はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、今回は「要約」の基礎トレーニングですね。
翔先生:はい。要約は現代文の土台となる力です。文章の「主張」と「具体例・理由」を見分け、余計な部分を削って核心だけを残す練習をします。今回は短い自作の評論文を10本用意しました。
藤原:字数指定も30字〜60字とバラエティを持たせています。字数がシビアなほど、何を残し何を削るかの判断力が鍛えられますよ。
翔先生:1問ずつ丁寧に解いてから解説を読んでくださいね。それでは始めましょう!
問題(全10問)
第1問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
言葉は単なる情報伝達の道具ではない。同じ内容を伝える場合でも、選ぶ言葉によって相手に与える印象は大きく変わる。たとえば「失敗した」と言うか「学びの機会を得た」と言うかで、聞き手の受け取り方はまったく異なる。私たちは日々、無意識のうちに言葉を選び、それによって自分と相手の関係や気持ちを形づくっている。だからこそ、言葉を選ぶ意識を持つことは、人間関係を豊かにする第一歩なのである。
【条件】40字以内で要約せよ。
第2問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
現代社会には情報があふれている。ニュース、SNS、広告など、私たちは一日に膨大な量の情報に触れているが、そのすべてを吟味する時間はない。そのため多くの人は、目にした情報を深く考えずに受け入れてしまいがちである。しかし情報の真偽や重要性を見極めずに行動すれば、誤った判断につながりかねない。情報過多の時代だからこそ、何を信じ、何を捨てるかを選び取る力が求められている。
【条件】45字以内で要約せよ。
第3問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
読書には多読と精読という二つの方法がある。多読は幅広い知識やものの見方を得るのに適しており、精読は一つの文章を深く理解し、思考を鍛えるのに適している。どちらか一方だけでは不十分で、多くの本に触れて視野を広げつつ、時には一冊をじっくり読み込む経験も必要である。二つの読み方を状況に応じて使い分けることこそ、読書を真に自分の力にする方法だと言える。
【条件】50字以内で要約せよ。
第4問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
時間は誰にとっても平等に一日二十四時間しかない。にもかかわらず、同じ時間の中で多くのことを成し遂げる人と、そうでない人がいる。その違いを生むのは、何に時間を使うかという優先順位の決め方である。重要度の低い作業に時間を奪われれば、本当にやるべきことに割ける時間は減ってしまう。限られた時間を有効に使うためには、まず何が本当に大切かを見極める必要がある。
【条件】45字以内で要約せよ。
第5問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
伝統文化は、ただ古いものを守るだけでは受け継がれない。時代が変われば人々の生活も価値観も変わるため、昔と全く同じ形を維持しようとすれば、かえって多くの人から関心を失われてしまう。祭りや工芸の中には、新しい技術や表現を取り入れることで、若い世代の担い手を増やしているものもある。伝統を未来へつなぐには、核となる精神を保ちながら、形を柔軟に変えていく姿勢が欠かせない。
【条件】50字以内で要約せよ。
第6問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
科学技術の進歩により、私たちは多くの判断を機械に任せられるようになった。道案内はカーナビが、計算は電卓がしてくれる。便利である一方、こうした技術に頼りきることで、自分で考え、判断する機会が減っているとも言える。技術はあくまで人間の判断を助ける道具であり、最終的な決断を下すのは人間自身であるという意識を忘れてはならない。
【条件】40字以内で要約せよ。
第7問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
集団の中で意見が対立したとき、多数派の意見に合わせることが「和」だと考える人は多い。しかし、異なる意見をすべて一つにまとめてしまうことは、必ずしも良い結果を生むとは限らない。むしろ多様な意見がぶつかり合う中でこそ、一人では気づけなかった視点が見つかることがある。真の協調とは、対立を避けることではなく、違いを認め合いながら議論を重ねていく姿勢の中にある。
【条件】50字以内で要約せよ。
第8問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
失敗を恐れるあまり、新しい挑戦を避けてしまう人は少なくない。しかし失敗そのものは、必ずしも悪いことではない。失敗によって初めて、自分の考え方のどこに誤りがあったのかが明らかになり、次に生かせる具体的な気づきが得られるからである。挑戦しなければ失敗もしないが、同時に成長の機会も失われる。失敗を成長の材料として受け止める姿勢こそが、人を前進させる力になる。
【条件】45字以内で要約せよ。
第9問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
SNSでは、多くの人が自分の生活の良い面だけを選んで発信している。旅行や成功体験の投稿は目立つが、日々の失敗や悩みが語られることは少ない。そのため、他人の投稿を見比べているうちに、自分の生活だけが劣っているように感じてしまう人がいる。しかし、SNSに映るのは他人の生活のごく一部にすぎないという事実を意識するだけでも、こうした比較による不安は和らげられる。
【条件】50字以内で要約せよ。
第10問
次の文章を読み、後の指示に従って要約しなさい。
環境問題の解決は、国や企業だけの課題ではない。私たち一人ひとりの日常の選択、たとえば買い物の仕方やごみの出し方も、積み重なれば大きな影響を及ぼす。もちろん個人の行動だけで問題がすぐに解決するわけではないが、小さな行動の積み重ねが社会全体の意識を変え、大きな仕組みを動かす力にもなり得る。一人の力は小さくても、無関係ではいられないのである。
【条件】55字以内で要約せよ。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答例:言葉の選び方は相手の受け取り方を変えるため、意識して選ぶことが人間関係を豊かにする。(39字)
この文章は「言葉は単なる道具ではない」という主張を「たとえば」以下の具体例で説明し、最後の一文で結論をまとめる構成になっています。要約では具体例の「失敗した/学びの機会」の部分をそのまま入れる必要はなく、「言葉の選び方が印象を変える」という一般化された内容だけを残すのがポイントです。具体例をそのまま書き写してしまうと字数を超えてしまい、間違えやすいので注意しましょう。
第2問の解答と解説
解答例:情報があふれる現代では、情報の真偽や重要性を見極めて選び取る力が求められる。(38字)
文章前半の「情報が多くて吟味できない」という現状説明は、後半の主張のための前置きです。要約では「現状→問題点→主張」のうち、最も重要な結論部分(最後の一文)を中心にまとめます。「時間がない」「深く考えずに受け入れる」といった過程の説明を詳しく書きすぎると、指定字数をオーバーしやすいので、結論に直結する言葉を優先して選びましょう。
第3問の解答と解説
解答例:多読と精読にはそれぞれ利点があり、状況に応じて使い分けることが読書を力にする。(40字)
この文章は「多読の利点」「精読の利点」という対比構造のあとに、「両方を使い分けるべき」という主張が来る典型的なパターンです。対比の内容を細かく書くと字数が足りなくなるため、「それぞれに利点がある」と一言でまとめ、最後の主張に多くの字数を割くのがコツです。片方の読み方の利点しか書かないと、対比を捉えられていない不十分な要約になってしまいます。
第4問の解答と解説
解答例:成果の差は時間の使い方ではなく、何を優先するかという判断の違いから生まれる。(38字)
「時間は平等」という事実は前提であり、主張の本体ではありません。文章の核心は最後の「優先順位を見極める必要がある」という部分です。時間が平等であるという当たり前の事実を要約に大きく書いてしまうと、本来書くべき「優先順位」の要素が入らなくなるため注意が必要です。前提と主張を区別する練習として最適な一題です。
第5問の解答と解説
解答例:伝統を未来へ継承するには、核となる精神を保ちつつ形を柔軟に変える姿勢が必要だ。(40字)
文章は「そのまま守るだけでは廃れる」という逆説的な導入から始まり、「精神を保ちながら形を変える」という主張に至ります。祭りや工芸の具体例は主張を裏づける補足情報なので、要約には含めなくてよい部分です。「変えればよい」とだけまとめると、「核は保つ」という重要な条件が抜け落ちてしまうため、両方の要素を必ず入れることが高得点のポイントです。
第6問の解答と解説
解答例:技術は判断を助ける道具であり、最終的な決断は人間が下すという意識が大切だ。(37字)
カーナビや電卓という具体例は、「技術に頼る便利さ」を説明するための例にすぎません。文章の最重要部分は最後の一文にある「技術はあくまで道具」「決断は人間が下す」という二つの要素です。具体例の固有名詞(カーナビ・電卓)を要約に入れると、一般化されていない不十分な要約になってしまうので気をつけましょう。
第7問の解答と解説
解答例:真の協調とは対立を避けることではなく、違いを認めて議論を重ねる姿勢にある。(37字)
この文章は「多数派に合わせることが和だ、という一般的な考え」をまず示し、それを「しかし」で否定する逆接構造です。要約で書くべきは否定された前半ではなく、逆接のあとに来る筆者の主張です。逆接の前の内容をそのまま要約に入れてしまうと、筆者の主張と正反対の内容になってしまうため、最も間違えやすいパターンの一つです。
第8問の解答と解説
解答例:失敗は誤りへの気づきを与えるものであり、成長の材料として受け止める姿勢が大切だ。(41字)
「失敗を恐れて挑戦を避ける人が多い」という導入部分は、問題提起として文章の話題を示しているだけです。要約の中心は「失敗によって気づきが得られる」「失敗を成長の材料とする姿勢が大切」という後半二つの要素です。導入部分だけを長く書いてしまい、肝心の結論部分の字数が足りなくなるミスが起こりやすいので注意しましょう。
第9問の解答と解説
解答例:SNSに映るのは他人の生活の一部にすぎないと意識すれば、比較による不安は和らぐ。(40字)
前半の「良い面だけを発信する」「比較して不安になる」という部分は、問題状況の説明です。文章の主張は最後の一文にある「一部にすぎないと意識すれば不安は和らぐ」という解決策の提示にあります。状況説明ばかりを詳しく書き、肝心の解決策を書き忘れると、要約として点数を落とすので注意が必要です。
第10問の解答と解説
解答例:環境問題は個人の課題でもあり、小さな行動の積み重ねが社会を動かす力になり得る。(39字)
「国や企業だけの課題ではない」という否定表現から入り、「個人の行動が大きな力になる」という主張へつながる構成です。「もちろん〜」という譲歩部分(個人だけではすぐに解決しない)は、主張を補強するための注釈にすぎないため、字数指定が短い場合は思い切って省略してよい部分です。譲歩部分を丁寧に書きすぎて主張が書ききれなくなるミスに注意しましょう。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:要約で一番大切なのは「具体例」と「主張」を見分けることです。たとえば話や「もちろん〜」のような譲歩表現は、主張を分かりやすくするための補足であって、要約の中心にはなりません。
藤原:それに加えて、逆接の接続語(しかし・だが)にも注目してほしいですね。逆接の前は「一般的な考え」、後ろに「筆者の本当の主張」が来ることが非常に多いです。今回の第7問はその典型でした。
翔先生:字数指定を守るコツは、まず主張の一文を書いてから、字数に余裕があれば理由や条件を付け加えるという順番で組み立てることです。最初から全部詰め込もうとすると、削るのが大変になりますよ。
藤原:この10問を繰り返し解いて、「主張はどこか」「削っていい具体例はどこか」を瞬時に見抜く力を養っていきましょう。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は要約練習問題の第1回として、身近なテーマの短い評論文10本を使い、主張と具体例を見分ける基礎トレーニングを行いました。要約力は現代文全体の土台となる力であり、繰り返し練習することで着実に伸びていきます。ぜひ何度も解き直して、感覚を身につけてください。
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