はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、今回は古典文法の中でも入試で最も出題頻度が高い「助動詞」を扱いますね。
翔先生:そうですね。助動詞は「意味」「活用」「接続」の3点セットで覚える必要があります。この3つのうち一つでも曖昧だと、文中での意味の識別ができなくなってしまうんです。
藤原:今回の第1回は基礎編として、「る・らる」「す・さす」「き・けり」「たり・り」「む」「べし」「まじ」「なり」「じ」「まし」という頻出助動詞を1問ずつ、計10問で確認していきます。
翔先生:解答は一つに定まるように作ってありますので、しっかり根拠を持って答えてくださいね。それでは早速いきましょう!
問題(全10問)
第1問
次の例文の傍線部「られ」の意味として最も適切なものを、あとのア〜エから選びなさい。
「夜更けて、ふと昔のことが思ひ出られて、涙こぼれぬ。」(※学習用に作成した例文です)
ア 受身 イ 可能 ウ 自発 エ 尊敬
第2問
次の例文の傍線部「せ」の意味として最も適切なものを、あとのア・イから選びなさい。
「大臣、人をして花を摘ませたまふ。」(※学習用に作成した例文です)
ア 使役 イ 尊敬
第3問
次の一文は『伊勢物語』の冒頭文である。傍線部「けり」の活用形を答えなさい。
「昔、男ありけり。」(『伊勢物語』第一段)
第4問
次のa・bの例文の傍線部について、それぞれ何の助動詞の何形に接続しているか、接続の観点から違いを説明しなさい。
a 「花咲きたり。」(※学習用に作成した例文です)
b 「花咲けり。」(※学習用に作成した例文です)
※b は「り」が接続した形である点に注意すること。
第5問
次の例文の傍線部「む」の意味として最も適切なものを、あとのア〜エから選びなさい。
「われ、来春こそ都へ上らむと思ふ。」(※学習用に作成した例文です)
ア 推量 イ 意志 ウ 仮定 エ 勧誘
第6問
次の例文の傍線部「べし」の意味として最も適切なものを、あとのア〜エから選びなさい。
「空の様子を見るに、今日は雨降るべし。」(※学習用に作成した例文です)
ア 意志 イ 推量 ウ 命令 エ 可能
第7問
次の例文の傍線部「まじ」の意味として最も適切なものを、あとのア〜エから選びなさい。
「かかる大雨に、今日は出づまじ。」(※学習用に作成した例文です)
ア 打消意志 イ 打消推量 ウ 禁止 エ 不可能
第8問
次のa・bの例文の傍線部「なり」について、それぞれの意味を答えなさい。
a 「これは都より参りたる文なり。」(※学習用に作成した例文です)
b 「奥の方に人の声すなり。」(※学習用に作成した例文です)
第9問
次の例文の傍線部「じ」の意味として最も適切なものを、あとのア・イから選びなさい。
「今日はいかなることあらむとも、われは決して行かじ。」(※学習用に作成した例文です)
ア 打消意志 イ 打消推量
第10問
次の例文の傍線部「まし」の意味を、文法的根拠を示して説明しなさい。
「もし雨降らば、出でざらまし。」(※学習用に作成した例文です)
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:ウ 自発
「思ひ出でらる」の「らる」は、心情や感覚を表す動詞(「思ふ」「思ひ出づ」「見る」など)に付くと、動作主の意志とは関係なく自然にそうなる「自発」の意味になります。ここでは「昔のことが自然と思い出されて」という意味なので自発です。「られ」があるからといって機械的に受身と判断するのが最も多い誤答パターンです。自発は主語が動作主本人であり、かつ心情語に付く点が受身との大きな違いです。可能は下に打消を伴うことが多く、尊敬は主語が高貴な人物である必要があるため、この文脈ではいずれも成立しません。
第2問の解答と解説
解答:ア 使役
「せ」は使役・尊敬の助動詞「す」の連用形です。この文では「大臣が、人をして(=人に命じて)花を摘ませる」という構造になっており、動作主の大臣自身が花を摘むのではなく、他者(人)に摘む動作をさせています。使役の助動詞の後に敬語「たまふ」が続く「せたまふ」の形は、使役+尊敬の二重構造になっていることが非常に多く、この形をすべて尊敬と誤読してしまうミスが頻出です。「〜をして…す」という表現がある場合は使役と判断するのが確実な見分け方です。
第3問の解答と解説
解答:終止形
「けり」はラ変型に活用する過去の助動詞で、活用は(未然形なし)(連用形なし)けり(終止形)けり(連体形)けれ(已然形)けれ(命令形なし)です。「男ありけり。」は文末で言い切られているため、ここでの「けり」は終止形です。「けり」は連体形も「けり」と同形(例:「〜ける」ではなく「〜ける」は連体形専用)になる点に注意が必要で、文中か文末かで判断するのがポイントです。今回は句点で文が終わっているため、迷わず終止形と判断できます。
第4問の解答と解説
解答:aは連用形接続の完了の助動詞「たり」、bは已然形接続の完了の助動詞「り」である。
aの「咲きたり」は、四段動詞「咲く」の連用形「咲き」に完了の助動詞「たり」が接続した形です。一方、bの「咲けり」は、四段動詞「咲く」の已然形「咲け」に完了の助動詞「り」が接続した形です。「り」は原則として四段動詞の已然形、またはサ変動詞の未然形にしか接続しないという非常に特殊な接続のルールを持つ助動詞であり、この点が入試で頻出のポイントです。「たり」と「り」はどちらも完了・存続の意味を持ちますが、接続する活用形が異なる点で明確に区別できます。「けり」と形が似ているため混同しやすいですが、bは「咲け」+「り」であり、「けり」という一続きの助動詞ではない点にも注意しましょう。
第5問の解答と解説
解答:イ 意志
「む」は未然形に接続する助動詞で、推量・意志・仮定・婉曲・勧誘など多くの意味を持ちます。この文では主語が「われ(私)」であり、「上らむと思ふ」という形で自分の希望を述べているため、意志と判断できます。「む」の意味識別は主語に注目することが最大のコツで、主語が一人称(私)であれば意志、主語が二人称・三人称であれば推量になることが多いです。また「〜む人」のように連体形で体言を修飾する場合は婉曲、「〜ば…む」のように仮定条件を受ける場合は仮定の意味になることもあるため、文脈全体を見て判断する必要があります。
第6問の解答と解説
解答:イ 推量
「べし」は終止形に接続する助動詞で、推量・意志・当然・可能・命令・適当など非常に多くの意味を持ちます。この文では「空の様子を見るに」という根拠を示す表現があり、それに基づいて「雨が降るだろう」と推し量っているため、推量の意味になります。「べし」の意味識別では、主語が話し手自身の行動を述べているか、それとも自然現象や他者の行動を推測しているかを見極めることが重要です。今回は主語が「雨」という自然現象であるため、意志や命令の可能性は排除でき、推量に絞られます。
第7問の解答と解説
解答:イ 打消推量
「まじ」は「べし」の打消にあたる助動詞で、打消推量・打消意志・不可能・禁止・不適当などの意味を持ちます。この文では「大雨だから今日は出かけないだろう」という、状況から推し量られた否定的な予測を表しているため、打消推量が適切です。禁止の意味になるのは「〜てはならない」という命令・指示の文脈である場合に限られ、今回のように単に状況を推測している文では禁止とは判断しません。「まじ」も「べし」と同様、主語や文脈から意志・推量・可能などを見極める必要がある点で共通しています。
第8問の解答と解説
解答:a 断定 b 推定(伝聞・推定)
aの「文なり」は、体言「文」に直接「なり」が接続している形であり、これは断定の助動詞「なり」です。一方bの「声すなり」は、動詞「す」の終止形に「なり」が接続している形であり、これは推定(音を聞いて判断する意味を含む伝聞・推定)の助動詞「なり」です。断定の「なり」は体言・連体形に接続し、推定の「なり」は終止形(ラ変型には連体形)に接続するという接続の違いが、両者を見分ける最も確実な方法です。「〜す(+終止形)なり」のように、目に見えない音や声から状況を判断している文脈では推定と判断しましょう。
第9問の解答と解説
解答:ア 打消意志
「じ」は未然形に接続する助動詞で、打消推量・打消意志の意味を持ちます。この文では主語が「われ(私)」であり、「決して行かじ」という形で自分の意志として否定しているため、打消意志と判断できます。「じ」の意味識別も「む」と同様に主語に注目するのがコツで、主語が一人称であれば打消意志、二人称・三人称であれば打消推量になることが多いです。「む」の否定形が「じ」であるという対応関係を押さえておくと、識別のスピードが上がります。
第10問の解答と解説
解答:反実仮想(「もし〜ならば…だっただろう」という、実際には起こらなかった事柄を仮定して述べる意味)
「まし」は未然形に接続する助動詞で、代表的な意味は反実仮想です。「もし雨降らば、出でざらまし」は「もし雨が降ったなら、出かけなかっただろう(しかし実際には雨は降らなかった、あるいは出かけた)」という、現実とは異なる仮定に基づく想像を表しています。反実仮想は「〜ば…まし」または「〜まし〜ば」という形で用いられることが非常に多く、この呼応の形を覚えておくと識別が容易になります。「まし」は単独で使われることは少なく、条件を表す語(「ば」)と組み合わせて出題されることが多い点も押さえておきましょう。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:助動詞の識別で一番大事なのは、実は「接続」なんです。「未然形に付くか、連用形に付くか、終止形に付くか」を先に確認するだけで、選べる助動詞の候補がかなり絞られます。
藤原:その上で、主語が誰なのか、心情語かどうか、根拠を示す表現があるかどうかを見る。この順番で考えれば、どんな文でも意味を一つに絞り込めますね。
翔先生:特に「る・らる」「む」「じ」「べし」「まじ」は主語チェックが決め手になることが多いので、今回の10問を何度も解き直して、パターンを体に染み込ませてください。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は助動詞の基礎編として、意味・活用・接続の3つの観点から10問を出題しました。助動詞は入試古文の得点源になりやすい単元です。次回は「敬語」との複合や、より入り組んだ助動詞の識別問題に取り組んでいきますので、ぜひ継続して学習してください。
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