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はじめに|評論文が読めない本当の理由
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
「評論文を読んでいると、途中で何を言っているのか分からなくなる」「傍線部の意味を問われても、本文のどこを見ればいいか分からない」——こうした悩みは、毎年多くの受験生から寄せられます。
先日、こんな生徒がいました。偏差値55前後で共通テストの現代文を安定して解けずにいた高校3年生のKさんです。彼女は「本文はちゃんと読んでいるつもりなのに、なぜか答えが合わない」と訴えていました。解答を一緒に見直すと、すぐに原因が分かりました。筆者が「具体例」を挙げている部分と、「抽象的な主張(論旨)」を述べている部分の区別ができていなかったのです。具体例を「筆者の主張」だと思い込み、そこに傍線部の答えを求めていました。これは非常に典型的な、しかし致命的なミスです。
この記事では、現代文評論文を読む上で最も根本的かつ重要なスキルである「具体と抽象の往来を読む」という思考法を、実際の入試問題の傾向・例文・解き方の実演を交えながら、どこよりも丁寧に解説します。翔先生のユニークな視点も随所に盛り込みましたので、ぜひ最後までお読みください。
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【基礎知識】「具体と抽象」はなぜ合否を分けるのか
現代文の評論文において、「具体と抽象」の往来を読む力は、合否を決定づける最重要スキルのひとつです。これは決して大げさではありません。
翔先生が過去5年分の主要大学入試問題を分析したところ、共通テスト・センター試験の現代文において、傍線部問題の約70〜80%は「抽象的な表現の言い換え」か「具体例が示す抽象的意味」を問うものであることが分かっています。また、難関私大(早稲田・慶應・MARCH)の現代文でも、記述・選択問わず「筆者の主張(抽象)と具体例の対応関係を正確に把握できているか」を試す問題が頻出です。
なぜこれほど重要なのか。それは、評論文という文章ジャンルそのものが「具体と抽象の往来」によって成立しているからです。評論文の筆者は必ず次のような構造で論を展開します。
- ①抽象的な主張・問題提起を行う
- ②それを裏付けるための具体例・エピソードを提示する
- ③具体例を踏まえて、再び抽象的な結論・主張に戻る
この「抽象→具体→抽象」のサイクルを意識せずに読むと、具体例の面白いエピソードに引きずられて、筆者が本当に言いたかった抽象的な主張を見失ってしまいます。合格できない受験生の多くが、まさにこの罠にはまっています。
逆に言えば、「具体と抽象の往来」を意識するだけで、評論文の読解力は劇的に上がります。実際、日本国語塾TOPでKさんにこの思考法を教えたところ、2か月で共通テスト現代文の得点が68点から87点に向上しました。
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【実践解説】「具体と抽象」の往来を読む5ステップ
ステップ1|「抽象ワード」と「具体ワード」を識別する
まず、文章を読む際に「これは抽象的な表現か、それとも具体的な表現か」を常に意識する習慣をつけましょう。
抽象ワードの目印となる表現例:
- 「〜とは〇〇である」(定義・主張)
- 「つまり」「すなわち」「要するに」(要約・抽象化)
- 「このように」「以上から」(まとめ)
- 「〜というものだ」「〜に他ならない」(断定・強調)
具体ワードの目印となる表現例:
- 「たとえば」「例えば」「〜の場合」(例示)
- 「〜という出来事があった」「〜を考えてみよう」(エピソード・実例)
- 「AさんはBをした」(固有名詞・固有の出来事)
翔先生流のコツは、「たとえば」が出てきたらすぐに鉛筆で四角く囲んで「具体」と書き込み、「つまり」が出てきたら二重丸で囲んで「抽象」と書き込む、という「色分けならぬ記号分け」です。視覚的に構造が見えてくると、格段に読みやすくなります。
ステップ2|具体例の「直前」または「直後」で筆者の主張を探す
評論文における具体例は、必ず筆者の抽象的な主張と対になっています。そして、その抽象的な主張は具体例の直前か直後に書かれていることがほとんどです。
【例文で実演】
「言語は単なる情報伝達の道具ではなく、思考そのものを形成する枠組みである。たとえば、虹の色の数え方は文化によって異なる。日本では七色とされるが、ある地域では二色、また別の地域では五色として認識される。これは、言語が持つ色彩語の数によって、人間の色の知覚そのものが変わることを示している。つまり、私たちは言語なしに世界を認識することができないのだ。」
この文章の構造を分析すると:
- 抽象(主張):「言語は思考そのものを形成する枠組みである」
- 具体(例):「虹の色の数え方が文化によって異なる」というエピソード
- 抽象(結論):「私たちは言語なしに世界を認識できない」
傍線が「虹の色の数え方は文化によって異なる」に引かれていた場合、答えを「虹の色の数え方に関する事実」に求めてはいけません。その前後にある抽象的な主張、すなわち「言語が思考・認識を形成する」という内容で答えることが正解への道です。
ステップ3|「抽象ピラミッド」を意識して段落構造を把握する
評論文全体を見渡すと、「具体と抽象の往来」は段落レベルでも文章全体レベルでも起きています。翔先生が授業で使う「抽象ピラミッド」という概念を紹介します。
文章全体の一番上(最も抽象的なレベル)には筆者の「テーマ・主張」があります。その下に「各章・段落の論点」があり、さらに下に「具体例・エピソード・データ」があります。
この三層構造を意識して読むと、「今読んでいるこの部分は、ピラミッドのどの層にいるのか」が分かるようになります。具体例の層にいるときは「これは何を説明するための例なのか」を常に考え、抽象層に上がったときに答えを確認する、というリズムで読みましょう。
ステップ4|傍線部問題で「具体と抽象」を使いこなす
実際の設問に応用しましょう。傍線部問題には大きく2パターンあります。
パターンA:抽象的な表現に傍線が引かれる
→ 本文中の具体例を参照して、その抽象表現が具体的に何を指すかを説明する。
パターンB:具体的なエピソード・事例に傍線が引かれる
→ その具体例の前後にある抽象的な主張を参照して、「この具体例が示す意味・意義」を答える。
共通テストの選択肢には必ず「具体レベルの言葉のみで答えている選択肢(不正解)」と「適切に抽象化されている選択肢(正解)」が混在しています。選択肢を見たとき、具体例をそのまま繰り返しているだけの選択肢は疑うべきです。
ステップ5|記述問題では「具体→抽象」の変換力を示す
国公立大学の記述問題では、「〜とはどういうことか、説明しなさい」という設問が頻出です。ここで求められているのは、具体的な表現を抽象的な言葉に変換する力です。
たとえば「虹が七色に見えるのは言語のせいだ」という具体的な内容を、「言語が人間の認識・思考の枠組みを規定しているということ」と抽象化して答える。この変換が記述問題の核心です。逆に、具体例をそのまま書き写す答案は、どれだけ字数を稼いでも高い点数は取れません。
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【藤原&翔先生の実践ポイント】塾でしか聞けない「具体と抽象」の裏技
ここからは、一般の参考書にはまず載っていない、日本国語塾TOPならではの指導ノウハウをお伝えします。
【裏技1】「で、一言で言うと?」を問い続ける習慣
藤原が生徒に必ず伝えるのが、段落を読み終えるたびに「で、この段落を一言で言うと?」と自問する習慣です。これは「強制抽象化トレーニング」と呼んでいます。うまく一言にまとめられない場合は、その段落の読み取りが不完全だということ。答えられるまで読み直すことで、自然と抽象化力が鍛えられます。
【裏技2】「翻訳モード」で具体例を読む
翔先生が推奨するのが「翻訳モード」という読み方です。具体例を読むとき、頭の中で「これを筆者の言葉(抽象表現)に翻訳するとどうなるか」を常に考えながら読みます。たとえば、文章中に「スマートフォンを手放せない現代人」という具体例が出てきたら、「翻訳」すると「テクノロジーへの依存が主体的な思考を奪っている」といった抽象表現になる。こうした翻訳を瞬時に行える受験生が、難関大の現代文を制します。
【裏技3】「具体→抽象の距離感」を測る
高度なスキルですが、具体例と抽象的主張の「距離感」を測ることが重要です。距離が近い(具体例がそのまま主張に近い)文章は読みやすいですが、距離が遠い(大きく抽象化が必要な)文章が難関大では多く出ます。普段から新書や評論を読む際に「この具体例はどの程度の抽象化を経て筆者の主張に結びついているか」を意識することで、難文への対応力が身につきます。
【裏技4】接続詞は「具体と抽象の道標」
「たとえば」は抽象→具体への下降を、「つまり」「すなわち」は具体→抽象への上昇を示します。これらの接続詞を「エレベーターのボタン」だと思ってください。「たとえば」で地下(具体)に降り、「つまり」で最上階(抽象)に上がる。このエレベーター移動を追うだけで、評論文の論理構造が手に取るように分かります。
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【よくある失敗パターン】合格できない受験生がやっていること
失敗パターン①|具体例を「筆者の意見」だと思い込む
最も多いミスです。「たとえば」以降の具体例は、筆者の主張を支える素材であり、主張そのものではありません。具体例部分に傍線が引かれている問題で、具体例の内容だけで答えると必ず失点します。改善策:「たとえば」を見たら、その前後の抽象的主張に印をつける習慣を。
失敗パターン②|「つまり」を読み飛ばす
「つまり」「要するに」は筆者が最も重要な主張を再確認する場所です。ここを読み飛ばす受験生は、筆者の核心的メッセージを取りこぼします。改善策:「つまり」が出たら二重丸で囲み、必ずその後の文を丁寧に読む。
失敗パターン③|具体例の内容を詳しく覚えようとする
具体例のエピソードが面白いと、そのディテールを必死に覚えようとする受験生がいます。しかし入試では具体例の細部ではなく、それが示す抽象的な意味・機能が問われます。改善策:具体例は「何を説明するための例か」だけを把握し、細部より抽象的な意味の把握に集中する。
失敗パターン④|本文を「出来事の列挙」として読む
評論文をまるでニュース記事のように「何が起きたか」の列挙として読む受験生がいます。評論文は「何かが主張されている」文章であり、「出来事」ではなく「論旨の展開」を追うべきです。改善策:常に「筆者はこの文章全体で何を主張したいのか」という問いを持って読む。
失敗パターン⑤|選択肢の「具体的すぎる表現」に引っかかる
共通テストや私大の選択肢には、意図的に「具体的すぎる」選択肢が紛れています。たとえば「スマートフォンを使いすぎると頭が悪くなる」という選択肢は具体的すぎて、筆者の抽象的な主張(「テクノロジー依存が思考力を低下させる」)を正確に言い換えていません。改善策:選択肢を読む際、「具体的すぎないか・筆者の主張の抽象レベルと合っているか」をチェックする。
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【実践演習】今すぐできる「具体と抽象」トレーニング
以下の演習問題に挑戦してください。日本国語塾TOPでも実際に使っている練習素材を元にしたオリジナル問題です。
演習1|構造分析トレーニング
次の文章を読んで、「抽象(主張)」の部分と「具体(例)」の部分に分けてください。
「現代社会において、人々はかつてないほど多くの情報に囲まれているにもかかわらず、真に重要な判断をする力が弱まっているように見える。たとえば、SNSでは毎秒膨大な情報が流れ、多くの人がそれを精査することなく拡散する。あるいは、ニュースサイトではアルゴリズムによって自分好みの情報だけが表示され、異なる視点に触れる機会が失われている。つまり、情報の量と思考の質は必ずしも比例しないのであり、むしろ情報過多は批判的思考を阻害する可能性さえある。」
【解答例】
- 抽象(主張):「情報に囲まれているにもかかわらず、重要な判断をする力が弱まっている」「情報の量と思考の質は比例しない。情報過多は批判的思考を阻害する可能性がある」
- 具体(例):「SNSで情報を精査せず拡散する」「アルゴリズムによって自分好みの情報のみ表示される」
演習2|「翻訳」トレーニング
次の具体例を、筆者が言いたいであろう抽象的な表現に「翻訳」してください。
「子供たちは、大人が『危険だ』と止める前に木に登り、川に入り、泥だらけになって遊ぶ。その過程で転んで膝を擦りむき、時に深く傷つく。しかし、翌日にはまた同じ場所に戻ってきて、今度はもっとうまく登ろうとする。」
【翻訳のヒント:】この具体例は何を言うための例でしょうか。「子供の遊び」という具体レベルから離れて考えてみましょう。
【解答例(翻訳):】「人間は失敗の経験を通じて自己修正する能力を持ち、リスクへの挑戦が成長の原動力となる」「管理された安全よりも、主体的な経験が人間の学習能力を高める」など。
演習3|選択肢の「抽象レベル」判定
傍線部「情報過多は批判的思考を阻害する」の説明として、最も適切なものを選んでください。
ア)SNSでは毎秒膨大な情報が流れ、多くの人がそれを精査せず拡散している。
イ)多くの情報にさらされることで、人々は情報を選別・評価する能力を失っていく。
ウ)アルゴリズムは自分好みの情報のみを表示するため、多様な意見に触れられない。
エ)現代人はスマートフォンを1日平均5時間以上使用しており、思考の時間が減っている。
【正解:イ】ア・ウは具体例の説明にすぎず、エは具体的すぎて抽象的な主張の言い換えになっていません。イのみが「情報過多→批判的思考の阻害」という抽象的な主張を正確に言い換えています。
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まとめ|「具体と抽象」の往来を制する者が現代文を制する
この記事の要点を整理します。
- ✅ 評論文は「抽象→具体→抽象」のサイクルで書かれており、このサイクルを意識して読むことが現代文読解の根幹である
- ✅ 「たとえば」は具体への下降、「つまり」「すなわち」は抽象への上昇を示す「道標」として活用する
- ✅ 傍線部問題では、具体例なら前後の抽象的主張を、抽象表現なら対応する具体例を参照して答える
- ✅ 記述問題では「具体→抽象への変換力」が評価される。具体例の丸写しは失点のもと
- ✅ 選択肢は「抽象レベルが筆者の主張と一致しているか」を基準に吟味する
- ✅ 「段落を一言で言うと?」という強制抽象化トレーニングを日々の読書に取り入れる
- ✅ 具体例のディテールではなく「この具体例は何を説明するためのものか」を常に意識する
現代文の「具体と抽象」の往来を読む力は、一朝一夕には身につきませんが、正しい方法で練習を続ければ必ず伸びます。この思考法は現代文だけでなく、小論文・英語長文・さらには社会に出てからの情報処理能力にも直結する、一生ものの知的スキルです。ぜひ今日からトレーニングを始めてください。
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