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藤原 進之介

株式会社数強塾 代表取締役。数強塾グループ(日本数学塾・日本英語塾・日本国語塾・英論会)創設者。現役時代に数学で挫折し浪人を経て「なぜそうなるか」を徹底追求する指導哲学を確立。一生の役に立つ勉強を全国にオンライン展開。

【オリジナル問題】小説の心情読解練習問題 第1回|10問一問一答と詳しい解説

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数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!

はじめに

藤原:翔先生、今回は「小説の心情読解」シリーズの第1回ですね。

翔先生:はい。小説問題が苦手な受験生の多くは、「なんとなく」で答えを選んでしまうんです。でも心情読解には必ず”根拠”があります。今回はその根拠の拾い方を、基礎レベルの自作小説を使って練習していきます。

藤原:今回のポイントは3つ。①行動・表情の描写から心情を推測する、②セリフの裏にある本音を読む、③心情の変化(きっかけと結果)を追う、この3つです。この力が身につけば、初見の小説でも安定して得点できるようになります。

翔先生:それでは、オリジナルの短編小説を読んで、10問に挑戦してみましょう!

問題(全10問)

※以下の小説文は、学習用に作成したオリジナルの文章です。実在の作品ではありません。

 六月の教室には、雨の匂いが満ちていた。健太は窓際の席で、隣のクラスに移動していく美咲の後ろ姿を目で追っていた。

 小学校からずっと同じクラスだった美咲が、来月引っ越すと聞いたのは三日前のことだ。父親の転勤で、九州に行くという。健太はその話を聞いたとき、「そうなんだ」とだけ答えて、すぐに教科書に目を落とした。それ以来、健太は美咲と目が合うたびに、なぜか視線をそらしてしまう。

 放課後、健太は部活のバスケットボールの練習に向かおうとして、ふと足を止めた。渡り廊下の向こうで、美咲が友達と笑いながら話している。その笑い声が、いつもより高く、健太の耳に届いた。

「健太くん、部活行かないの?」

 声をかけられて振り向くと、同じクラスの中村がいた。健太は「あ、行く」と答えたが、足はなかなか動かなかった。

 その夜、健太は自分の部屋で、小学校の卒業アルバムを開いた。美咲と二人で写っている写真が何枚もある。運動会でのリレー、卒業式の日、二人で笑っている写真――。健太は写真を見ながら、来月からこの教室に美咲がいなくなることを、はじめて実感した気がした。

 翌朝、健太は思い切って美咲に声をかけた。

「昨日さ、渡り廊下のところで、目が合ったよな」

「あ……うん」

「なんか、避けてたみたいでごめん。実は、九州に行くって聞いてから、どう話しかけていいか分からなくて」

 美咲は少し驚いた顔をしたあと、小さく笑った。

「私も、健太くんがそっけなくなった気がして、寂しかったんだ」

 健太は胸のあたりが少し軽くなるのを感じながら、「引っ越す前に、みんなで遊ぼうな」と言った。美咲は「うん、絶対」と大きくうなずいた。

第1問

傍線部「『そうなんだ』とだけ答えて、すぐに教科書に目を落とした」とあるが、このときの健太の心情として最も適切なものを選べ。

ア 美咲の引っ越しに興味がなく、無関心だった。
イ 美咲の引っ越しをうまく受け止められず、動揺を隠そうとした。
ウ 美咲の引っ越しを喜び、期待していた。
エ 美咲の話が嘘だと疑っていた。

第2問

傍線部「なぜか視線をそらしてしまう」の理由として最も適切なものを選べ。

ア 美咲のことが嫌いになったから。
イ 美咲が引っ越すことへの複雑な気持ちを、うまく処理できずにいたから。
ウ 美咲に何か悪いことをした自覚があったから。
エ クラスメイトの目が気になったから。

第3問

傍線部「その笑い声が、いつもより高く、健太の耳に届いた」という表現から読み取れる健太の心情として最も適切なものを選べ。

ア 美咲の笑い声が本当にうるさかった。
イ 美咲が楽しそうにしていることに、素直に喜んでいる。
ウ 美咲を意識してしまい、いつも以上に敏感になっている。
エ 美咲の友達に嫉妬している。

第4問

傍線部「『あ、行く』と答えたが、足はなかなか動かなかった」から読み取れる健太の様子を説明したものとして最も適切なものを選べ。

ア 部活に行きたくないと思っている。
イ 中村への返事とは裏腹に、美咲のことが気になって心がその場を離れられずにいる。
ウ 中村に対して腹を立てている。
エ 疲れていて動く気力がない。

第5問

健太が卒業アルバムを開いた場面から読み取れる心情として最も適切なものを選べ。

ア 過去の思い出をなつかしみつつ、これからの美咲との別れを意識し始めている。
イ 卒業アルバムの出来栄えに満足している。
ウ 過去の自分を反省している。
エ 美咲以外の同級生を懐かしんでいる。

第6問

傍線部「来月からこの教室に美咲がいなくなることを、はじめて実感した気がした」とあるが、この「実感」の内容として最も適切なものを選べ。

ア 美咲が転校すること自体は知っていたが、それが自分にとって大きな喪失であると初めて心の底から感じたということ。
イ 美咲が転校することを初めて知ったということ。
ウ 美咲が転校することを喜ばしく感じているということ。
エ 美咲の代わりの友達を探そうと決意したということ。

第7問

健太が翌朝、思い切って美咲に声をかけた理由として最も適切なものを選べ。

ア 中村に勧められたから。
イ アルバムを見て、美咲との別れを実感し、このままではいけないと思ったから。
ウ 美咲に謝罪を要求されたから。
エ 担任の先生に指示されたから。

第8問

健太のセリフ「実は、九州に行くって聞いてから、どう話しかけていいか分からなくて」から読み取れる心情として最も適切なものを選べ。

ア 美咲に対する怒り。
イ 別れが近いことへの戸惑いと、それをうまく言葉にできなかった気まずさ。
ウ 九州という土地への不安。
エ 美咲への嫉妬。

第9問

美咲のセリフ「私も、健太くんがそっけなくなった気がして、寂しかったんだ」から読み取れる美咲の心情として最も適切なものを選べ。

ア 健太に対して怒りを感じている。
イ 健太の態度の変化を寂しく感じつつも、健太への好意的な気持ちは変わっていない。
ウ 健太のことをもう気にしていない。
エ 健太を試すためにわざと冷たくしていた。

第10問

傍線部「胸のあたりが少し軽くなるのを感じながら」という表現から読み取れる健太の心情として最も適切なものを選べ。

ア 部活の練習が終わって安心している。
イ 誤解が解け、美咲との気まずさが解消されて安堵している。
ウ 美咲との別れがなくなったと勘違いしている。
エ 空腹が満たされた。

解答・解説

第1問の解答と解説

【解答】イ

「そうなんだ」という短い返事と、すぐに教科書に目を落とすという行動は、感情をあえて表に出さないようにする態度です。本当は大きく心が動いているのに、それをどう表していいか分からず、目をそらすことで動揺を隠そうとしていると読み取れます。「無関心」(ア)だとすると、この後の一連の行動(視線をそらす、写真を見返すなど)と矛盾するため誤りです。感情の”抑え込み”のサインを見逃さないことが大切です。

第2問の解答と解説

【解答】イ

直前の段落で、美咲の引っ越しを知ったことが述べられており、そのすぐ後に「視線をそらしてしまう」という行動が続いています。この因果関係から、引っ越しという出来事に対する複雑な感情(寂しさ、戸惑いなど)が原因だと分かります。「嫌いになった」(ア)や「悪いことをした自覚」(ウ)は本文に根拠がなく、飛躍した解釈です。前後の文脈から原因を特定する練習として最適な設問です。

第3問の解答と解説

【解答】ウ

「いつもより高く」という表現は、実際の音量が変わったわけではなく、健太が美咲を強く意識しているために、普段より敏感に感じられたことを示す心理描写です。このように、客観的事実ではなく主観的な感じ方の変化を表す表現は、心情読解の重要なヒントになります。「本当にうるさかった」(ア)と読むのは、比喩表現を字義通りに取ってしまう典型的な誤読です。

第4問の解答と解説

【解答】イ

「行く」と口では答えているのに、実際には足が動かないという描写は、言葉と行動が一致しない「ちぐはぐさ」を表しています。これは、健太の意識が美咲に向いており、部活のことが二の次になっていることを示す典型的な表現です。セリフと行動が矛盾している箇所は、必ず心情読解の重要なポイントになるので、注意して読む習慣をつけましょう。

第5問の解答と解説

【解答】ア

卒業アルバムを開き、過去の写真を見返す行動は、過去への郷愁と、これから訪れる別れへの意識が重なっていることを示しています。「運動会」「卒業式」といった具体的な思い出の描写が並ぶことで、美咲との関係の深さが強調されている点にも注目しましょう。イやウのように、アルバム自体や過去の自分への評価に焦点を当てる解釈は、本文の主眼から外れています。

第6問の解答と解説

【解答】ア

「はじめて実感した」という表現は、頭では知っていた事実(美咲の引っ越し)を、感情として初めて受け止めたことを意味します。知識としての理解と、感情としての実感にはズレがあることを描いた表現であり、この違いを正確に読み取れるかがポイントです。「初めて知った」(イ)と混同すると誤答になるため、「知る」と「実感する」の違いに注意しましょう。

第7問の解答と解説

【解答】イ

前の段落でアルバムを見て別れを実感した健太が、翌朝すぐに行動を起こしている点から、心情の変化が行動へとつながっていることが読み取れます。小説では「きっかけ→心情の変化→行動」という流れが頻出するため、この因果関係を意識して読む練習になります。アやエのように、他者からの働きかけを理由とする選択肢は本文に記述がなく誤りです。

第8問の解答と解説

【解答】イ

このセリフは、美咲の引っ越しを知ってから、どう接していいか分からなくなったという健太の正直な告白です。ここまでの伏線(視線をそらす、動揺を隠すなど)が、このセリフによって明確に説明される構成になっています。セリフは、それまでの行動描写の”種明かし”になることが多いため、伏線として読み取る練習になります。

第9問の解答と解説

【解答】イ

美咲のセリフは、健太の態度の変化に寂しさを感じていたことを率直に語っています。「寂しかった」という言葉から、健太への好意的な気持ちが根底にあることが分かり、単なる不満(ア)や無関心(ウ)とは異なります。また「小さく笑った」という表情描写も、深刻な怒りではなく、素直な気持ちの吐露であることを裏付けています。

第10問の解答と解説

【解答】イ

「胸のあたりが少し軽くなる」という身体感覚の描写は、それまで抱えていた気まずさや不安が解消されたことを表す典型的な比喩表現です。美咲との誤解が解け、素直な気持ちを伝え合えたことで、健太の心が軽くなったと分かります。ウのように「別れがなくなった」と読むのは事実に反する飛躍であり、本文の内容を正確に踏まえていない誤答です。

藤原&翔先生のワンポイント

藤原:今回の10問を通して見えてきたのは、心情は必ず「行動」「セリフ」「表現の微妙な言い回し」に表れるということです。

翔先生:特に大事なのは、「言葉と行動が食い違っている箇所」と「比喩的な身体感覚(胸が軽くなる、耳に届く、など)」です。ここには必ず作者が伝えたい心情が隠れています。

藤原:選択肢を選ぶときは、「本文に書かれていることだけを根拠にする」のが鉄則。自分の想像や一般論で答えを選ばないように気をつけましょう。

翔先生:次回は、心情の「変化」に焦点を当てた練習問題を用意しますので、お楽しみに!

まとめ・日本国語塾TOPについて

今回は、オリジナルの短編小説を使って、行動描写・セリフ・比喩表現から心情を読み取る練習をしました。心情読解の基本は「本文中の根拠を探すこと」に尽きます。10問すべてで解説した「なぜその選択肢が正しいのか」「どこで間違えやすいか」を、ぜひ繰り返し復習してみてください。

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