はじめに
藤原進之介:数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!今回は古文単語シリーズの第8回です。
翔先生:よろしくお願いします。今回は「現代語の意味で読むと必ず誤読する古文単語」を集めました。「うつくし」「おどろく」「やさし」など、パッと見て現代語のまま訳したくなる単語ばかりです。
藤原:そうなんです。入試ではまさにここが狙われます。「知っているつもり」の単語ほど危ないので、今日は例文の中でしっかり意味を確認していきましょう。全10問、一問一答形式で解いていきます。
問題(全10問)
第1問
次の傍線部「をかし」の意味として最も適切なものを選べ。
「花の色いとをかしうて、人々見けり。」(※学習用に作成した例文です)
①かわいそうだ ②趣がある ③おかしい、滑稽だ ④気の毒だ
第2問
次の傍線部「ゆかし」の意味として最も適切なものを選べ。
「かの山寺の鐘の音、いとゆかしくおぼえて、たづね行きけり。」(※学習用に作成した例文です)
①行きたい ②離れたい ③心惹かれる、知りたい ④懐かしい
第3問
次の傍線部「つれづれなり」の意味として最も適切なものを選べ。
「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば」(『徒然草』序段より)
①悲しい ②手持ち無沙汰で退屈だ ③恋しい ④忙しい
第4問
次の傍線部「うつくし」の意味として最も適切なものを選べ。
「雀の子を、いとうつくしきものにて飼ひけり。」(※学習用に作成した例文です)
①美しい ②かわいらしい ③清らかだ ④立派だ
第5問
次の傍線部「ののしる」の意味として最も適切なものを選べ。
「里人ども、火事なりとてののしりあへり。」(※学習用に作成した例文です)
①悪口を言う ②大声で騒ぐ ③非難する ④泣き叫ぶ
第6問
次の傍線部「おどろく」の意味として最も適切なものを選べ。
「夜中に物の音して、おどろきて目を覚ましけり。」(※学習用に作成した例文です)
①びっくりする ②目を覚ます、はっと気づく ③恐れる ④怒る
第7問
次の傍線部「ありがたし」の意味として最も適切なものを選べ。
「かかる心ばへの人は、世にありがたし。」(※学習用に作成した例文です)
①感謝したい ②めったにない、珍しい ③ありがたい、感謝すべきだ ④尊い
第8問
次の傍線部「すさまじ」の意味として最も適切なものを選べ。
「梅の花盛りに、雪の降りたるは、すさまじきものなり。」(※学習用に作成した例文です)
①すさまじく恐ろしい ②興ざめだ ③寒々しい ④激しい
第9問
次の傍線部「あさまし」の意味として最も適切なものを選べ。
「かかることのあらんとは、あさましくおぼえけり。」(※学習用に作成した例文です)
①浅はかだ ②驚きあきれる ③みっともない ④情けない
第10問
次の傍線部「やさし」の意味として最も適切なものを選べ。
「人にかく見られんことの、やさしければ、外にも出でず。」(※学習用に作成した例文です)
①優しい、親切だ ②恥ずかしい ③上品だ ④気の毒だ
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:②趣がある
「をかし」は本来「知的に興味を引かれる、趣深い」という意味の語で、『枕草子』を代表する重要語です。現代語の「おかしい(滑稽だ)」に引きずられて③を選んでしまう受験生が非常に多いので注意しましょう。似た意味の「あはれなり」がしみじみとした情緒的な感動を表すのに対し、「をかし」は明るく知的な興味・美意識を表す点が対比のポイントです。この対比は「あはれなり」と「をかし」のセットで覚えると差がつきます。
第2問の解答と解説
解答:③心惹かれる、知りたい
「ゆかし」は「行きたい」という現代語の音の近さから①を選んでしまいやすいですが、古文では「見たい・聞きたい・知りたい」という好奇心・関心の強さを表す形容詞です。語源的には「行く」と関係がありますが、意味は「心が引かれて、その対象に近づきたいほど興味がある」という方向に発展しています。例文でも「鐘の音に心惹かれて訪ねて行った」という文脈で、①のように単に「行きたい」だけでは訳としては不十分です。「見まほし」「知らまほし」に近いニュアンスを持つ語だと押さえておきましょう。
第3問の解答と解説
解答:②手持ち無沙汰で退屈だ
『徒然草』冒頭の超有名フレーズです。「つれづれ」は「することがなく、手持ち無沙汰な状態」を指し、そこに「なり」がついた形容動詞です。現代語の「つれづれ」という言葉自体があまり使われないため、逆に先入観なく素直に暗記すればよい語ですが、「悲しい」「恋しい」といった感情語と混同するミスが目立ちます。「つれづれなるままに」=「することもなく退屈なのにまかせて」という直訳を必ずセットで覚えましょう。
第4問の解答と解説
解答:②かわいらしい
「うつくし」は現代語では「美しい」ですが、古文では基本的に「かわいらしい、いとおしい」という意味で使われます。特に小さいもの・幼いものに対して使われるのが典型で、雀の子や幼児を形容する場面で頻出します。①「美しい」を選んでしまう誤答が非常に多いですが、古文の「美しい」に近い意味を持つのはむしろ「うるはし」であることも合わせて覚えておくと整理しやすくなります。この語は入試での出題頻度も高い最重要語の一つです。
第5問の解答と解説
解答:②大声で騒ぐ
「ののしる」は現代語では「悪口を言う」という意味ですが、古文では単に「大声で騒ぎ立てる、評判になる」という意味で、良い意味にも悪い意味にも使われます。①を選んでしまうと文脈が成立しないことが多く、火事や祭りなど人々が騒然とする場面で頻出する語です。「評判が高い」という意味でも使われる点も押さえておくと、より広い文脈に対応できます。現代語の否定的なニュアンスに引きずられないことが最大の注意点です。
第6問の解答と解説
解答:②目を覚ます、はっと気づく
「おどろく」は現代語の「驚く」に近い場面もありますが、古文では「眠りから覚める」「はっと気づく」という意味で使われることが非常に多く、入試でも頻出です。①のように単純に感情的な驚きだけと捉えると、和歌などで「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」のような、季節の変化に「はっと気づく」文脈を正しく訳せなくなります。夜中や早朝の場面で使われていたら、まず「目が覚める」の意味を疑いましょう。
第7問の解答と解説
解答:②めったにない、珍しい
「ありがたし」は「有り難し」、つまり「有ることが難しい=めったに存在しない」という原義がそのまま古文の意味になっています。現代語の「ありがたい(感謝したい)」という意味は後の時代に派生したもので、古文単独の意味としては③・①は誤りです。「世にありがたし」は「この世にはめったにいない、珍しい」という評価表現で、優れた人物や出来事をほめる文脈でよく使われます。語の成り立ちから意味を推測できる典型例として覚えておくと応用が効きます。
第8問の解答と解説
解答:②興ざめだ
「すさまじ」は『枕草子』の「すさまじきもの」の段が有名で、季節外れのもの・場違いなものに対する「興ざめだ、殺風景だ」という感情を表します。①や④のような「激しさ・恐ろしさ」の意味は現代語の「すさまじい」から来る誤解で、古文の「すさまじ」とは方向性が異なります。例文の「梅の花盛りに雪」も、本来春を告げる梅の美しさが雪によって台無しになっている、という「興ざめ」の状況を表しています。文脈に不釣り合い・場違いなものが出てきたら要注意の語です。
第9問の解答と解説
解答:②驚きあきれる
「あさまし」は程度のはなはだしさに対して驚きあきれる気持ちを表す語で、良い意味にも悪い意味にも使われます。現代語の「浅ましい(さもしい、卑しい)」という否定的な意味だけで覚えていると①・③を選んでしまいますが、古文ではまず「予想外の事態に驚きあきれる」という中立的な感情が基本義です。文脈によって「情けない」というニュアンスが加わることもありますが、そこはあくまで派生的な用法だと理解しておきましょう。
第10問の解答と解説
解答:②恥ずかしい
「やさし」は現代語の「優しい(親切だ)」とは大きく意味がずれる要注意語です。古文では「痩せるほど身が細る思いだ=恥ずかしい、きまりが悪い」という意味が基本で、そこから「優美だ、上品だ」という意味にも発展しますが、①の「親切だ」という意味は古文にはほとんどありません。例文では「人にこう見られることが恥ずかしいので外にも出ない」という文脈になっており、②が最も自然な訳になります。「やさし」=現代語と正反対に近いくらいずれている語として強く印象づけておきましょう。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10語はどれも「現代語の意味でそのまま読んでしまうと誤読する」タイプでしたね。
藤原:その通りです。古文単語の学習で一番大切なのは、単語を単独で丸暗記するのではなく、「現代語とどうズレているか」を意識してセットで覚えることです。特に「うつくし」「おどろく」「やさし」のように、現代語の意味を知っているからこそ油断してしまう単語は、入試でも繰り返し出題される定番です。
翔先生:今回のように例文の中で意味を確認しておくと、実際の文章読解でも「あ、この文脈は興ざめの話だな」というふうに感覚的に判断できるようになります。単語帳を眺めるだけでなく、必ず例文とセットで復習してくださいね。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は入試頻出の古文単語10語を、例文の中での意味を問う形式で扱いました。「をかし」「ゆかし」「つれづれなり」「うつくし」「ののしる」「おどろく」「ありがたし」「すさまじ」「あさまし」「やさし」は、いずれも現代語とのズレが出題ポイントになる最重要語です。次回のシリーズでも、入試で狙われやすい古文単語を厳選してお届けしますので、ぜひ繰り返し解いて定着させてください。
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