はじめに|あなたの小論文に「芯」はあるか?
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
突然ですが、あなたはこんな経験をしたことはありませんか?
- 「一生懸命書いたのに、先生から『何が言いたいのかわからない』と言われた」
- 「書き始めたら途中で迷子になって、結論がブレてしまった」
- 「字数は埋めたけど、なんとなく薄い気がする……」
これらの悩みはすべて、「テーゼ(主張)」が曖昧なまま書き始めてしまっていることが原因です。
小論文における「テーゼ」とは、あなたの論全体を貫く「中心的な主張」のことです。これが揺るぎなく立っていれば、文章は自然とまとまります。逆に、テーゼが弱いまま書き進めると、どれだけ語彙力があっても、どれだけ知識が豊富でも、「読んだ後に何も残らない」文章になってしまいます。
この記事では、入試小論文でテーゼを立てる具体的な技術を、手順・例文・チェックリストを使いながら徹底解説します。翔先生の塾現場でのエピソードも交えながら、読み終わったその日から実践できる内容をお届けします。
核心情報|テーゼとは何か、なぜそれが最重要なのか
テーゼ(主張)の定義
「テーゼ(These)」はドイツ語・ギリシャ語由来の言葉で、日本語では「命題」「主張」と訳されます。小論文の文脈では、「自分がこの問題についてどう考えるか」を一文で表したものです。
たとえば、「AIと人間の共存」というテーマで小論文を書く場合、次のような文がテーゼになります。
「AIは人間の労働を補完するツールであり、人間はAIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなす能力を育てることに注力すべきだ。」
このように、テーゼは「問い」に対する「答え」であり、論全体の背骨です。この一文があるかないかで、小論文の完成度は天と地ほど変わります。
テーゼがないと何が起きるか?
翔先生より:
「僕が担当している生徒で、とても文章が上手な子がいるんですよ。語彙も豊富で、文章のテンポも良い。でも最初の答案を見たとき、読み終わっても『で、結局何が言いたいの?』ってなったんです。原因は一つで、テーゼがなかったんです。書いているうちにどんどん思考が広がって、最終的に『AIも人間も大切』みたいな当たり前の着地になってしまっていた。テーゼを先に確定させるよう指導したら、次の答案でガラッと変わりました。」
テーゼのない小論文は、「地図のない旅」です。書いている本人も迷子になり、読んでいる採点者も迷子にさせてしまいます。
具体的な方法・ステップ|テーゼを立てる5つの手順
ステップ1:問いを正確に読む(出題意図の把握)
テーゼを立てる前に、まず「問いが何を聞いているか」を正確に把握することが必要です。小論文の問いには大きく3種類あります。
- 問題提起型:「〜について論じなさい」
- 賛否型:「〜に賛成か反対か、あなたの意見を述べよ」
- 課題解決型:「〜という問題をどう解決すべきか論じなさい」
それぞれ「何に答えるべきか」が違います。問いのタイプを見誤ると、どれだけ良いテーゼを立てても的外れになります。
【実践チェック】
- □ 問いの動詞(「論じよ」「述べよ」「考察せよ」)を丸で囲んだか?
- □ テーマのキーワードに下線を引いたか?
- □ 問いが何タイプか判断したか?
ステップ2:問いを「自分の言葉」で言い換える
問いを正確に読んだら、それを自分が答えやすい形に言い換えます。これを「問いのリフレーミング」と呼んでいます。
例:
出題:「現代社会におけるSNSの影響について論じなさい。」
↓リフレーミング
「SNSは私たちの生活をよくしているのか?それとも悪くしているのか?どちらで、なぜか?」
こうすることで、自分が答えるべき「問い」が明確になり、テーゼを立てやすくなります。
ステップ3:立場を決める(コミットする)
テーゼを立てる上で最も重要なのが、「どちらかの立場にはっきりコミットする」ことです。
多くの受験生がここでつまずきます。「どちらにも良い面と悪い面があるから……」と言って、どちらの立場にもなりきれない「中立答案」を書いてしまうのです。
藤原より:
「小論文は学術論文ではありません。採点者が見たいのは、あなたが自分の頭で考え、自分の言葉で主張できるかどうかです。『どちらとも言えます』では、思考の放棄と見なされます。たとえ少し偏っていても、明確な立場から論じる方が評価されます。」
立場を決める際の3つの基準:
- 自分が「より説得力のある根拠」を挙げられる方はどちらか?
- 「具体的なエピソード・データ・知識」を使えるのはどちらか?
- 「反論」に対して答えられる自信があるのはどちらか?
ステップ4:テーゼを「一文」で書く
立場が決まったら、それをシンプルな一文に落とし込みます。これが「テーゼ文」です。
テーゼ文の公式:
「〔主語〕は〔どうあるべきか/どういう状態か〕であり、〔なぜなら~だから〕。」
悪いテーゼの例:
- 「SNSには良い面も悪い面もある。」→ 立場がない
- 「SNSは難しい問題だ。」→ 主張がない
- 「SNSについてこれから考えたい。」→ テーゼではなく宣言
良いテーゼの例:
- 「SNSは人々の孤立を深める危険なツールであり、特に青少年に対してはリテラシー教育の義務化が必要だ。」
- 「SNSは社会的弱者の声を可視化する民主的なインフラであり、規制よりも活用を促す政策が求められる。」
どちらも明確な立場・具体的な方向性・論拠への伏線を含んでいます。
ステップ5:テーゼを「3点セット」で検証する
テーゼ文ができたら、書き始める前に必ず次の3点を確認してください。
- 根拠があるか?:そのテーゼを支える論拠を3つ以上思いつくか?
- 反論に答えられるか?:「それって違うんじゃない?」という反論を想定し、切り返せるか?
- 問いに答えているか?:元の問いに対してちゃんと答えているか?
この3点をクリアしたテーゼは「揺るぎない論の土台」になります。
藤原&翔先生の実践アドバイス|テーゼをより強くする技術
「反テーゼ」を先に考えると主張が強くなる
プロの論者が使う技術として、「あえて自分の主張と反対の立場(反テーゼ)を先に考える」という方法があります。
反テーゼを先に想定することで、
- 自分のテーゼの弱点が見えてくる
- 弱点を補強した、より強いテーゼに改良できる
- 本文の中で「反論→切り返し」という論の展開ができる
例:
テーゼ:「AIの普及により、人間は創造的な仕事に集中できるようになる。」
反テーゼ:「AIが普及すると、低スキル労働者が職を失い、格差が拡大する。」
切り返し:「確かに短期的な格差拡大は否定できないが、教育制度の転換によってリスキリングを支援すれば、その問題は解決可能だ。むしろ、AIを活用した職業教育の整備こそが今日の急務である。」
このように「確かに〜。しかし〜」という構造を使うと、テーゼがより説得力を持ちます。これを「譲歩構文」と呼んでいます。
テーゼは「抽象」より「具体」に寄せる
翔先生より:
「受験生のテーゼで一番多い失敗が、抽象的すぎることです。『多様性を認めることが大切だ』とか『環境問題に取り組むべきだ』みたいなテーゼは、誰でも言えるし、誰の心にも刺さらない。テーゼは『どのレベルで、誰が、何をすべきか』まで具体的に踏み込むと、一気に説得力が増します。」
抽象テーゼ:「環境問題に取り組むことが大切だ。」
↓
具体テーゼ:「企業のCO₂排出量の情報開示を法的に義務化し、消費者が環境コストを考慮した選択ができる市場構造を整備すべきだ。」
後者の方がはるかに論じ甲斐があり、採点者の目にも留まります。
テーゼは「書き直す」ものだと知る
多くの受験生が「テーゼは最初に完璧に決めなければならない」と思い込んでいます。しかし実際には、下書きを書きながらテーゼを修正することが普通です。
書いているうちに「やっぱりこっちの方が論じやすい」「この根拠の方が強い」と気づいたら、テーゼを修正してください。テーゼと本文が一致した状態で完成させることが重要です。
よくある失敗・注意点|テーゼを台無しにするNG例
NG① 途中でテーゼがブレる「迷子型答案」
書き始めはA派だったのに、書いているうちにB派になってしまうパターンです。これは採点者に「論理的に考えられない人」と判断されます。
対策:テーゼ文を付箋などに書いて目の前に貼り、常に確認しながら書く。
NG② テーゼが問いと無関係「独り歩き型答案」
自分の言いたいことを書き続けて、問いに答えていないパターンです。どれだけ良い主張でも、問いに答えていなければ0点です。
対策:書き終わったら、問い文を読み直し「自分はこれに答えているか?」を確認する。
NG③ テーゼが空虚な「お気持ち型答案」
「〜になってほしいと思います」「〜が大事だと感じます」のように、感情・願望でテーゼを終わらせてしまうパターン。小論文は「論」の文章であり、感想文ではありません。
対策:「〜すべきだ」「〜が必要である」「〜と考える」など、論述に適した文末表現を使う。
NG④ テーゼが長すぎて「散漫型答案」
テーゼを3〜4文にわたって書いてしまうと、何が中心的な主張かが見えなくなります。
対策:テーゼは基本的に1〜2文以内に収める。長くなりそうなら「テーゼ+補足文」に分ける。
今すぐできるアクション3つ
アクション1:過去の小論文答案のテーゼを抜き出してみる
あなたがこれまでに書いた小論文を1本取り出し、「テーゼに当たる一文はどれか?」を探してみてください。もし見つからなければ、それがあなたの課題です。見つかったとしても、今回学んだ基準で評価してみましょう。
アクション2:1つのテーマで「5種類のテーゼ」を書いてみる
「SNS」「AI」「少子化」などのテーマを1つ選び、異なる立場・切り口から5つのテーゼ文を書いてみてください。これはテーゼ発想の筋トレです。数をこなすうちに、「強いテーゼ」の感覚が身につきます。
例:テーマ「少子化」の5種類のテーゼ
- 「少子化の根本原因は経済的不安にあり、若者への直接給付こそが最も効果的な対策だ。」
- 「少子化は日本が過剰な長時間労働文化を是正するチャンスであり、働き方改革と子育て支援は一体で推進すべきだ。」
- 「少子化対策として移民受け入れを拡大することは、文化的摩擦というリスクを内包しており、慎重な制度設計が求められる。」
- 「少子化は都市一極集中が招いた構造的問題であり、地方移住支援と地域の雇用創出が最優先課題だ。」
- 「少子化を問題視する前提自体を問い直す必要があり、人口減少に対応した社会インフラの再設計こそが本質的な議論だ。」
アクション3:「テーゼ検証シート」を使って答案を書く
次回小論文を書くときは、以下のシートを事前に埋めてから書き始めてください。
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 問いのタイプ | 問題提起型 / 賛否型 / 課題解決型 |
| リフレーミングした問い | (自分の言葉で書く) |
| 選んだ立場 | A派 / B派 |
| テーゼ文(1〜2文) | (書く) |
| 根拠①②③ | (箇条書きで3つ) |
| 想定される反テーゼ | (書く) |
| 反テーゼへの切り返し | (書く) |
このシートを埋めるだけで、答案の設計図が完成します。あとはそれに従って書くだけです。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回は、入試小論文でテーゼ(主張)を立てる技術を5つのステップと実践的なアドバイスで解説しました。最後に要点を整理します。
- ✅ テーゼとは「論全体の背骨」となる中心的な主張
- ✅ テーゼを立てるには「問いを読む→リフレーミング→立場を決める→一文で書く→3点検証」の5ステップ
- ✅ テーゼは「反テーゼ」を先に考えると強くなる
- ✅ 「具体的」「明確な立場」「論述口調」の3条件が揃ったテーゼが強い
- ✅ テーゼは書きながら修正してよい。最終的に本文と一致させることが大切
小論文の力は「センス」ではなく「技術」です。今日学んだテーゼの立て方を繰り返し練習することで、必ず書けるようになります。翔先生も私も、それを信じて毎日生徒と向き合っています。
日本国語塾トップは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
前橋校・横浜校・オンラインで全国対応しています。
nihonkokugojuku.comからお気軽にお問い合わせください。
また、数学・理系科目は数強塾(sukyojuku.com)もあわせてご利用ください。