はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、今回から漢文句形シリーズが始まりますね。第1回はどんな内容にしましたか?
翔先生:はい。漢文の入試で最も出題頻度が高い「使役・受身・否定・疑問・反語・仮定・限定・比較」の8つの句形を、10問の一問一答形式でまとめて練習できるようにしました。どれも入試の基本中の基本ですが、書き下し文と現代語訳の両方を正確に作れるかがポイントです。
藤原:句形は「見た瞬間に型がわかる」ようにしておくことが大事ですよね。今回の問題を通して、それぞれの句形の「サイン(目印になる漢字)」を意識しながら解いてほしいです。
翔先生:そうですね。「使・令」を見たら使役、「見・於・為所」を見たら受身、「豈・何ぞ~乎(哉)」を見たら反語、というように、漢字そのものが句形の入口になります。今回の10問を通して、その感覚を身につけましょう。
問題(全10問)
第1問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(使=しむ)
王使人問其罪。
※学習用に作成した例文です。
第2問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(見=る、於=に)
賢者見疑於愚者。
※学習用に作成した例文です。
第3問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(「為A所B」=Aの…する所と為る)
弱者為強者所奪。
※学習用に作成した例文です。
第4問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(不=ず)
人不知其過。
※学習用に作成した例文です。
第5問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(未=いまだ…ず、嘗=かつて)
未嘗聞是言也。
※学習用に作成した例文です。
第6問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(何故=なんのゆえに)
子何故不去乎。
※学習用に作成した例文です。
第7問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(豈=あに、乎=や)
豈可不慎乎。
※学習用に作成した例文です。
第8問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(若=もし、則=すなはち)
若不勉学、則不能成業。
※学習用に作成した例文です。
第9問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(唯=ただ)
唯君子能守其節。
※学習用に作成した例文です。
第10問
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。(「与其A寧B」=AするよりはむしろBせよ)
与其信人言、寧信己目。
※学習用に作成した例文です。
解答・解説
第1問の解答と解説
書き下し文:王人をして其の罪を問はしむ。
現代語訳:王は人に命じてその罪を問わせた。
この文は「使AB」の使役形の典型パターンです。「使」の下にある「人」が使役の対象(=働きかけられる相手)で、「をして」という送り仮名を必ず付けます。文末の「問」に「しむ」を送るのを忘れると使役の意味が消えてしまうので注意しましょう。訳す際は「主語が~に命じて…させる」という日本語にすると自然になります。「令」も同じ働きをするので、両方セットで覚えておきましょう。
第2問の解答と解説
書き下し文:賢者は愚者に疑はる。
現代語訳:賢い人は愚かな者に疑われる。
「見A於B」の形で、「見」は受身の助動詞「る・らる」にあたり、「於」は「~に(よって)」を表します。ここでは「賢者」が動作を受ける側、「愚者」が動作をする側であることを見抜くのがポイントです。「見」を単純に「見る」と訳してしまう誤りが非常に多いので、直後に動詞が来ていること、文末に「於+名詞」が来ていることを確認して受身と判断しましょう。
第3問の解答と解説
書き下し文:弱者は強者の奪ふ所と為る。
現代語訳:弱い者は強い者に奪われる。
「為A所B」は受身形のもう一つの代表パターンで、「AのB(する)所と為る」と読みます。「為」を「なす」ではなく「なる」と読む点、「所」の直前の動詞(ここでは「奪」)を連体形にして「Aの奪ふ所」とまとめる点が最大の注意点です。「為」+「所」という2つの漢字が離れた位置で連動していることに気づけるかどうかが正解のカギになります。
第4問の解答と解説
書き下し文:人其の過ちを知らず。
現代語訳:人はその過ちを知らない。
基本の単純否定「不」です。返読文字として「不」は下の動詞(ここでは「知」)よりも先に置かれますが、書き下しでは動詞の後ろに送って読む点が重要です。「不知」を「知らず」と読めるかどうかは漢文学習の最初の関門なので、ここで確実に定着させておきましょう。誤って「不」をそのまま「ふ」と音読みしてしまう誤答が見られます。
第5問の解答と解説
書き下し文:未だ嘗て是の言を聞かざるなり。
現代語訳:今までにこの言葉を聞いたことがない。
「未」は「未だ~ず」で「まだ~していない」という状態を表す否定語です。「嘗」は「かつて」という副詞で、「未だ嘗て~ず」全体で「今まで一度も~したことがない」という経験の否定を表す決まった言い回しになります。「未」を単純否定の「不」と混同して「聞かず」だけにしてしまうと、「まだ~ない」という含みが訳に出てこないので減点対象です。文末の「也」は断定・強調を添える終助詞で、「なり」と読みます。
第6問の解答と解説
書き下し文:子何の故に去らざるや。
現代語訳:あなたはどういう理由で去らないのか。
「何故」は「なんのゆえに」と読み、理由を尋ねる疑問の言葉です。文末の「乎」は疑問の終助詞で「や」と読みます。この文は単なる否定文(不去)に疑問語「何故」と終助詞「乎」が加わっているため、疑問形として処理する必要があります。「子」は二人称「あなた」を表す漢字であることも合わせて確認しておきましょう。
第7問の解答と解説
書き下し文:豈に慎まざるべけんや。
現代語訳:どうして慎まないでよいことがあろうか、いや慎むべきだ。
「豈に~乎(や)」は反語形の最重要パターンで、「豈」と文末の「乎」が対応してセットで働きます。この文では「可不慎」(慎まざるべし=慎まなくてよい)という内容を「豈に~や」で強く否定し、結果的に「慎むべきだ」という強い肯定の意味を作り出しています。反語は形の上では疑問文ですが、意味は正反対(強い断定)になる点が最大の注意点で、訳の最後には必ず「(いや、~)」という裏の意味を添えて確認しましょう。
第8問の解答と解説
書き下し文:若し学を勉めずんば、則ち業を成す能はず。
現代語訳:もし学問に励まなければ、事業を成し遂げることはできない。
「若し~ば」で条件(仮定)を作り、「則ち」で「そうすると(必ず)」という結果を導く、仮定形の基本形です。「不勉学」を「んば」の形にして仮定条件にする際、「学を勉めずんば」のように未然形+「ずんば」に活用させる点が書き下しの技術的なポイントです。また「能不成業」ではなく「不能成業」の語順なので、「能はず」と可能の否定形(能はず)として訳す点に注意しましょう。「不能」を「あたはず」と読み、「~することができない」という可能の否定として処理できるかどうかが得点の分かれ目です。仮定形は「若・如(もし)」と「則(すなはち)」がセットで出てくることが多いので、この組み合わせを見た瞬間に条件文だと判断できるようにしておきましょう。
第9問の解答と解説
書き下し文:唯君子のみ能く其の節を守る。
現代語訳:ただ君子だけがその節を守ることができる。
「唯」は限定形の代表的な目印で、対象となる語(ここでは「君子」)の下に「のみ」という送り仮名を添えて読みます。「独・只・但」なども同じ働きをするので、まとめて覚えておくと得点源になります。この文では「唯」と「のみ」が呼応して「君子」だけを特別扱いしている点、さらに「能く」(よく=~することができる)という可能の意味を表す副詞が続いている点も見落とさないようにしましょう。限定形は「唯~のみ」という形をそのまま覚えてしまえば、初見の文でも即座に対応できます。
第10問の解答と解説
書き下し文:其の人の言を信ずるよりは、寧ろ己の目を信ぜよ。
現代語訳:人の言葉を信じるよりも、むしろ自分の目を信じよ。
「与其A寧B」は比較選択形の代表的な句形で、「AするよりはむしろBせよ(Bする方がよい)」という意味を表します。「与其」は「其の〜よりは」と読む一つのまとまりで、「其」は「その」と読み下す点に注意が必要です。「寧」は「むしろ」と読み、後半のBの内容(ここでは「己の目を信ずる」)を選ぶべきものとして強調しています。「不如・莫如(~に如かず)」も同じ比較のグループに属する句形なので、「与其~寧~」「A不如B」の両方をセットで整理しておくと、初見の文にも対応しやすくなります。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問を振り返ると、句形はどれも「特定の漢字が出てきたら、その型に当てはめる」というシンプルな作業の積み重ねですね。
藤原:そうですね。大事なのは、漢字そのものを「句形のスイッチ」として覚えてしまうことです。「使・令」=使役、「見・於・為所」=受身、「未・非・無」=否定、「何・安・幾」=疑問、「豈・何ぞ~乎」=反語、「若・如・則」=仮定、「唯・独・但」=限定、「与其~寧~」「不如・莫如」=比較というように、漢字とセットで型を暗記してしまえば、初めて見る文章でも構造が瞬時に見抜けるようになります。
翔先生:さらに大事なのは、書き下し文だけで満足せず、必ず現代語訳まで作る習慣をつけることです。特に反語形は「訳の最後に(いや、~)」を補えるかどうかで理解度がはっきり分かれます。今回の10問を音読しながら、句形と訳がセットで頭に浮かぶまで繰り返し練習してみてください。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は漢文句形の基本8パターン(使役・受身・否定・疑問・反語・仮定・限定・比較)を、10問の一問一答形式で練習しました。句形は暗記した「型」に当てはめて処理する部分が大きい単元なので、今回の問題を何度も解き直し、書き下し文と現代語訳がスラスラ出てくる状態を目指しましょう。次回の第2回では、さらに応用的な句形パターンにも挑戦していきますので、お楽しみに。
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