に危機を知らせるために劉邦陣営にやってきます。張良はすぐに劉邦に報告し、劉邦は項伯を丁重にもてなして和解を求めます。項伯は劉邦の誠意に感動し、「明日、早く鴻門に来て項羽に謝罪せよ」と助言するのです。


具体的な方法|「鴻門の会」本文を徹底読解

【場面1】劉邦の謝罪と項羽の態度

翌朝、劉邦は少人数の供を連れて鴻門に出向き、項羽に謝罪します。

重要原文:

「臣与将軍戮力而攻秦、将軍戦河北、臣戦河南。」
(臣と将軍と力を戮せて秦を攻む。将軍は河北に戦い、臣は河南に戦う。)

読解ポイント:
ここで劉邦は「臣」という語を使っています。臣とは本来「家臣・部下」を意味する語。つまり劉邦はあえて自分を項羽より低い立場に置いて謝罪しているのです。これは劉邦の人心掌握術の典型。「自分を下げることで相手の怒りを和らげる」という処世術です。

この箇所は入試でも頻繁に問われます。「臣」の意味・主語の特定・劉邦の意図を問う問題が多いので要注意。

項羽はこの謝罪を聞いてあっさり機嫌を直し、劉邦を宴に招きます。ここに項羽の性格の弱点が表れています。感情的で、目の前の謝罪に簡単に流されてしまうのです。

【場面2】范増の合図と項荘の剣舞

宴が始まっても、范増は劉邦を討つことを諦めていませんでした。范増は何度も項羽に合図を送りましたが、項羽は動きません。業を煮やした范増は、項羽の従兄弟・項荘(こうそう)を呼び出し、こう命じます。

「請以剣舞、因撃沛公於坐、殺之。」
(請うらくは剣を以て舞い、因りて沛公を坐に撃ちて、之を殺せ。)

「剣舞を披露するふりをして、その場で劉邦を斬れ」という暗殺指令です。

重要語句チェック:

  • 「請(こう)」…「どうか〜させてください」という願望表現。「請+動詞」の形に注意。
  • 「因(よ)りて」…「そのきっかけに乗じて」という意味の重要副詞。
  • 「沛公(はいこう)」…劉邦の別称。沛の出身であることから。

これが有名な「項荘舞剣、意在沛公」(項荘剣を舞う、意は沛公に在り)のシーンです。「表向きは剣舞、本当の目的は劉邦暗殺」という意味で、現在でも「裏の意図がある行動」を指す故事成語として使われています。

これを見た項伯は、自分も剣を抜いて舞い始め、体を盾にして劉邦を守ります。項伯の行動が劉邦を救ったのです。

【場面3】樊噲の登場―最大の名場面

宴の緊張が高まる中、劉邦の家臣・樊噲(はんかい)が登場します。この場面が鴻門の会最大のクライマックスです。

樊噲は門衛を押しのけて宴席に乱入し、項羽をにらみつけます。項羽は驚きながらも、その威圧感に感心して酒と豚の肉を与えます。

重要原文:

「樊噲覆其盾於地、加彘肩上、抜剣切而啗之。」
(樊噲其の盾を地に覆し、彘肩を上に加え、剣を抜きて切りて之を啗う。)

盾を地面に置いてその上に豚の肩肉を乗せ、剣で切ってがぶりと食らいつく――この豪快な行動が項羽の心を動かしました。

そして樊噲は項羽に向かって堂々と弁舌を振るいます。

「今者有小人之言、令将軍与臣有却。」
(今者小人の言有りて、将軍をして臣と却有らしむ。)

「小人(曹無傷のこと)の讒言のせいで、将軍と沛公の仲に亀裂が入っている」と訴え、劉邦の無実を主張するのです。

読解ポイント:
「令〜有却」は使役構文です。「令(しむ)+A+動詞」で「AをしてVさせる」と読みます。入試最頻出の句法のひとつ。必ず覚えてください。

【場面4】劉邦の脱出

樊噲の弁舌で時間を稼いでいる間に、張良は劉邦に耳打ちします。「今すぐ逃げてください」。劉邦は厠(かわや=トイレ)に立つふりをして席を外し、そのまま自陣へと逃走します。

重要原文:

「如厠、因招樊噲出。」
(厠に如き、因りて樊噲を招きて出づ。)

劉邦は帰り際、張良に白璧(白い玉)を項羽への、玉斗(玉の杯)を范増へのみやげとして渡すよう頼みます。これを受け取った范増は激怒してこう言い放ちます。

「唉、竪子不足与謀。」
(唉、竪子与に謀るに足らず。)

「ああ、あの青二才(項羽)とは一緒に謀略を立てるに値しない!」という絶望の台詞。范増の慨嘆が見事に表れた名文句です。

そして范増はこう予言します。「天下を取るのは必ず劉邦だ。我々はこれから彼の虜になるだろう」と。この予言は的中し、のちに劉邦が漢を建国して天下を統一します。


藤原&翔先生の実践アドバイス

藤原進之介からのアドバイス:「人物関係図を必ず書け」

鴻門の会には実に多くの人物が登場します。項羽・劉邦・范増・張良・項伯・項荘・樊噲・曹無傷――これらを混同すると、主語の把握が完全に崩れます。

対策:本文を読む前に必ず人物関係図を書くこと。

  • 項羽陣営:項羽、范増、項伯、項荘
  • 劉邦陣営:劉邦(沛公)、張良、樊噲、曹無傷(裏切り者)

この図を頭に入れてから本文を読むだけで、読解速度と正確性が格段に上がります。

翔先生からのアドバイス:「句法を場面と紐づけて覚えよ」

「翔先生:鴻門の会には入試頻出の句法がこれでもかと詰まっています。ただ句法を暗記するのではなく、”鴻門の会のあの場面で使われていた”という形で記憶することで、定着率が全然違います。例えば、使役構文の『令〜』は樊噲の台詞で出てくる、再読文字の『将(まさに〜んとす)』は事件の緊迫感を表す場面で使われる、という感じです。物語の文脈と句法をセットで覚えましょう。」


よくある失敗と解決策

失敗①:ストーリーだけ知って文法を軽視する

「鴻門の会は有名だからなんとなく知っている」という受験生ほど危険です。「知っている」と「読める」は全く別物。主語のない漢文の文章で、「これは誰の動作か」を文法的に判断できなければ得点にはなりません。

解決策:本文を音読しながら、一文ごとに「誰が・何を・どうした」を紙に書き出す練習をしましょう。

失敗②:重要語句を文脈から切り離して暗記する

「请(こう)」「因(よ)りて」「竪子(じゅし)」などの語句を単語帳だけで覚えようとすると、文脈の中での意味がつかめません。

解決策:原文の文章ごと暗記するのが最も効果的。特に范増の「竪子不足与謀」や項荘の剣舞の場面は、一文丸ごと覚えてしまうことをおすすめします。

失敗③:人物の心理を読まない

漢文の記述・説明問題では「なぜこの人物はこのような行動をとったか」を説明させる問題が多く出ます。項羽がなぜ劉邦を討てなかったのか、范増がなぜ激怒したのか――人物の心理を丁寧に追わないと、こうした問題には対応できません。

解決策:登場人物ごとにその行動の「動機」をメモしながら読む習慣をつけましょう。


今日からできるアクション

鴻門の会の学習を今すぐスタートするために、具体的な3ステップを示します。

  1. ステップ1:人物関係図を書く(今日中に)
    この記事を参考に、項羽陣営と劉邦陣営の人物関係図をノートに書いてください。各人物の役割と性格を一言で添えると、より効果的です。
  2. ステップ2:頻出句法を本文から抽出する(明日まで)
    使役構文「令〜」、願望表現「請〜」、再読文字「将〜」「未〜」などが鴻門の会のどの場面に出てくるかを確認し、原文と一緒にノートにまとめましょう。
  3. ステップ3:過去問を1題解く(今週中に)
    鴻門の会を扱った過去の入試問題を1題解いてみましょう。センター試験・共通テスト・各大学の個別試験など、多数出題実績があります。解いた後は必ず解説を精読し、主語の判断根拠を確認してください。

まとめ・日本国語塾トップについて

今回は「鴻門の会」(史記・項羽本紀)を徹底解説しました。ポイントを整理します。

  • 鴻門の会は、項羽と劉邦の天下分け目の対決を描いた史記の名場面
  • 登場人物が多く、主語の把握が入試での最重要ポイント
  • 使役・願望・再読文字など、頻出句法が凝縮されている
  • 人物の心理(項羽の感情的な性格・劉邦の処世術・范増の慧眼)を読むことが読解の核心
  • 「項荘舞剣、意在沛公」「竪子不足与謀」などの名文句は丸ごと覚える

史記・鴻門の会は、漢文読解の総合力を鍛える最良の教材です。この記事を何度も読み返し、本文と照らし合わせながら学習を深めてください。

日本国語塾トップは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
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✍️ この記事を監修した人|藤原 進之介

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著書12冊・累計15万部突破KADOKAWA3冊・Gakken3冊・文英堂・ナツメ社等、大手出版社から多数刊行)。2024年共通テスト対策参考書シリーズ全書第1位日本初の情報科目講師・代々木ゼミナール情報I講師・情報ラボ代表。消費者庁シンポジウム登壇(2026年5月)。漢字検定準1級・古文検定1級。
数強塾グループは創業11年の老舗塾。スタディサプリ国語科講師 山下翔平先生も協力。

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