はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:今回は小論文演習の第2回です。前回よりもテーマの抽象度を少し上げて、社会・技術・教育に関する時事的な題材を扱っていきます。
翔先生:今回のポイントは「課題文の条件を正確に読み取る」ことと「対立する二つの立場を意識して自分の主張を組み立てる」ことですね。小論文は感想文ではないので、根拠と構成が命です。
藤原:そうですね。全10問とも、課題文+設問という形式にしています。解答例を丸ごと覚えるのではなく、「答案の骨子(構成の型)」と「評価の観点」をセットで理解して、自分の言葉で書き直す練習に使ってください。
※以下の課題文はすべて学習用に作成したオリジナルの文章です。
問題(全10問)
第1問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
SNSの普及によって、誰でも自分の意見を広く発信できるようになった。一方で、匿名性の高い発信が誹謗中傷や誤情報の拡散につながる例も後を絶たない。表現の自由を守ることと、発信による被害を防ぐことは、しばしば緊張関係にあるといえる。
【設問】SNSにおける「表現の自由」と「発信の責任」のバランスについて、あなたの考えを120字以内で述べなさい。
第2問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
ある自治体では、行政窓口の業務にAIチャットボットを導入したところ、待ち時間が大幅に短縮された。しかし、高齢者や機器操作が苦手な住民からは「人に相談したい」という声も上がっている。
【設問】この事例から読み取れる、行政サービスのデジタル化における課題を100字以内で説明しなさい。
第3問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
地方のある町では、若者の流出によって商店街の担い手が減り続けている。一方で、都市から移住してきた若者が空き店舗を活用し、新しい形の商いを始める動きも見られる。
【設問】地方の担い手不足を解消するために、行政と地域住民がそれぞれどのような役割を果たすべきか、150字以内で述べなさい。
第4問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
学校教育の現場では、一人一台の端末を使った学習が広がっている。効率的に個別学習を進められる一方で、教員の中には「画面越しの学びでは、生徒同士の対話が減るのではないか」と懸念する声もある。
【設問】教育のデジタル化のメリットと課題を挙げたうえで、あなたが重要だと考える対応策を150字以内で述べなさい。
第5問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
ある企業では、社員の勤務時間ではなく成果によって評価する制度を導入した。生産性が向上したという報告があるが、同時に「成果が見えにくい仕事をする社員が不利になる」という指摘も出ている。
【設問】成果主義の導入によって生じる利点と問題点を対比させながら、120字以内で説明しなさい。
第6問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
環境保護のために使い捨て製品を減らす取り組みが進む一方で、代替品の生産にはコストや資源が新たに必要になる場合もある。「環境に良い」とされる選択が、必ずしも単純ではないことがわかる。
【設問】環境問題を考える際に「一つの解決策が別の問題を生む可能性がある」という視点はなぜ重要か、100字以内で述べなさい。
第7問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
近年、外国人労働者を受け入れる企業が増えている。言語や文化の違いから生じる誤解もあるが、多様な人材の受け入れが職場の活性化につながったという報告もある。
【設問】多様な人材を受け入れる組織づくりにおいて、企業がまず取り組むべきことは何か、あなたの考えを150字以内で述べなさい。
第8問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
ある研究チームが、人の代わりに判断を下すAIを医療現場に導入する実験を行った。診断の正確性は向上したが、「最終的な判断を人間が担うべきだ」という意見も根強く残っている。
【設問】AIによる判断と人間による判断の役割分担について、あなたの考えを150字以内で述べなさい。
第9問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
選挙の投票率が年々低下する中、インターネット投票の導入を求める声が高まっている。手続きの簡便化によって投票率が上がると期待される一方で、なりすましや不正のリスクも指摘されている。
【設問】インターネット投票の導入について、賛成・反対のいずれかの立場を明確にしたうえで、根拠を含めて150字以内で述べなさい。
第10問
次の文章を読み、設問に答えなさい。(※学習用に作成した文章です)
ある高校では、生徒が主体となって学校行事の企画から運営までを担う取り組みを始めた。教員からの指示を減らしたことで、生徒の自主性が育った一方、準備不足による混乱も一部で生じた。
【設問】この取り組みから、生徒の自主性を育てる教育において大切にすべき点を150字以内で述べなさい。
解答・解説
第1問の解答と解説
答案の骨子:表現の自由は民主社会の基盤であり保障されるべきだが、発信者には他者の権利を侵害しない責任が伴う。両者は対立するのではなく、責任ある発信こそが自由を長期的に維持する条件だと結論づける。
この設問では「自由」だけを主張すると一方的な議論になり、評価が下がります。逆に「責任」だけを強調すると規制論に偏り、表現の自由の価値を軽視した答案に見えてしまいます。評価の観点は、両者を対立概念として提示したうえで、統合的な結論に導けているかどうかです。字数が短いため、具体例よりも論理の骨格を優先しましょう。よくある失敗は「誹謗中傷はダメだと思う」という感想止まりの答案です。
第2問の解答と解説
答案の骨子:デジタル化は効率化に有効だが、機器操作に不慣れな住民を取り残す危険がある。したがって、デジタルと対面の両方の窓口を併存させる必要がある、という課題整理が中心になります。
この問題は「課題を説明しなさい」という指示なので、解決策まで書く必要はありません。課題の核心は「効率化と包摂性のトレードオフ」である点を明確に言語化できているかが評価の分かれ目です。よくある間違いは、事例の要約だけで終わり、そこから読み取れる一般的な課題に抽象化できていないことです。設問の指示語(「読み取れる課題」)を正確に踏まえましょう。
第3問の解答と解説
答案の骨子:行政は空き店舗の活用支援や移住者への補助制度など環境整備を担い、地域住民は新しい担い手を受け入れる開放的な姿勢や既存のつながりを活かした協力を担う、という役割分担型の構成が骨子です。
「行政と地域住民がそれぞれどのような役割を果たすべきか」という設問なので、両者の役割を並列で書くことが必須条件です。片方しか書かないと設問の要求を満たさず大きく減点されます。評価の観点は、二つの主体の役割が重複せず、互いに補完し合う関係として描けているかです。抽象的な理想論だけでなく、事例文の「移住者の動き」を活かした具体性も意識しましょう。
第4問の解答と解説
答案の骨子:メリットは個別最適化された学習の実現、課題は対話機会の減少。対応策としては、端末学習と対面での話し合いの時間を意図的に組み合わせるハイブリッド型の授業設計を挙げる構成が適切です。
設問は「メリット」「課題」「対応策」の三点を要求しているため、この三つがすべて答案に含まれているかを最初にチェックしてください。一つでも欠けると設問未対応と判断されます。よくある失敗は、対応策が課題の裏返しに過ぎず具体性を欠くことです。「対話の時間を確保する」など、実行可能な形で書くと評価が上がります。
第5問の解答と解説
答案の骨子:利点は生産性の向上と成果への公正な評価、問題点は成果が数値化しにくい業務を担う社員が不利になる不公平感。対比の構造を明確にし、両者を並べて示すことが骨子になります。
「対比させながら」という指示があるため、利点と問題点を単に並べるだけでなく、両者の関係性(成果が見えやすい仕事と見えにくい仕事の違いなど)を意識して書くと評価が高くなります。よくある間違いは、利点か問題点の一方に字数を割きすぎて対比が崩れることです。字数配分を事前に決めてから書き始めると失敗しにくくなります。
第6問の解答と解説
答案の骨子:単純に見える解決策も、生産や資源の観点から新たな負荷を生む可能性があるため、多角的な視点で影響を検証する必要がある、という論理構成が中心になります。
この設問は「なぜ重要か」を問う抽象度の高い問いです。事例文の「使い捨て削減と代替品コスト」という具体例を一般化し、「一つの視点だけで判断すると別の問題を見落とす」という普遍的な原理に落とし込めているかが評価の観点です。事例の説明に終始し、一般化まで到達していない答案は減点対象になります。
第7問の解答と解説
答案の骨子:言語や文化の違いから生じる誤解を防ぐため、企業はまず円滑なコミュニケーションの仕組み(多言語対応や研修制度など)を整えることが優先課題である、という構成が骨子です。
「まず取り組むべきこと」を一つに絞って明確に述べることが求められています。複数の取り組みを並列で挙げると論点が拡散し、字数内でまとまらなくなります。評価の観点は、事例文にある「誤解」という課題に直接対応した提案になっているかどうかです。抽象的な「多様性を尊重する」だけの答案は具体性不足と判断されます。
第8問の解答と解説
答案の骨子:AIは客観的なデータ分析に強みを持ち、人間は責任を伴う最終判断や患者への説明といった役割を担う。両者の強みを組み合わせる分業体制が望ましい、という結論が骨子です。
この設問はAI否定・人間否定のいずれか一方に偏ると評価が下がります。事例文でも診断精度の向上と「人間が担うべき」という意見が両方示されているため、両立させる構成が求められている点を読み取る必要があります。よくある失敗は「AIは信用できない」という感情的な結論で、根拠が伴っていないことです。
第9問の解答と解説
答案の骨子:立場を明確にした上で、賛成なら投票率向上という利点を重視し不正対策の技術的整備を条件として付す、反対なら不正リスクの重大性を重視し慎重な導入を主張する、という一貫した構成が骨子です。
この設問は「賛成・反対のいずれかの立場を明確にする」ことが必須条件です。両論併記のまま結論を出さない答案は、設問の指示に反するため大きく減点されます。評価の観点は、選んだ立場に対して事例文中のリスクや利点を根拠として適切に活用できているかです。立場を決めたら最後までその立場で一貫させましょう。
第10問の解答と解説
答案の骨子:自主性を育てるには、生徒への裁量を広げる一方で、事前の準備や見通しを支える最低限の支援を教員が用意する必要がある。裁量と支援のバランスが大切だという結論が骨子です。
事例文には「自主性が育った」というプラスの結果と「準備不足による混乱」というマイナスの結果が両方示されています。片方だけに注目すると事例文を十分に読み取れていないと判断されます。評価の観点は、両方の結果を踏まえたうえで、両立させるための具体的な視点(支援の内容など)を提示できているかです。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問に共通しているのは、「対立する二つの要素をどう扱うか」という点です。表現の自由と責任、効率化と包摂性、AIと人間の判断など、どれも一方を否定すれば楽に書けそうに見えますが、実際の評価では両方の側面を踏まえた答案が高く評価されます。
藤原:そうですね。小論文の答案は「賛成か反対か」の結論そのものよりも、結論に至る過程で反対意見をどれだけ正確に受け止めているかが問われています。設問の指示語(「読み取れる課題」「役割分担」「対比させながら」など)を丁寧に確認し、要求されている要素を全て答案に入れる練習を積み重ねてください。
翔先生:字数指定がある問題では、書く前に「何を何字くらいで書くか」の配分をメモしてから書き始めると、途中で構成が崩れにくくなります。ぜひ実践してみてください。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回の演習では、社会・教育・技術に関する10のテーマを通じて、対立する視点を整理し、設問の指示に沿って答案を組み立てる練習を行いました。小論文は知識量よりも「読む力」と「構成する力」が問われる科目です。何度も書き直しながら、自分の答案を型に落とし込む練習を続けていきましょう。
日本国語塾TOPは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
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