はじめに
藤原:数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!今回は助動詞シリーズの第5回。意味・活用・接続をまとめて確認していきましょう。
翔先生:助動詞は「知っている」と「使いこなせる」の間にギャップが出やすい分野です。今回は「る・らる」「なり」「べし」「たり・り」「す・さす・しむ」など、入試で識別問題として頻出のポイントを10問に凝縮しました。1問ずつ丁寧に、接続と文脈の両方から答えを絞る練習をしていきましょう。
藤原:助動詞は「上に何が来るか(接続)」「文の中でどんな意味を持つか(文脈)」の二段階で判断するのがコツです。この記事を通して、その判断の型を身につけてください。
問題(全10問)
第1問
次の傍線部「れ」の文法的意味を、後の選択肢から一つ選べ。
「夜更けて、庭に人の声すれば、心細く驚かれて起き上がりぬ。」(※学習用に作成した例文です)
①受身 ②尊敬 ③自発 ④可能
第2問
次の二つの文の傍線部「なり」の文法的意味の違いを説明せよ。
A「かの山の奥に、鹿の鳴くなり。」
B「これは都より参りたる文なり。」(※学習用に作成した例文です)
第3問
次の文の傍線部「べし」の意味を答えよ。
「われ、今宵のうちにかならず都へ帰るべし。」(※学習用に作成した例文です)
第4問
次の空欄に入る助動詞を、それぞれ後の語群から選び、活用させて答えよ。
「かの人、若かりし頃いかなる思ひをかし( A )、今はいかなる思ひをかすらむ。」(※学習用に作成した例文です)
【語群:けむ/らむ】
第5問
次の文の傍線部「ぬ」「ぬる」の文法的意味の違いを説明せよ。
「花の散りぬる後、また咲かぬ枝あり。」(※学習用に作成した例文です)
第6問
次の二つの文の傍線部の助動詞の接続の仕方の違いを説明せよ。
A「山路をはるばると歩みたり。」
B「庭に花咲けり。」(※学習用に作成した例文です)
第7問
次の文の傍線部「まし」の意味を答えよ。
「もし雨降らば、われ出でざらまし。」(※学習用に作成した例文です)
第8問
次の二つの文の傍線部「じ」「まじ」の意味の違いを説明せよ。
A「決して人にこのことを語らじ。」
B「かかる無礼のあること、あるまじきことなり。」(※学習用に作成した例文です)
第9問
次の二つの文の傍線部「しむ」「せ」の意味の違いを説明せよ。
A「大臣、家臣に文を書かしむ。」
B「帝、歌をよませたまふ。」(※学習用に作成した例文です)
第10問
次の文中の助動詞をすべて抜き出し、それぞれの文法的意味と活用形を答えよ。
「その人、心もとなくやありけむ、つひに帰りにけり。」(※学習用に作成した例文です)
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:③自発
「驚かれて」は「驚く」(カ行四段)の未然形「驚か」に助動詞「る」の連用形「れ」が付いた形です。主語である「私」が自分の意志とは関係なく、自然にそう感じてしまったという文脈なので「自発」と判断します。「る・らる」は受身・尊敬・自発・可能の四つの意味を持ちますが、動作主が明示されず「心情語+る・らる」の形になっている場合は自発の可能性が高い、というのが見分けの目安です。受身と間違えやすいポイントですが、この文には「〜に驚かされた」という動作の受け手を示す語がないため、受身ではありません。
第2問の解答と解説
解答:Aは伝聞推定の助動詞「なり」、Bは断定の助動詞「なり」。
助動詞「なり」は接続によって意味が変わります。Aの「鳴くなり」は終止形「鳴く」に接続しているため、音や様子から推定・伝聞する「伝聞推定のなり」です。一方Bの「文なり」は体言「文」に接続しているため「断定のなり」となります。この識別問題は非常に頻出で、「終止形+なり=伝聞推定」「体言・連体形+なり=断定」という接続のルールを覚えておくと迷わず解けます。ラ変型に活用する語(あり・侍りなど)が上にある場合は連体形に接続することにも注意しましょう。
第3問の解答と解説
解答:意志
「べし」は推量・意志・当然・可能・命令・適当など多くの意味を持つ助動詞で、文脈判断が不可欠です。この文では主語が「われ」であり、自分自身の行動について「必ず帰る」と述べていることから、単なる推量ではなく強い決意を表す「意志」と判断できます。主語が一人称で、行動の主体が話し手自身である場合は「意志」の可能性が高いというのが見分けの型です。もし主語が三人称であれば「推量」や「当然」になる可能性が高くなるため、主語を確認する習慣をつけましょう。
第4問の解答と解説
解答:A=けむ
「けむ」は過去の出来事についての推量(過去推量)を表す助動詞で、活用語の連用形に接続します。文中に「若かりし頃」という過去を示す語があり、後半の「今は…らむ」(現在推量)と対比されていることから、空欄には過去を推し量る「けむ」が入ります。「らむ」は現在の事柄についての推量(現在推量)であり、「けむ」との対比構造を理解すると識別がしやすくなります。過去のことか、現在のことかを文脈の時制表現(「若かりし頃」「今は」など)から読み取ることが解法の鍵です。
第5問の解答と解説
解答:「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。
この二つは同じ「ぬ」という形をしていますが、接続で見分けます。「散りぬる」は「散り」(連用形)に接続しているため、完了の助動詞「ぬ」の連体形です。一方「咲かぬ」は「咲か」(未然形)に接続しているため、打消の助動詞「ず」の連体形です。上に来る動詞の活用形を確認し、連用形なら完了、未然形なら打消と判断するのが確実な方法です。この識別は入試で非常によく出るため、「ぬ」を見たら必ず直前の語の活用形を確認する習慣をつけましょう。
第6問の解答と解説
解答:「たり」は連用形接続、「り」はサ変の未然形・四段の已然形(エ段音)に接続する。
Aの「歩みたり」は「歩み」というマ行四段動詞の連用形に「たり」が接続しています。「たり」は完了・存続の助動詞で、活用語の連用形に接続するのが原則です。一方Bの「咲けり」は「咲け」という四段動詞の已然形(命令形と同形)に「り」が接続しており、これは「り」特有の接続のしかたです。「り」は「サ変の未然形」または「四段の已然形」、つまりエ段の音に続くという特殊なルールを持つため、「〜けり」「〜せり」のような形を見たら「り」の可能性を疑うことが大切です。
第7問の解答と解説
解答:反実仮想
「まし」は「〜ば…まし」の形で、現実には起こらなかった事柄を仮に想定して述べる「反実仮想」を表す助動詞です。この文では「もし雨降らば」という仮定の条件があり、実際には雨が降らなかったので出かけたという状況が読み取れます。反実仮想は「もし〜だったら、…しただろうに」という、実際とは異なる仮定の結果を述べる用法であることを押さえましょう。「まし」は未然形接続で、単独では推量・意志・実現不可能な希望などの意味もあるため、「ば」との呼応の有無を必ず確認することが識別のポイントです。
第8問の解答と解説
解答:Aは打消意志、Bは打消当然。
「じ」は打消推量・打消意志を表す助動詞で、主語が一人称の場合は「打消意志(〜まい・〜ないつもりだ)」と解釈します。Aの「語らじ」は「われ」を主語とする決意の文なので打消意志です。一方「まじ」は打消当然・不可能・禁止・打消推量など多様な意味を持ち、Bの「あるまじきこと」は「あってはならないこと」という当然の否定、つまり打消当然を表しています。「じ」は一語で打消推量・打消意志のみを表すのに対し、「まじ」はより広い意味範囲を持つという違いも合わせて覚えておきましょう。
第9問の解答と解説
解答:Aは使役、Bは尊敬。
「す・さす・しむ」は基本的に使役の意味を表す助動詞ですが、下に「たまふ」などの尊敬語が続く場合は、動作主への敬意を強める「尊敬」の意味に変わることがあります。Aの「書かしむ」は下に敬語がなく、大臣が家臣に「書かせる」という使役の意味です。一方Bの「よませたまふ」は「せ」の下に尊敬語「たまふ」が続いており、帝自身が歌をお詠みになるという尊敬の意味になります。「す・さす・しむ」の直後に敬語があるかどうかを確認することが、使役と尊敬を見分ける最大のポイントです。
第10問の解答と解説
解答:「けむ」=過去推量・終止形、「に」=完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」=過去・終止形。
まず「ありけむ」の「けむ」は連用形「あり」に接続する過去推量の助動詞で、ここでは文末に用いられているため終止形です。次に「帰りにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、後ろに「けり」が続くために連用形になっています。最後の「けり」は過去の助動詞で、文末にあるため終止形です。「に」を見たときに格助詞・断定「なり」の連用形・完了「ぬ」の連用形のどれであるかを見分けるには、直前が動詞の連用形であるかどうかを確認することが有効で、この文では「帰り」という連用形の直後にあるため完了の「ぬ」と判断できます。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回のポイントは、助動詞を「接続」「活用」「意味」の三つの軸でセットにして覚えることです。特に「なり」「ぬ」「たり・り」のように同じ形・似た形を持つ助動詞は、上に来る語の活用形を確認するだけで機械的に識別できるようになります。感覚だけで解こうとせず、必ず接続を確認する癖をつけてください。
藤原:そのとおりです。加えて「べし」「じ・まじ」「まし」のように一語で複数の意味を持つ助動詞は、主語が誰か、文がどんな状況を述べているかという文脈判断が欠かせません。接続で絞り込み、文脈で確定する、という二段階の思考プロセスを意識すると、識別問題はぐっと解きやすくなります。
翔先生:「す・さす・しむ」の使役と尊敬の識別のように、下に敬語が続くかどうかを見るだけで判断できるものもあります。一つ一つの助動詞について「どこを見れば見分けられるか」というチェックポイントを自分なりにノートにまとめておくと、初見の文章でも同じ手順で対応できるようになりますよ。
藤原:今回の10問で扱った助動詞は、いずれも入試で繰り返し問われる基本かつ重要なものばかりです。一度解いて終わりにせず、時間を置いてもう一度解き直し、接続・活用・意味の三点セットが自分の言葉で説明できるかを確認してみてください。
まとめ・日本国語塾TOPについて
助動詞の学習は、覚える量が多く大変に感じるかもしれませんが、今回のように「接続で絞り込み、文脈で意味を確定する」という手順を身につければ、初めて見る文章でも落ち着いて対応できるようになります。今回の10問で自信のなかった箇所は、教科書や文法書の該当項目に戻って、接続・活用表を確認しながら復習しておきましょう。次回の助動詞シリーズでも、さらに実戦的な識別問題を用意していますので、ぜひ継続して取り組んでください。
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