数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
今回のテーマは、大学入試・高校入試で頻出の「万葉集」完全対策です。万葉集は日本最古の和歌集として、センター試験時代から共通テスト・難関大二次試験まで繰り返し出題されてきました。しかし「古語が難しい」「歌人が多くて覚えられない」「どの歌を重点的に学べばいいかわからない」という声を毎年多くの受験生から聞きます。
この記事では、万葉集の全体像から入試頻出歌人の特徴・代表歌の解釈・試験での得点直結ポイントまで、徹底的に解説します。東歌・防人歌・柿本人麻呂・山上憶良など、入試に出やすいテーマをすべて網羅しますので、ぜひ最後までお読みください。
はじめに|万葉集とは何か?入試で重要な理由
万葉集は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された日本最古の和歌集です。全20巻・約4500首を収録し、天皇・貴族から防人(さきもり)・東国の農民まで、あらゆる身分の人々が詠んだ歌が収められています。これが万葉集の最大の特徴であり、入試でも繰り返し問われるポイントです。
万葉集の言葉は「万葉仮名」で書かれており、漢字の音や訓を借りて日本語を表記しています。この表記法の理解も、記述問題・選択問題で問われる重要事項です。
入試で万葉集が重要視される理由は大きく3つあります。
- ①古今集・新古今集との比較問題が頻出:「万葉集の歌風」と「古今集の歌風」の違いを問う問題は、共通テスト・私大入試でほぼ毎年出題されます。
- ②多様な歌人の作風理解が必要:柿本人麻呂・山上憶良・山部赤人・大伴家持など、各歌人の特徴を把握していないと、作者推定問題で失点します。
- ③東歌・防人歌の「庶民の声」は現代文的読解力も試される:テーマの読み取りや感情理解が問われるため、古文読解と現代文的センスの両方が必要です。
核心情報|万葉集の「4分類」と入試頻出ポイント
万葉集の歌は内容によって主に4種類に分類されます。この分類を知るだけで、問題の選択肢を絞り込む力が大幅に上がります。
①雑歌(ぞうか)
宮廷行事・旅・自然詠など、恋愛以外の公的・叙事的な歌。天皇の行幸(ぎょうこう)に際して詠まれた歌や、山や海などの自然を詠んだ歌が多く含まれます。柿本人麻呂の長歌の多くはここに分類されます。
②相聞(そうもん)
恋愛・家族・友人への思いを詠んだ歌。万葉集の中で最も多い分類です。東歌にも多く見られ、素朴で直情的な表現が特徴です。
③挽歌(ばんか)
死者を悼む歌。柿本人麻呂の「石見国(いわみのくに)に妻を留めて上京する歌」や、持統天皇への挽歌などが有名です。
④東歌(あずまうた)・防人歌(さきもりうた)
東歌は東国(関東・東北)の民謡的な歌、防人歌は九州北部の守備に赴いた兵士とその家族の歌です。どちらも庶民の生の声が詠まれており、万葉集の多様性を象徴しています。
万葉集の歌風のキーワードは「ますらをぶり(益荒男振り)」。雄大・素朴・直情的な表現が特徴で、「たをやめぶり(手弱女振り)」と形容される古今集とは対照的です。この対比は入試最頻出の知識ですので、必ず押さえてください。
具体的な方法|入試頻出歌人と代表歌の徹底解説
【歌人①】柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
万葉集を代表する歌人で、「歌聖(かせい)」とも称されます。長歌と短歌を巧みに組み合わせ、壮大なスケールで自然・死・別れを詠みました。入試では「枕詞(まくらことば)」「序詞(じょことば)」の使い方と合わせて問われることが多いです。
代表歌①
「東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ」
(訳)東の野原に夜明けの光が立ちのぼるのが見えて、振り返ると西に月が傾いていた。
軽皇子(かるのみこ、後の文武天皇)の阿騎野(あきの)での狩りに従って詠んだ歌。「かぎろひ」は夜明けに地平線に現れる光の揺らぎを指します。宇宙的な広がりと、皇子への賛仰が込められた壮大な一首です。
代表歌②(挽歌)
「天飛ぶや 鳥も使ひぞ 言問はむ 妹が消息(おとづれ)を 天づたひ来ね」
死んだ妻への深い悲しみを詠んだ挽歌で、魂は鳥として空を飛ぶという当時の死生観が反映されています。入試では「天飛ぶや」の枕詞・「鳥」の象徴的意味が問われます。
入試ポイント:柿本人麻呂の歌では「序詞」の特定が頻出です。序詞とは、特定の言葉を導くための前置き表現で、5音節以上の長さをもちます。「〇〇の」「〇〇の〇〇」の形で出てくることが多いので、注意して読みましょう。
【歌人②】山上憶良(やまのうえのおくら)
山上憶良は、万葉集の中で最も「社会的・思想的」な歌を詠んだ歌人として知られます。貧しい民の苦しみや、子を愛する親の心など、当時としては非常に珍しいテーマを詠みました。
代表歌①「貧窮問答歌(ひんきゅうもんどうか)」
「世の中を 憂しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば」
(訳)この世を辛く、恥ずかしいと思っても、鳥ではないので飛び立つこともできない。
貧窮問答歌は長歌と反歌(はんか)からなる大作で、貧しい農民の生活苦をリアルに描写しています。「地方民衆の声を代弁した歌人」として入試で必ず取り上げられます。
代表歌②「子らを思ふ歌」
「瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ いづくより 来たりしものそ まなかひに もとなかかりて 安眠し寝さぬ」
(訳)瓜を食べると子どものことが思われる。栗を食べるとなおさら偲ばれる。どこからやってきたものか、目の前にちらついて、ぐっすり眠らせてもくれない。
子への愛情を率直に詠んだ歌で、現代人にも共感しやすい内容です。「まなかひ」=「目の前・まぶた」という古語の意味が問われます。
入試ポイント:山上憶良の歌のテーマは「社会批判・家族愛・老い・死」です。問題で「この歌人の特徴として最も適切なものを選べ」という問いが出たとき、「貴族的・優雅」ではなく「庶民的・社会的・思想的」を選ぶのが正解です。
【歌人③】山部赤人(やまべのあかひと)
自然の風景を清澄・優美に詠んだ歌人で、柿本人麻呂と並んで「歌聖」と称されることもあります。
代表歌
「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」
(訳)田子の浦に出てみると、純白の富士山の頂に雪が降り続けている。
「白妙の(しろたへの)」は「白い」を導く枕詞。この歌は百人一首にも採録されているため(ただし百人一首では「降りけり」と表記が異なる)、万葉集版と百人一首版の違いを問う問題も出ます。
【歌人④】大伴家持(おおとものやかもち)
万葉集の最終的な編纂者とも言われる大伴家持。万葉集の中で最も多くの歌(約470首)を収録されている歌人です。越中守(えっちゅうのかみ)として赴任した際に詠んだ自然詠が有名です。
代表歌
「春の野に 霞たなびき うら悲し この夕かげに うぐひす鳴くも」
(訳)春の野に霞がたなびいて、なんとなく悲しい。この夕暮れの光の中で鶯が鳴いている。
「うら悲し」という言葉の意味(なんとなく悲しい)は頻出古語です。
【東歌・防人歌】庶民の声を読む
東歌の特徴:東国の方言・地名が使われ、農作業や恋愛を素朴に詠んだものが多い。作者不明のものがほとんどです。
「信濃道は 今の墾道 刈りばねに 足踏ましなむ 沓はけわが背」
(訳)信濃の道は切り開いたばかりで、切り株に足を踏んでしまいますよ。沓(くつ)を履きなさい、あなた。
妻が夫を心配して詠んだ歌で、庶民の日常が生き生きと描かれています。「墾道(はりみち)」=「切り開いた新しい道」は語句問題として出ます。
防人歌の特徴:家族・故郷への愛惜と、徴兵された悲しみ・不安が詠まれます。大伴家持が防人の歌を収集・整理したとされます。
「韓衣 裾に取りつき 泣く子らを 置きてぞ来ぬや 母なしにして」
(訳)衣の裾にしがみついて泣く子供たちを、置いてきてしまった。母親もいないのに。
防人が出発する際の切ない情景を詠んだ歌です。「韓衣(からごろも)」は当時の衣服を指し、枕詞としても使われます。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原進之介より:万葉集の学習で一番もったいないのは、「歌を丸暗記するだけ」で終わることです。入試は「解釈・文法・文学史知識」の3点セットで問います。特に共通テストでは、複数の歌を並べて「共通するテーマを選べ」という問題が増えています。歌のテーマ・感情・修辞技法の3つを1セットで覚える習慣をつけてください。
翔先生より:私が受験生によく伝えるのは「歌人の”立場”から歌を読む」という視点です。柿本人麻呂は宮廷歌人として天皇・皇族を賛美する立場、山上憶良は地方官として民の苦しみを見た立場、防人は農民として徴兵された立場──この「立場の違い」を意識するだけで、テーマの読み取り問題の正答率が劇的に上がります。
よくある失敗と解決策
失敗①:枕詞と序詞を混同する
解決策:枕詞は「5音節・特定の語を導く・意味は薄い」、序詞は「5音節以上・自由に作られる・前後に意味的つながりがある」と整理。例えば「足引きの(あしびきの)」は枕詞(「山」を導く)、「あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」の前半部分は序詞の構造です。
失敗②:万葉集・古今集・新古今集の歌風の違いを曖昧にする
解決策:3点を表でまとめる。①万葉集=ますらをぶり・素朴・直情的、②古今集=たをやめぶり・技巧的・知的、③新古今集=幽玄・余情・本歌取り。この対比は選択肢を作るときのキーワードとして直接使われます。
失敗③:東歌・防人歌を「なんとなく読めばいい」と思う
解決策:東歌は「方言・地名・農村生活の語彙」、防人歌は「家族離別・徴兵の悲しみ」というテーマを必ず押さえる。また、東歌の作者は「不明(民衆)」、防人歌は「兵士・家族」という点も文学史問題で問われます。
失敗④:「万葉仮名」の仕組みを知らない
解決策:万葉仮名は「漢字の音(おん)または訓(くん)を借りて日本語の音節を表す」仕組みです。例えば「安(あ)」「以(い)」「宇(う)」のように使います。難関大では万葉仮名で書かれた原文の読み問題が出ることもあるため、基本的な仕組みは理解しておきましょう。
今日からできるアクション
- 万葉集の「4分類(雑歌・相聞・挽歌・東歌防人歌)」を今すぐノートにまとめる:それぞれの特徴と代表歌を1首ずつ書き出してください。これだけで文学史問題の7割は解けるようになります。
- 頻出歌人5人(人麻呂・憶良・赤人・家持+東歌防人)の「歌風キーワード」をカード化する:「柿本人麻呂=壮大・枕詞・序詞・挽歌」「山上憶良=社会批判・家族愛・貧窮」など、1人1枚のカードにまとめて毎日見返しましょう。
- 修辞技法(枕詞・序詞・掛詞・縁語)を万葉集の歌で実際に確認する:教科書や問題集の万葉集の歌で、どの技法が使われているかを印をつけながら読む習慣をつけてください。
- 過去問で万葉集の出題パターンを把握する:共通テストの過去問・志望大学の過去問で万葉集がどのように出題されているかを分析してください。「現代語訳→語句の意味→作者の心情→文学史知識」の順に問われることが多いです。
- 万葉集と古今集・新古今集の歌を並べて読み比べる:同じ「秋の夕暮れ」をテーマにした歌でも、万葉集と新古今集では全く異なる表現になります。この「読み比べ」練習が、比較問題への対応力を最も効率よく上げる方法です。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回は「万葉集」完全対策として、東歌・防人歌・柿本人麻呂から山上憶良まで、入試頻出歌人を徹底解説しました。
おさらいをしましょう。
- 万葉集の歌風は「ますらをぶり」=素朴・直情的・雄大
- 柿本人麻呂は「歌聖」・序詞・枕詞・壮大な長歌が特徴
- 山上憶良は「社会批判・家族愛・貧窮問答歌」が入試の核心
- 東歌は庶民の民謡的な歌、防人歌は離別・故郷への思いが主テーマ
- 万葉集・古今集・新古今集の「3大和歌集の比較」は最重要知識
万葉集は、覚えるべき量は多いですが、「歌人の立場」と「テーマ・歌風・修辞技法の3点セット」で整理すれば、確実に得点源にできます。ぜひ今日から実践してください!
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