数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
はじめに
藤原:翔先生、今回は「古文口語訳」シリーズの第1回ですね。まず何を意識してほしいですか?
翔先生:はい。古文が読めない受験生の多くは、単語や文法は知っていても「主語を補えない」「敬語の向きを取り違える」ことでつまずいています。古文は主語が省略されることが多いので、前後の文脈や敬語表現から主語を推測する練習が必要です。
藤原:特に敬語の「敬意の方向」は入試でも頻出ですよね。
翔先生:そうです。尊敬語なら動作をする人への敬意、謙譲語なら動作を受ける人への敬意、丁寧語なら読み手・聞き手への敬意、という基本ルールを、実際の短文で何度も確認することが大切です。今回は基礎レベルの10問で、その型を体に染み込ませていきましょう。
藤原:それでは、さっそく問題に挑戦してみましょう!
問題(全10問)
第1問
次の文を現代語訳しなさい。(『竹取物語』より)
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
第2問
次の文を現代語訳しなさい。(『枕草子』より)
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
第3問
次の文を現代語訳しなさい。(『徒然草』より)
つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
第4問
次の文を現代語訳し、あわせて敬意の方向(誰への敬意か)を答えなさい。
殿、いたく酔ひたまひて、歌をうたひたまふ。
※学習用に作成した例文です
第5問
次の文を現代語訳し、あわせて敬意の方向(誰への敬意か)を答えなさい。
臣、王に申して、都を出でぬ。
※学習用に作成した例文です
第6問
次の文を現代語訳し、あわせて敬意の方向(誰への敬意か)を答えなさい。
かかることは、昔よりありと聞き侍り。
※学習用に作成した例文です
第7問
次の文を現代語訳し、省略されている主語を補いなさい。
いみじうあはれと思ひて、涙を流しけり。
※学習用に作成した例文です
第8問
次の文を現代語訳し、「奉る」「たまふ」それぞれの敬意の方向を答えなさい。
大臣、帝に御文を奉りたまふ。
※学習用に作成した例文です
第9問
次の会話文を現代語訳しなさい。あわせて「参りたまふ」の敬意の方向を答えなさい。
「いかで参りたまふぞ」と問ひければ、女、涙をおさへて答へず。
※学習用に作成した例文です
第10問
次の文を現代語訳し、主語を補ったうえで、傍線部「侍り」の敬意の方向を答えなさい。
(男が女に)「今宵は月いと明かうこそ侍れ」と申しければ、女、うなづきぬ。
※学習用に作成した例文です
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。(その翁は)野山に分け入って竹を取りながら、さまざまなことに使っていた。
「今は昔」は物語の冒頭で使われる決まった言い方で、「今となっては昔のことだが」と訳します。「ありけり」の「けり」は過去の助動詞で、昔から伝わる話であることを示す働きがあります。「よろづのこと」は「さまざまなこと・万事」という意味で、竹を何に使ったのかという具体的な内容までは書かれていない点に注意しましょう。主語の「翁」を後半でも補って訳すと、文意が明確になります。ここでつまずきやすいのは「まじりて」を「まじわって」と直訳しすぎてしまう点で、「分け入って・入り込んで」という訳がより自然です。
第2問の解答と解説
解答:春は明け方(がよい)。だんだんと白くなっていく山ぎわの空が、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている(のがよい)。
この文は「春はあけぼの(をかし)」のように、末尾の評価語が省略された体言止めの構文になっている点が最大のポイントです。「山際」は「山に接している空の部分」を指し、「山」そのものではありません。「たなびきたる」の「たる」は存続の助動詞で、「雲がたなびいている(その状態が続いている)」という意味を表します。訳出の際は、省略された「よし・をかし」のニュアンスを補って「〜がよい」と結ぶと、原文の情緒が伝わりやすくなります。
第3問の解答と解説
解答:することがなく退屈なのにまかせて、一日中、硯に向かって、心に浮かんでは消えていくとりとめもないことを、これといった目的もなく書きつけていくと、不思議と気が変になっていくような気持ちがする。
「つれづれなり」は「することがなく退屈だ・所在ない」という意味の重要古語で、必ず正確に覚えておきましょう。「よしなし事」は「これといった目的や意味のないこと」を指し、「よし(理由・目的)」+「なし」という構成を理解すると忘れにくくなります。文末の「こそ〜けれ」は係り結びで、「けれ」は形容詞「ものぐるほし」の已然形になっており、強調の意味を持ちます。「あやしうこそものぐるほしけれ」は「不思議と気が変になるような気持ちがする」と訳し、作者兼好が自分の心情を独り言のように述べている点をつかむことが大切です。
第4問の解答と解説
解答:殿が、たいそう酔われて、歌をうたわれる。/敬意の方向:作者(語り手)から殿への敬意。
「たまふ」は四段活用で使われる場合、尊敬の補助動詞となり、「〜なさる・お〜になる」という訳になります。この文では「酔ひたまひて」「うたひたまふ」の両方に「たまふ」が使われており、動作主である「殿」に対して敬意が向いていることを読み取ります。主語の「殿」を訳文の中に明示することが、口語訳の基本です。間違えやすいのは、尊敬語を見た瞬間に「話し手(作者)自身」への敬意だと誤解してしまうことで、尊敬語は必ず「動作をする人」への敬意である点を確認しましょう。
第5問の解答と解説
解答:臣(私)は、王に申し上げて、都を出た。/敬意の方向:作者(語り手)から王への敬意。
「申す」は謙譲語で、「言う」という動作を低く表現することで、その動作を受ける相手(ここでは「王」)を高める働きがあります。謙譲語は「動作をする人」ではなく「動作を受ける人・向けられる相手」への敬意である点が、尊敬語との最大の違いです。主語の「臣」は自分を指す一人称であり、謙譲語が使われていることからも、身分の低い者が高い者に敬意を払っている構図が読み取れます。ここで「臣が王を敬っている」のように主客を取り違えないよう、敬語の種類ごとに「誰が誰に敬意を向けているか」を必ず図式化して確認する習慣をつけましょう。
第6問の解答と解説
解答:このようなことは、昔からあると聞いております。/敬意の方向:作者(語り手)から読み手・聞き手への敬意。
「侍り」は丁寧語として使われると「あります・ございます・〜ます」という訳になり、話している相手(読み手・聞き手)に対する敬意を表します。この文では「聞き侍り」の形で使われており、「聞く」という動作自体に敬意が含まれているわけではなく、話し手が聞き手に対して丁寧に述べている点がポイントです。丁寧語は尊敬語・謙譲語と異なり、文中の登場人物同士の上下関係とは無関係に、書き手・話し手から読み手・聞き手へ一方向に向かう敬意である点を必ず区別して覚えましょう。「侍り」を見たら、まず本動詞(ある・いる)か補助動詞(丁寧の意)かを判断することも重要です。
第7問の解答と解説
解答:(女は)たいそう心にしみて感じて、涙を流した。/補うべき主語:女(文脈上の登場人物)。
古文では主語が頻繁に省略されるため、直前の文脈や後続の内容から主語を推測する練習が不可欠です。「いみじう」は形容詞「いみじ」の連用形(ウ音便)で、「たいそう・非常に」という強意の意味を持ちます。「あはれ」は「しみじみとした感動・情趣」を表す重要古語で、悲しみに限らず感動全般に使われる点に注意が必要です。この文だけでは主語は本来決められませんが、演習として「涙を流す」という動作から女性の登場人物を主語に想定する訓練として出題しています。実際の入試問題では、前後の文脈をよく読んで主語を確定させる姿勢が求められます。
第8問の解答と解説
解答:大臣が、帝にお手紙を差し上げなさる。/「奉る」の敬意の方向:作者から帝への敬意(謙譲)。「たまふ」の敬意の方向:作者から大臣への敬意(尊敬)。
この文は一文の中に謙譲語と尊敬語が両方使われている、いわゆる二方向の敬語表現です。「奉る」は謙譲語で「差し上げる」という意味を持ち、手紙を受け取る「帝」への敬意を表します。一方、「たまふ」は尊敬の補助動詞で、手紙を差し上げるという動作をしている「大臣」への敬意を表しています。このように一文中に複数の敬語が現れた場合は、それぞれの敬語が「誰の動作にかかっているか」「誰への敬意か」を一つずつ分けて考えることが正解への近道です。まとめて処理しようとすると混乱しやすいので、動詞ごとに敬語の種類と方向をメモしながら読む習慣をつけましょう。
第9問の解答と解説
解答:「どうして参られるのか」と尋ねたところ、女は涙を押さえて答えなかった。/「参りたまふ」の敬意の方向:作者から会話の相手(訪ねてきた人物)への敬意(謙譲+尊敬)。
「参る」は「行く・来る」の謙譲語で、動作を受ける相手(訪問先の人物)への敬意を表しますが、ここでは補助動詞の「たまふ」が続くことで、動作をする人物本人への尊敬も同時に加わっています。会話文中の敬語は、話している人物から見た敬意であることが多く、地の文の敬語とは主体が異なる場合がある点に注意が必要です。「いかで」は「どうして・どのようにして」という疑問・反語を表す副詞で、ここでは疑問の意味で使われています。訳出の際は、誰が誰に対して発言しているのかをまず確認し、その上で敬語の種類を一つずつ丁寧に処理することが大切です。
第10問の解答と解説
解答:(男が女に)「今夜は月がたいへん明るいことでございます」と申し上げたところ、女はうなずいた。/補うべき主語:男(発言者)。「侍り」の敬意の方向:話し手(男)から聞き手(女)への敬意。
「侍れ」は丁寧の助動詞「侍り」の已然形で、「こそ」との係り結びによって強調の意味が加わっています。この文では地の文ではなく会話文の中に丁寧語が使われているため、敬意の方向は物語の作者ではなく、発言している「男」から聞き手である「女」へ向かうと考えます。あわせて「申しければ」の「申す」は謙譲語で、発言を受ける「女」への敬意を表しており、一文の中で二種類の敬語が別々の相手に向かっている点を見抜く必要があります。主語補充の問題では、括弧内に示された設定(男が女に)をヒントに、発言者・聞き手をそれぞれ明確にしてから訳すことがミスを防ぐコツです。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回のポイントは、敬語を見たら「種類(尊敬・謙譲・丁寧)」「誰の動作か」「敬意はどこへ向かうか」の3点を必ずセットで確認することです。特に、尊敬語は動作主へ、謙譲語は動作の対象・受け手へ、丁寧語は読み手・聞き手へ、という基本の対応関係は、何度も短文演習で確認しないと本番で迷ってしまいます。
藤原:加えて、主語の省略にも慣れることが重要です。古文は日本語らしく主語を省くことが多いので、「誰が」「誰に」「何をした」のかを常に図式化して読む習慣をつけると、長い文章でも迷わなくなります。次回はさらに一歩進んだ文章で練習していきましょう。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は古文口語訳の基礎として、主語の補充と敬語の敬意の方向に焦点を当てた10問を扱いました。古文の読解力は、こうした短文での丁寧な確認の積み重ねによって着実に伸びていきます。ぜひ何度も読み返し、敬語の種類とその方向を自分の言葉で説明できるようになるまで練習してみてください。
日本国語塾TOPは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
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