はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、今回は「傍線部説明」シリーズの第4回ですね。
翔先生:はい。今回は10本の短い評論文を用意しました。テーマは言語、情報、教育、環境など、入試現代文でよく出るジャンルを幅広くカバーしています。
藤原:傍線部説明の基本は「傍線部の言葉を、本文中の別の言葉で言い換える」ことでしたね。
翔先生:その通りです。今回は特に「指示語が何を指しているか」「抽象的な言葉を具体的に説明できるか」を意識してもらいたいです。1問ずつ短いので、テンポよく解いて、必ず自分で解答を書いてから解説を読んでください。
藤原:それでは全10問、挑戦してみましょう。
問題(全10問)
第1問
言語は単なる情報伝達の道具ではない。私たちはある物事を言葉で名付けることによって、初めてその物事を意識の中で明確な形として捉えることができる。名付けられていない感情や現象は、私たちの意識の中では曖昧模糊としたまま、輪郭を持たずに漂い続けるのである。その意味で、言葉は世界を「見えるもの」に変える装置だと言える。
問:傍線部「言葉は世界を『見えるもの』に変える装置だと言える」とはどういうことか、40字以内で説明せよ。
第2問
情報化社会において、私たちは大量の情報に囲まれながら生活している。しかし情報の量が増えたからといって、私たちの理解が深まったとは限らない。むしろ情報を選び取り、吟味する時間が奪われることで、私たちは「知っているつもり」の状態に陥りやすくなっている。
問:傍線部「『知っているつもり』の状態」とはどのような状態か、35字以内で説明せよ。
第3問
教育の目的は、単に知識を詰め込むことではない。知識はいずれ古くなり、忘れられていくものだからだ。それよりも重要なのは、新しい状況に直面したときに自分の頭で考え、答えを探し出す力を養うことである。つまり教育とは、答えを与えることではなく、問いを立てる力を育てる営みなのだ。
問:傍線部「教育とは、問いを立てる力を育てる営みなのだ」とはどういうことか、40字以内で説明せよ。
第4問
環境問題への取り組みは、しばしば「我慢」という言葉と結びつけて語られる。しかし本来、持続可能な暮らしとは、資源を浪費しないことによって、将来にわたって豊かさを享受し続けることを意味するはずである。それを「我慢」と呼んでしまうことには問題がある。
問:傍線部「それを『我慢』と呼んでしまうことには問題がある」のはなぜか、45字以内で説明せよ。
第5問
私たちは他者を理解しようとするとき、しばしば自分の経験や価値観を基準にしてしまう。しかし他者は自分とは異なる背景を持つ存在であり、自分の物差しだけで測ろうとすれば、必ず理解にずれが生じる。他者理解とは、まず自分の物差しを一度手放すことから始まるのである。
問:傍線部「自分の物差しを一度手放すこと」とはどういうことか、35字以内で説明せよ。
第6問
伝統芸能の世界では、師から弟子へと技が受け継がれていく。だがそれは同じ型をそのまま複製することではない。弟子は師の型を徹底的に学びながらも、そこに自分なりの解釈を加えていく。伝統とは、変化を拒む固定した形ではなく、更新され続ける生きた営みなのである。
問:傍線部「伝統とは、更新され続ける生きた営みなのである」とはどういうことか、45字以内で説明せよ。
第7問
科学は自然の法則を明らかにする営みだと考えられがちである。しかし科学が明らかにするのは、あくまで人間が観察し、測定できる範囲の自然である。その意味で、科学が描き出す自然像には、常に人間の視点というフィルターがかかっている。
問:傍線部「人間の視点というフィルターがかかっている」とはどういうことか、40字以内で説明せよ。
第8問
現代社会では労働時間の短縮が進み、余暇の時間が増えたと言われる。しかし多くの人はその余暇を、仕事の疲れを癒すためだけに費やしてしまう。本来、余暇とは労働の付属物ではなく、それ自体が人生を豊かにする独立した価値を持つはずである。
問:傍線部「余暇とは労働の付属物ではなく、それ自体が人生を豊かにする独立した価値を持つ」とはどういうことか、45字以内で説明せよ。
第9問
私たちは過去の出来事を、記憶という形で保持していると考えている。しかし記憶は録画のように過去をそのまま保存しているわけではない。記憶は思い出すたびに、その時々の感情や状況によって書き換えられている。記憶とは、固定された過去の記録ではなく、絶えず作り直される物語なのである。
問:傍線部「記憶とは、絶えず作り直される物語なのである」とはどういうことか、40字以内で説明せよ。
第10問
芸術作品を鑑賞するとき、私たちはしばしば作者の意図を正確に読み取ることを目指しがちである。しかし作品は完成した瞬間から作者の手を離れ、鑑賞者一人ひとりの経験や感性によって新たな意味を与えられていく。作品の意味は作者だけでなく、鑑賞者との対話によって生まれるのである。
問:傍線部「作品の意味は作者だけでなく、鑑賞者との対話によって生まれるのである」とはどういうことか、45字以内で説明せよ。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答例:言葉によって名付けることで、曖昧だった物事が意識の中で明確な形として捉えられるということ。(44字)
傍線部の「見えるもの」とは、視覚で見えるという意味ではなく、意識の中ではっきりと輪郭を持って捉えられる状態を指しています。直前の「名付けられていない感情や現象は…輪郭を持たずに漂い続ける」という一文と対比して読むと、名付けることで曖昧なものが明確になる、という構造が見えてきます。間違えやすいのは「見えるもの」を字義通りに視覚情報と捉えてしまうことです。比喩表現は必ず本文の文脈に戻して具体化しましょう。
第2問の解答と解説
解答例:情報を吟味せずに触れただけで、内容を十分理解した気になっている状態。(33字)
傍線部直前の「情報を選び取り、吟味する時間が奪われる」という原因と、「知っているつもり」という結果をセットで理解することがポイントです。「つもり」という言葉は「実際にはそうではないのに、そう思い込んでいる」という意味を持つので、これを解答に反映させる必要があります。解説なしで「知っているつもり」を単に「知っている状態」と書いてしまうと、実態とのズレが表現できず減点対象になります。
第3問の解答と解説
解答例:知識を教え込むのではなく、自ら考え問いを見つけ出す力を育てることが教育の本質だということ。(44字)
この問題は、傍線部の前にある「知識はいずれ古くなり」「新しい状況に…自分の頭で考え」という部分を丁寧に拾えるかがカギです。「問いを立てる力」を「答えを覚える力」と混同すると誤答になります。本文は明確に「答えを与えることではなく」と対比構造を作っているので、対比の片方だけを書かず、両方を踏まえて解答を作ることが大切です。
第4問の解答と解説
解答例:持続可能な暮らしは将来の豊かさを守るための前向きな行為であり、我慢という否定的な言葉はその本質を捉え損ねているから。(55字程度→要圧縮)
圧縮解答:持続可能な暮らしは将来の豊かさを守るための前向きな営みであり、否定的な言葉では実態を表せないから。(45字)
理由説明の問題では、傍線部を導く直前の一文「本来…将来にわたって豊かさを享受し続けることを意味する」を根拠として使うことが基本です。「我慢」という言葉が持つマイナスのイメージと、本文が伝えたいプラスの意味とのズレを指摘できているかが採点のポイントになります。単に「我慢はつらいことだから」など本文にない一般論で答えると、根拠不足で減点されるので注意しましょう。
第5問の解答と解説
解答例:自分の経験や価値観を基準にして他者を判断する態度を、いったんやめること。(34字)
「物差し」は比喩表現で、直前の「自分の経験や価値観」を指しています。「手放す」は完全に捨てるという意味ではなく、いったん保留する、判断基準として使わないようにする、という意味で使われています。この微妙なニュアンスを「捨てる」と強く言い切ってしまうと、本文の意図から外れる可能性があるため注意が必要です。比喩の指示内容を本文から正確に拾えるかが得点の分かれ目です。
第6問の解答と解説
解答例:師の型を学びつつ弟子が自分なりの解釈を加えることで、伝統は変化しながら受け継がれていくということ。(45字)
傍線部は「固定した形ではなく」という否定と、「更新され続ける生きた営み」という肯定が対になっています。この対比構造をそのまま解答に反映させることが重要です。前段落の「師の型を徹底的に学びながらも…自分なりの解釈を加えていく」という具体例を使って抽象的な傍線部を説明するのが基礎的な傍線部説明の型です。具体例をそのまま書き写すのではなく、一般化してまとめる練習をしましょう。
第7問の解答と解説
解答例:科学が明らかにする自然像は、人間が観察・測定できる範囲に限られたものだということ。(40字)
「フィルターがかかっている」という比喩は、「純粋な自然そのものではなく、何かを通して見た自然である」という意味です。直前の「人間が観察し、測定できる範囲の自然である」という部分がそのまま言い換えの手がかりになります。比喩表現をそのまま解答に使うと説明になっていないと判断されるため、必ず比喩を分かりやすい言葉に置き換えることを意識してください。
第8問の解答と解説
解答例:余暇は仕事の疲れを癒すための手段ではなく、それ自体に人生を豊かにする価値があるということ。(44字)
「付属物ではなく」という否定表現と「独立した価値を持つ」という肯定表現が対になっている点に注目しましょう。本文冒頭で述べられている「多くの人は余暇を仕事の疲れを癒すためだけに費やしている」という現状への批判が、傍線部の前提になっています。この現状批判を無視して「余暇は大切だ」とだけ書くと、本文の主張の核心である「独立した価値」という点が抜け落ちてしまいます。
第9問の解答と解説
解答例:記憶は過去をそのまま保存するのではなく、思い出すたびにその時の感情や状況で作り変えられるということ。(46字→調整)
調整解答:記憶は過去をそのまま保存するのではなく、思い出すたびに作り変えられるということ。(38字)
「録画のように…保存しているわけではない」という否定と、「思い出すたびに…書き換えられている」という肯定を対比的に整理することが解答のポイントです。「物語」という比喩は「事実そのものではなく、再構成されたもの」という意味を持つので、そのまま「物語」と書くのではなく、内容を具体的に説明する必要があります。
第10問の解答と解説
解答例:作品の意味は作者の意図だけで決まるのではなく、鑑賞者が自分の経験をもとに解釈することで新たに作られていくということ。(56字→調整)
調整解答:作品の意味は作者の意図だけでなく、鑑賞者の解釈によっても新たに作られていくということ。(44字)
「対話」という比喩表現は、作者と鑑賞者が一方通行ではなく、双方の関わりによって意味が生まれることを示しています。直前の「鑑賞者一人ひとりの経験や感性によって新たな意味を与えられていく」という部分を使えば、比喩を具体化できます。「作者の意図を無視してよい」という極端な解釈にならないよう、「作者だけでなく」という部分もきちんと解答に残すことが大切です。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問に共通しているのは、傍線部に必ず比喩や抽象的な言葉が含まれているという点です。
藤原:そうですね。「装置」「フィルター」「物語」「対話」といった比喩表現は、そのまま解答に使うと減点対象になります。必ず本文中の具体的な言葉に置き換える練習をしましょう。
翔先生:もう一つのコツは、傍線部の前後にある「〜ではなく、〜である」という対比構造を見つけることです。この対比を両方とも解答に反映させると、部分点ではなく満点解答になりやすいです。
藤原:字数制限がある問題では、対比の片方だけを書いて字数を使い切ってしまう受験生が多いので、まず両方の要素を書き出してから、字数に合わせて削る順番で練習すると良いですよ。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は「傍線部説明」シリーズ第4回として、比喩表現と対比構造に焦点を当てた10問をご用意しました。傍線部説明の基本は、①比喩を具体的な言葉に置き換えること、②本文中の対比構造を両方とも解答に反映させること、この2点に尽きます。繰り返し練習して、自分の解答が本文の言葉にきちんと根拠を持っているかを確認する習慣をつけていきましょう。
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