数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
翔:今回は東大古文の中心である「傍線部の現代語訳」問題について、実践的に解説していきますね。
藤原:東大古文は記述式で、現代語訳・内容説明・理由説明などが組み合わさって出題される形式が近年は続いています。中でも現代語訳問題は配点の比重が大きいと考えられており、ここで安定して得点できるかどうかが合否を分けると言っても過言ではありません。
翔:今日は「逐語訳をどう作り、それをどう合格答案に仕上げていくか」という手順を、自作の例文を使いながら具体的にお伝えします。
はじめに
東大古文における現代語訳問題は、単に古語の意味を暗記していれば解けるというものではありません。文脈の中でどの語義を採用するか、省略された主語や目的語をどう補うか、直訳のままでよいのか意訳すべきか、そして限られた解答欄に収まるように情報を圧縮できるか――こうした複数の判断を同時に行う総合力が問われます。
本記事では、東大古文の「現代語訳」問題を攻略するための具体的な手順を、自作の例文を交えながら段階的に解説します。特定の年度の出典や本文をそのまま引用することはせず、あくまで解法・考え方に焦点を当てて解説していきますので、どの年度の東大古文にも応用できる内容になっています。
出題の全体像
翔:まず東大古文の出題形式について整理しておきましょう。
藤原:近年は大問1題構成で、その中に現代語訳問題・内容説明問題・理由説明問題などが複数配置される形が続いています。試験時間や配点、設問数は年度によって変更される可能性がありますので、必ず最新の募集要項・入試要項でご確認ください。
翔:現代語訳問題については、二重傍線や単純な傍線が本文中に引かれ、「傍線部を現代語訳せよ」という形で問われることが多いのが特徴ですね。
藤原:そうですね。東大古文の現代語訳は、単語の意味を並べるだけの直訳では得点が伸びにくい設計になっています。解答欄が非常に狭く、その中に「文法的に正確な訳」「文脈に沿った語義選択」「省略要素の補完」という3つの要素を凝縮させる必要があるからです。
翔:だからこそ「逐語訳を作る→文脈で調整する→解答欄に圧縮する」という3段階のプロセスを意識することが、東大古文攻略の第一歩になります。
設問タイプ別の解き方
1. 省略された主語・目的語の補い方
藤原:古文は主語や目的語が頻繁に省略される言語です。東大古文の現代語訳問題では、この省略部分を正確に補えるかどうかが最初の関門になります。
翔:ここで自作の例文を使って考えてみましょう。以下は解説のための自作例文です。
(自作例文)「かくのたまへば、いとうれしくて、すなはち参りぬ。」
翔:この文だけを見ると、「うれしくて」「参りぬ」の主語がどこにも書かれていません。しかし前後の文脈から、「かくのたまふ」の主語(発言者)と、「うれしくて参る」の主語は別人物である可能性が高いと判断できます。
藤原:ここで重要なのは、主語を補う根拠を必ず本文の中に求めるという姿勢です。「なんとなく」で補ってしまうと、採点者から見て根拠のない訳になってしまいます。敬語表現(尊敬語・謙譲語)の有無、会話文かどうか、直前の動作主体などを丁寧に確認して、論理的に主語を特定していく必要があります。
翔:目的語についても同様です。「見る」「言ふ」「思ふ」といった動詞が出てきたときに、「何を」見たのか、「何を」言ったのかを本文中の情報から補わなければ、訳文として意味が通らなくなってしまいます。
2. 古語の語義の選択
藤原:次に重要なのが、多義語における語義の選択です。東大古文では、辞書的な意味を複数持つ古語が傍線部に含まれることが多く、文脈に合わない語義を選んでしまうと大きく減点されてしまいます。
翔:これも自作の例文で見てみましょう。
(自作例文)「げにさやうのことも、いとをかしうこそおぼえね。」
翔:「をかし」は「趣がある・興味深い」という意味が有名ですが、文脈によっては「滑稽だ・こっけいだ」という意味で使われることもあります。この例文の前後にどのような話題が展開しているかによって、選ぶべき語義がまったく異なってきます。
藤原:ここで大切なのは、単語帳に載っている「第一義」を機械的に当てはめるのではなく、その古語が持つ複数の語義の中から、文脈に最も適合するものを選び取る訓練を積むことです。普段の古文単語学習の段階から、「この単語には他にどんな意味があるか」を常に意識しておくとよいでしょう。
翔:特に「あはれ」「をかし」「なつかし」「ゆゆし」といった評価語は多義的なので要注意ですね。
3. 直訳と意訳の境界
藤原:東大古文の現代語訳では、「どこまで直訳し、どこから意訳すべきか」という判断が非常に重要になります。
翔:基本方針としては、文法事項(助動詞の意味、敬語の種類、係り結びなど)は必ず直訳ベースで正確に反映させ、その上で自然な現代日本語になるように語順や言い回しを調整する、という二段構えで考えるとよいですね。
藤原:自作例文で確認してみましょう。
(自作例文)「人にも語り伝ふべくこそはべれ。」
藤原:この文を逐語訳すると「人にも語り伝えるべきでございます」となります。「べく」は当然・推量の助動詞「べし」の連用形、「はべり」は丁寧語です。ここまでは文法的な直訳の範囲です。
翔:ここからさらに文脈に応じて、「ぜひ人に語り伝えるべきでございましょう」のように、文意を自然にするための語調整(意訳)を加えることになります。ただし、この意訳の段階で「べし」の当然のニュアンスを消してしまったり、丁寧語の存在を訳文から完全に落としてしまったりすると、文法的な減点につながります。
藤原:つまり、意訳は「文法要素を消すための言い訳」ではなく、「直訳した内容を自然な日本語に整えるための調整」だと理解することが大切です。
4. 解答欄に収める圧縮の技術
翔:最後に、東大古文特有の「解答欄の狭さ」への対応です。東大の解答用紙は行数が限られており、逐語訳した内容をすべて書き込もうとすると、多くの場合スペースが足りなくなります。
藤原:ここで必要になるのが「圧縮」の技術です。まず全要素を含んだフル逐語訳を頭の中(あるいは下書き用紙)で作り、そこから優先順位をつけて情報を削っていきます。
翔:優先順位の付け方としては、①文法的に必須の要素(助動詞の意味、敬語の種類など)、②文脈上必須の補足(省略された主語・目的語)、③自然な日本語にするための言い回しの順で重要度を考えるとよいでしょう。
藤原:自作例文で圧縮の練習をしてみましょう。
フル逐語訳(自作):「(その人が)このようにおっしゃったので、(私は)たいそう嬉しく思って、すぐにそこへ参上した。」
圧縮後(自作):「そうおっしゃったので嬉しくすぐに参上した。」
翔:圧縮する際は、主語をカッコで示す必要はなく、文脈上明らかな場合は思い切って省略してよいのがポイントです。ただし、主語が誰であるかを採点者に伝える必要がある場合(省略された主語を補う設問要求がある場合など)は、簡潔な形で必ず明示しましょう。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原:ここまでの手順をまとめると、東大古文の現代語訳問題は「①逐語訳を正確に作る→②文脈から語義・省略要素を確定する→③直訳と意訳のバランスを取る→④解答欄に合わせて圧縮する」という4ステップで完成させることができます。
翔:実践する上でのコツをいくつか付け加えると、まず解答を書く前に「傍線部の文法構造を品詞分解する」習慣をつけることをおすすめします。動詞・助動詞・助詞をひとつひとつ確認し、それぞれの意味を書き出してから訳文を組み立てると、抜け漏れが格段に減ります。
藤原:また、過去問演習の際は「自分の逐語訳」と「圧縮後の答案」を必ず両方ノートに残しておくとよいですね。圧縮の過程で何を残し、何を削ったかを振り返ることで、次第に「削ってよい部分」の感覚が養われていきます。
翔:私が指導していて感じるのは、東大古文の現代語訳問題が苦手な受験生の多くは、実は古語の知識不足ではなく、「文脈判断」と「圧縮」の練習不足であることが多いという点です。逐語訳まではできても、そこから合格答案に仕上げる工程を軽視してしまいがちなんです。
藤原:ですから、単語・文法の暗記だけで終わらせず、必ず「答案化」まで含めた練習を積むことが東大古文攻略の鍵になります。
よくある失敗と解決策
翔:ここでは、現代語訳問題でよく見られる失敗パターンとその解決策を整理します。
- 失敗①:主語を補わずに訳してしまう
解決策:品詞分解の段階で、動作の主体が本文中のどこにあるかを必ずマークする習慣をつけましょう。敬語表現の有無は主語特定の重要な手がかりになります。 - 失敗②:辞書的な第一義だけで訳してしまう
解決策:古語の学習時に、必ず複数の語義を確認し、「この文脈ではどちらが適切か」を自問する練習を積みましょう。 - 失敗③:直訳しすぎて不自然な日本語になる、または意訳しすぎて文法要素が消える
解決策:まず文法的に正確な逐語訳を作ってから、そこに手を加えるという順番を必ず守りましょう。いきなり自然な日本語を目指すと文法要素が抜け落ちがちです。 - 失敗④:解答欄からあふれてしまう、あるいは逆にスカスカになってしまう
解決策:優先順位(文法必須要素→省略要素の補完→自然な言い回し)を意識して、削る順番をあらかじめ決めておくことが有効です。
今日からできるアクション
藤原:最後に、今日から実践できる具体的な学習アクションをお伝えします。
- 過去問または問題集の現代語訳問題を1問選び、まず品詞分解をして逐語訳を書き出す。
- その逐語訳の中で、省略されている主語・目的語がないかをチェックし、本文中の根拠とともに補う。
- 使われている古語について、辞書で複数の語義を確認し、文脈上どの語義が適切かを検討する。
- 逐語訳を実際の解答欄の文字数を想定して圧縮し、圧縮前後を比較して「何を削ったか」をノートに記録する。
- これを日々の古文学習の中で継続し、東大古文の現代語訳問題に対する「答案化」の感覚を養っていく。
翔:この5つのステップを繰り返すことで、単なる古語暗記にとどまらない、東大古文の現代語訳問題に対応できる実戦力が身についていきます。
まとめ・日本国語塾TOPについて
藤原:東大古文の現代語訳問題は、古語の知識・文法力・文脈把握力・答案作成力という複数の力が総合的に問われる設問です。逐語訳を正確に作った上で、省略要素を補い、語義を選択し、直訳と意訳のバランスを取りながら解答欄に圧縮する――この一連の手順を身につけることが、東大古文攻略の王道です。
翔:ぜひ今日お伝えした手順を、日々の古文学習に取り入れてみてください。
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