はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、今回から「小論文の演習課題」シリーズを始めますね。第1回はどんな力を意識して作りましたか?
翔先生:はい。小論文って「自由に書けばいい」と思われがちですが、実は読解力・論理構成力・根拠の妥当性を見抜く力が土台にあるんです。今回は記述の前段階として、課題文を正確に読み、論理の筋道を見抜く力を客観形式でチェックできるように作りました。
藤原:そうですね。いきなり長文を書かせるより、「要旨をつかむ」「根拠と主張がかみ合っているか判定する」「構成の型を知る」というステップを踏んだ方が、結果的に書ける小論文につながります。今回の10問は、そのための基礎トレーニングです。
翔先生:全問、答えが一つに定まるように作っていますので、答え合わせもしやすいはずです。ぜひ実際に手を動かして解いてみてください。
問題(全10問)
第1問
次の文章を読み、要旨として最も適切なものを選びなさい。
※学習用に作成した例文です。
近年、地方都市の商店街では、後継者不足やネット通販の普及により、店舗の閉店が続いている。しかし、商店街の役割は単なる買い物の場ではない。高齢者が近所の人と会話をしたり、子どもが地域の大人に見守られたりする「顔の見える関係」を支える場でもある。商店街の衰退は、こうした地域の人と人のつながりを弱める点で、経済問題以上の意味を持つ問題である。
① 商店街の閉店は経済的な問題であり、行政の支援が最優先である。
② 商店街の衰退は経済問題であると同時に、地域の人間関係を弱める問題でもある。
③ ネット通販の普及が地域社会を破壊しているため、規制すべきである。
④ 高齢者と子どもの交流の場は、商店街以外にも作ることができる。
第2問
「SNSは人間関係を豊かにする」という主張を立てるとき、根拠として最も適切なものを選びなさい。
① SNSの利用者数は年々増加している。
② SNSを使えば、遠方に住む友人や家族と日常的に近況を共有し、関係を維持しやすくなる。
③ SNSには様々な種類のサービスが存在する。
④ SNSを使う時間が長い人ほどスマートフォンの操作に慣れている。
第3問
次の文章の中で、論理的な飛躍(根拠が主張を十分に支えていない部分)がある一文を選びなさい。
※学習用に作成した例文です。
(A)読書量の多い子どもは、学力調査の成績が高い傾向にあるという調査結果がある。(B)したがって、子どもに読書をさせれば必ず学力が向上する。(C)一方で、読書には想像力や語彙力を育てる効果もあると考えられている。(D)これらのことから、読書は子どもの成長にとって有意義な活動であるといえる。
① A ② B ③ C ④ D
第4問
次のA〜Dの文を、小論文の本論として自然な順序に並べたとき、最も適切な組み合わせを選びなさい。
A しかし、この便利さには落とし穴もある。
B スマートフォンの普及により、私たちはいつでも情報を得られるようになった。
C 自分で考える前に検索してしまい、思考力が育ちにくくなる恐れがあるのだ。
D だからこそ、便利さに頼りすぎない使い方を意識する必要がある。
① B→A→C→D ② A→B→C→D ③ B→C→A→D ④ D→B→A→C
第5問
次の文章の結論として、本文の流れに最も合うものを選びなさい。
※学習用に作成した例文です。
食品ロスの多くは、家庭よりも外食産業や食品製造の過程で発生している。しかし、消費者の意識が変われば、賞味期限に対する過度な敏感さが減り、廃棄の一因である「見た目重視の選別」も緩和される可能性がある。
① 食品ロス問題は企業だけの責任であり、消費者にできることはない。
② 食品ロス削減には、企業の努力に加え、消費者一人ひとりの意識の変化も欠かせない。
③ 賞味期限の表示制度そのものを廃止すべきである。
④ 食品ロスは自然に減少していくため、対策は不要である。
第6問
「多様性を尊重する社会を目指すべきだ」という主張の具体例として、最も適切なものを選びなさい。
① 全員が同じ意見を持つように話し合いを重ねる。
② 異なる価値観を持つ人の意見も、まずは理由を聞いてから判断する。
③ 少数派の意見は多数決で決まった時点で無視してよい。
④ 多様性という言葉を使う人が増えている。
第7問
小論文における「対比」の説明として、最も正確なものを選びなさい。
① 一つの事柄について、時間の流れに沿って説明する方法。
② 二つ以上の事柄の共通点や相違点を並べて示し、主張を明確にする方法。
③ 難しい言葉を簡単な言葉に言い換える方法。
④ 主張の根拠を数値データのみで示す方法。
第8問
次の文章の中で、反対意見に配慮した表現(譲歩)を含む一文を選びなさい。
※学習用に作成した例文です。
(A)在宅勤務には多くの利点がある。(B)確かに、対面でしか伝わらない情報もあり、在宅勤務だけでは不十分だという意見もある。(C)だが、通勤時間の削減や柔軟な働き方の実現という利点は大きい。(D)今後は在宅勤務をさらに普及させるべきだ。
① A ② B ③ C ④ D
第9問
次のうち、原因と結果の関係が正しく述べられている一文を選びなさい。
① 雨が降ったので、道路が濡れていた可能性が高いと結論できる。
② コンビニが増えたのは、人々が晴れを好むからである。
③ 睡眠不足が続いたため、集中力の低下が生じた。
④ 気温が上がったのは、アイスの売上が伸びたからである。
第10問
「地域社会において高齢者と若者の交流を増やすべきか」というお題で600字の小論文を書くとき、序論・本論・結論に入れるべき要素の組み合わせとして最も適切なものを選びなさい。
① 序論:自分の趣味の紹介/本論:交流の具体的な方法と効果/結論:関係のない話題への発展
② 序論:問題提起と自分の立場の提示/本論:根拠となる具体例や理由の説明/結論:主張の再確認とまとめ
③ 序論:結論の詳細な説明/本論:序論の繰り返し/結論:新しい主張の追加
④ 序論:本論で使う根拠を先に全て書く/本論:序論の要約/結論:疑問の提示のみ
解答・解説
第1問の解答と解説
正解は②です。課題文は「商店街の衰退は経済問題である」ことを前提としつつ、「それ以上に人と人のつながりを弱める問題である」という二重の視点を示しています。①は経済問題のみに焦点を当てており、後半の主張を落としています。③は本文にない「規制すべき」という主張が加わっており過剰な読み取りです。④は本文の趣旨からずれた一般論であり、要旨としては不適切です。要約問題では「本文に書かれていないことを付け加えない」ことが最大の注意点です。
第2問の解答と解説
正解は②です。主張「SNSは人間関係を豊かにする」を支えるには、人間関係そのものに影響する事実を根拠にする必要があります。①③④はSNSに関する事実ですが、いずれも「人間関係が豊かになる」ことと直接結びついていません。根拠選びで間違えやすいのは、テーマに関連する事実であれば何でも根拠になると思い込むことです。主張のキーワード(ここでは「人間関係」)と直接つながる根拠を選ぶ意識を持ちましょう。
第3問の解答と解説
正解は②です。(A)は調査結果という事実の提示、(C)は一般的な見解の提示であり問題ありません。(B)は「傾向がある」という相関関係から「必ず向上する」という断定に飛躍しており、因果関係の過度な一般化です。(D)は妥当な範囲でのまとめです。小論文でも「傾向がある」と「必ずそうなる」を混同する誤りは非常に多いため、根拠の強さと主張の強さを一致させる意識が必要です。
第4問の解答と解説
正解は①(B→A→C→D)です。Bで話題(スマートフォンの普及)を提示し、Aで「しかし」と転換して問題点を示唆し、Cで具体的な問題点(思考力の低下)を説明し、Dで「だからこそ」と結論的な提言をつなげる流れが自然です。並び替え問題では、接続語(しかし・だからこそ)と指示語(この便利さ)が何を受けているかを確認するのが解くコツです。②③④はいずれも接続語と内容がかみ合いません。
第5問の解答と解説
正解は②です。本文は「食品ロスの主因は企業側にあるが、消費者の意識変化にも改善の余地がある」という構成になっています。①は「消費者にできることはない」と本文と矛盾します。③④は本文で述べられていない極端な主張であり、飛躍しています。結論を選ぶ問題では、本文の論の広がり方(どちらか一方ではなく両方に触れているか)を丁寧に確認することが重要です。
第6問の解答と解説
正解は②です。「多様性を尊重する」とは、異なる価値観の存在を認め、対話を通じて理解しようとする姿勢を指します。①は同質化を目指しており多様性の否定、③は少数意見の排除であり不適切です。④は言葉の流行の話であり、多様性の尊重という行動とは無関係です。抽象的な主張の具体例を選ぶ問題では、主張の本質(ここでは「異なる意見を認める姿勢」)を言い換えられているかを確認しましょう。
第7問の解答と解説
正解は②です。対比とは、二つ以上の事柄を並べて共通点・相違点を明らかにし、主張を際立たせる論述技法です。①は時系列で説明する方法であり「対比」ではなく「時系列構成」に近い説明です。③は「言い換え」の説明、④は根拠の示し方の一種であり、いずれも対比とは異なります。小論文用語の定義問題は言葉のイメージだけで選ばず、正確な定義を覚えておくことが大切です。
第8問の解答と解説
正解は②です。譲歩とは、あえて反対意見や弱点を認めてから自分の主張を強める技法です。(B)は「確かに〜という意見もある」という形で反対意見を認めており、典型的な譲歩表現です。(A)は主張の提示、(C)は譲歩を受けての反論、(D)は結論であり、譲歩表現そのものではありません。「確かに」「もちろん」などの表現に注目すると譲歩の部分を見つけやすくなります。
第9問の解答と解説
正解は③です。「睡眠不足→集中力の低下」は一般的に妥当な因果関係です。①は単なる推測であり因果関係の説明ではありません。②④は原因と結果が逆転しており、コンビニの増加や気温の上昇という「結果」を、無関係な事柄の「原因」として誤って結び付けています。因果関係の誤りを見抜くには、「本当にAがBを引き起こしているか、それとも単なる時間的な前後関係にすぎないか」を確認する習慣が有効です。
第10問の解答と解説
正解は②です。小論文の基本構成である「序論(問題提起・立場の提示)→本論(根拠・具体例)→結論(主張の再確認)」に忠実に対応しています。①③④はいずれも各段落の役割が入れ替わっていたり、無関係な内容が混入していたりして、小論文としての一貫性を欠きます。構成問題では、それぞれの段落が「何のためにあるか」という役割を意識して要素を当てはめることがポイントです。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回のように、まず「読む力」を客観形式でチェックしてから書く練習に進むと、答案の質がぐっと上がります。特に第3問・第9問のような論理の飛躍を見抜く練習は、自分で小論文を書くときの「自己チェック力」に直結します。
藤原:その通りです。小論文が伸びない受験生の多くは、書く練習だけを繰り返して、読む・分析する練習が不足しています。今回の10問のように「なぜその選択肢が正解なのか」を言葉で説明できるようになれば、自分の答案の甘さにも気づけるようになります。次回は、実際にお題を出して600字の答案を書いてもらう回にしましょう。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は小論文演習の第1回として、要旨の読み取り・論理の飛躍の発見・段落構成・譲歩表現・因果関係・答案構成の型という、書く力の土台となる10のポイントを客観形式で確認しました。次回はいよいよ実際の答案作成に挑戦していきます。
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