はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
「源氏物語」「竹取物語」「伊勢物語」──古文の入試対策といえば、まずこれらの有名作品が頭に浮かぶことでしょう。しかし、近年の大学入試・高校入試では、いわゆる”マイナー平安物語”からの出題が増加傾向にあります。その代表格が、今回取り上げる「大和物語(やまとものがたり)」と「宇津保物語(うつほものがたり)」です。
「聞いたことはあるけれど、どんな話かよく知らない」「授業でほとんど扱われなかった」という受験生が多いのではないでしょうか。実はこの”知られていない”という点こそが、出題者にとって魅力的なのです。受験生の差がつきやすい、言い換えれば、しっかり対策した人が大きく得点できる分野でもあります。
この記事では、大和物語・宇津保物語の入試対策として、作品の基本知識から頻出場面の読み方、実践的な解き方のコツまでを徹底解説します。翔先生との対話形式も交えながら、受験生の皆さんが「なるほど!」と感じられる内容をお届けします。ぜひ最後までお読みください。
核心情報|大和物語・宇津保物語とはどんな作品か
大和物語(やまとものがたり)とは
大和物語は、10世紀中頃(平安中期)に成立した歌物語です。作者は未詳とされていますが、宮廷に近い人物による編纂と考えられています。全173段から成り、和歌を中心に展開する短編エピソードの集合体です。
「歌物語」というジャンルの特徴として、和歌そのものが物語の核心を担います。登場人物が感情を和歌で表現し、その贈答(歌のやりとり)によって物語が動いていきます。伊勢物語と同じ歌物語のジャンルに属しますが、大和物語はより「実在の人物・実際の出来事」に基づいたエピソードが多く、歴史的・社会的背景が色濃いのが特徴です。
入試で問われやすい有名場面:
- 「姨捨(おばすて)」の段(第156段)──老いた継母を山に捨てに行く話。心情描写が豊かで、主人公が月を見て後悔する場面が頻出
- 在原業平・小野小町にまつわるエピソード──有名歌人の逸話が多数収録
- 藤原師輔・村上天皇周辺の宮廷エピソード──貴族社会の機微を描く場面
宇津保物語(うつほものがたり)とは
宇津保物語は、大和物語よりやや遅れて10世紀後半頃に成立したとされる、日本最古の長編物語の一つです。全20巻・約400話にのぼる大作で、源順(みなもとのしたごう)作という説もありますが確定していません。
物語の基本構造は二本柱です。一つは「琴(きん)の秘曲伝授」をめぐる音楽譚、もう一つは「あて宮(あてみや)をめぐる求婚譚」です。主人公・俊蔭(としかげ)がペルシャ(波斯)に漂着して琴の秘曲を学ぶという、当時としては異国情緒あふれる設定から物語が始まります。
入試で問われやすい有名場面:
- 「俊蔭」巻──漂流・秘曲伝授の場面。漢籍の影響が強く、語彙レベルが高い
- 「あて宮」をめぐる求婚場面──複数の貴公子が求婚し、それぞれの心情が描かれる
- 「楼の上」巻──琴の演奏場面。音楽と感動の描写が美しく、情景描写問題として頻出
- 「忠こそ」巻──主従関係・忠義をテーマとした場面
具体的な方法|大和物語・宇津保物語の読み方と解き方
①歌物語の読み方:和歌と地の文をセットで理解する
大和物語のような歌物語では、「和歌は地の文の感情の結晶」という意識が最も大切です。入試問題では「この和歌はどのような心情を表しているか」という問いが定番ですが、和歌単体を読んでも答えにくいことが多い。必ず直前の地の文とセットで読むことが鉄則です。
具体例:大和物語「姨捨」の場面
「わが心なぐさめかねつ更科や姨捨山に照る月を見て」
この有名な和歌は、山に老いた伯母(継母)を捨てて帰った男が、月を見て後悔する場面で詠まれます。地の文には「男、いとあはれとおぼえて」(男は、とてもしみじみと感じて)とあります。地の文で「あはれ」という感情が示されており、和歌の「なぐさめかねつ」(慰めることができない)と対応しています。このように地の文のキーワード感情語→和歌の対応表現を結びつけるのが解答の基本です。
②宇津保物語:漢語・異国場面の読み方
宇津保物語の難しさの一つは、漢籍(中国の文章)の影響を受けた表現や、異国の描写が多い点です。「俊蔭」巻ではペルシャ・インドを思わせる異国の地が登場し、固有名詞や地名が多く出てきます。
翔先生のワンポイント:
「宇津保物語の異国場面で重要なのは、固有名詞に惑わされないことです。『この人物は誰か』より『この場面で何が起きているか』『主人公はどんな状況に置かれているか』を大局的に把握することを優先しましょう。入試問題の設問もほぼそこを問います。」
③頻出文法:係り結び・敬語の徹底チェック
平安物語全般に言えることですが、係り結びと敬語の識別は必須の文法事項です。大和物語・宇津保物語でも例外ではありません。
係り結びの確認例(大和物語より):
「いかでかは」+已然形、「なむ」+連体形、「ぞ」+連体形──これらが文末でどのように結ばれているかを必ず確認しましょう。特に大和物語は短い文章の中に係り結びが密集することがあります。
敬語の確認ポイント:
宇津保物語は登場人物が多く、誰が誰に対して敬意を示しているかが複雑になりやすい。「給ふ(たまふ)」「奉る(たてまつる)」「申す(もうす)」などの基本敬語動詞の方向性(尊敬・謙譲・丁寧)を整理した上で本文を読むと、人物関係が格段に把握しやすくなります。
④あらすじ予備知識で「文脈の穴」を補う
入試では本文の一部だけが抜粋されます。前後の文脈がわからない状態で読まなければならないため、作品全体のあらすじを知っているかどうかが解答の精度に直結します。
大和物語のあらすじ把握ポイント:
- 宮廷の人物関係(天皇・后・貴族たち)を大まかに押さえる
- 「姨捨」「蘆刈(あしかり)」「小野小町」関連の段は内容を頭に入れておく
- 各段は基本的に独立しているので、個別エピソードとして暗記しやすい
宇津保物語のあらすじ把握ポイント:
- 俊蔭→仲忠(なかただ)という二世代にわたる物語の流れを把握する
- 「琴の秘曲」が物語のシンボル的存在であることを意識する
- 「あて宮求婚譚」では、求婚者たちの序列・関係性を整理する
⑤設問タイプ別・解答の作り方
【現代語訳問題】
大和物語・宇津保物語の現代語訳問題では、古語の意味を直訳するだけでなく、文脈に合った自然な日本語に直すことが求められます。特に「あはれ」「をかし」「なほ」「いと」などの頻出古語は、文脈によって訳し方が変わることを意識しましょう。
【心情説明問題】
心情問題では「なぜその行動をとったか」という因果関係を明確にすることが重要です。大和物語の「姨捨」であれば「月を見て→姨捨山を連想→伯母を捨てた罪悪感がよみがえった→心が慰まらない」という因果の連鎖を答案に反映させます。
【主語補足問題】
平安物語全般で最難関なのが「誰が~したのか」という主語特定問題です。敬語の方向性を手がかりにしつつ、文脈上自然な主語を探す習慣をつけましょう。「給ふ」が付いていれば主語は貴人、「申す」「奉る」なら主語は目上の人物に対する行為者、という基本原則を徹底します。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原進之介からのアドバイス
私が多くの受験生を指導してきた経験から言えることは、「マイナー古典ほど、基本に忠実な読み方が光る」ということです。大和物語・宇津保物語は源氏物語ほど授業で詳しく扱われません。だからこそ、本番で初見の文章として出題されたとき、文法・語彙・文脈読解の基礎力がそのまま得点に直結します。
特に強調したいのは、「和歌の前後の文脈を必ず読む」習慣です。和歌だけ見て意味をとろうとして詰まる受験生が非常に多い。地の文が感情の説明をしてくれていることがほとんどです。「和歌は地の文の感情の凝縮」と覚えておいてください。
翔先生からのアドバイス
僕が受験生に伝えたいのは「宇津保物語は怖くない」ということです(笑)。確かにボリュームは圧倒的ですし、漢語も多い。でも入試で出るのは必ず一部の抜粋です。そして設問は、どの大学の問題も「この人物の気持ちは?」「この行動の理由は?」「この文を現代語訳せよ」という普遍的な問いに収束します。
宇津保物語で使える具体的なテクニックとして、「音楽・演奏場面が出たら感動・感激の方向の心情で読む」ことをお勧めします。琴の演奏場面では、聴いている人物が必ず深く感動します。その感動の描写が問われることが多いので、「この人物はなぜ感動しているのか」を常に考えながら読んでください。
よくある失敗と解決策
失敗①「有名作品だけ勉強して本番で知らない作品が出た」
解決策:平安物語の”第二層”まで学習範囲を広げる。具体的には、大和物語・宇津保物語のほかに「落窪物語」「平中物語」なども概要だけ把握しておくと安心です。日本国語塾TOPでは、こうしたマイナー古典の効率的なインプット方法も指導しています。
失敗②「和歌の意味だけ調べて文脈を無視した」
解決策:和歌の前後2〜3文を必ずセットで確認する習慣をつける。特に大和物語の問題では、和歌の直前の「~とて(言って)」「~とおぼえて(感じて)」という表現が答えのヒントになることが多い。
失敗③「登場人物が多くて誰が誰かわからなくなった」
解決策:読み始めたら即座に「登場人物メモ」を余白に作る。特に宇津保物語は登場人物が多い長編作品なので、「Aは~の息子」「Bは宮中の女官」など関係性を整理しながら読むと混乱が防げます。入試の問題文には注釈が付いていることも多いので、注釈を最初に全部読む習慣も効果的です。
失敗④「『あはれ』を全部『かわいそう』と訳してしまう」
解決策:「あはれ」は「しみじみとした感動・感慨」が基本義であり、悲しみ・愛おしさ・感謝・感動など幅広い感情を含みます。大和物語の「姨捨」場面で「あはれ」が出てきたら「しみじみと感慨深い・心が痛む」という方向で訳すのが適切です。文脈から感情の方向性を必ず確認しましょう。
今日からできるアクション
以下のステップで、今日から大和物語・宇津保物語の入試対策を始めましょう。
-
【今日】あらすじを5分でインプット
大和物語「姨捨」の段、宇津保物語「俊蔭」巻のあらすじをWikiや参考書で確認。「どんな話か」を30秒で説明できるレベルまで把握する。 -
【今週】原文を一段・一場面読んでみる
大和物語の「姨捨」段(短いのでおすすめ)を現代語訳と照らし合わせながら原文で読む。和歌の前後の文脈チェックを実践してみる。 -
【今月】過去問で実際の設問に慣れる
各大学の過去問・模試の中から大和物語・宇津保物語の出題を探して解いてみる。設問のパターン(現代語訳・心情・主語特定)ごとに自分の弱点を洗い出す。 -
【継続】古語・文法の基礎固めと並行する
どんなマイナー古典が出ても対応できる「基礎力」こそが最大の武器。古語300語・文法(係り結び・敬語・助動詞)の反復練習を毎日続けること。
まとめ・日本国語塾トップについて
この記事では、大和物語・宇津保物語の入試対策として以下の内容を解説しました。
- 大和物語は歌物語。「和歌+地の文」をセットで読むことが鉄則
- 宇津保物語は日本最古の長編物語。琴の秘曲伝授と求婚譚が二大テーマ
- 頻出場面(姨捨・俊蔭・楼の上など)のあらすじを事前に把握しておく
- 係り結び・敬語・古語の基礎文法が「マイナー作品」ほど得点を左右する
- 設問タイプ(現代語訳・心情説明・主語特定)ごとの解答作成の型を身につける
大和物語・宇津保物語は、しっかり対策した受験生とそうでない受験生の差が最も開く分野の一つです。「知られていないから怖い」ではなく、「知っているから強い」という状態を作り上げてください。
日本国語塾トップでは、このような平安古典の読み方から現代文・小論文まで、国語全般を専門家が徹底指導しています。志望校に合わせたオーダーメイドカリキュラムで、一人ひとりの弱点を着実に克服します。
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