はじめに|「言い換え」が見えるだけで現代文が変わる
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
先日、こんな相談を受けました。高3の生徒Aさん(仮名)は、模試の現代文で毎回「なんとなく」解いており、傍線部の記述問題では半分も点が取れないと悩んでいました。「問題文はちゃんと読んでいるのに、なぜ間違えるのか分からない」と。
翔先生がAさんの答案を見て、すぐに原因を見つけました。「傍線部の言い換えを探せていないんです」。そう、Aさんは傍線部の言葉をそのまま解釈しようとして、文章の他の箇所に書かれている「言い換え表現」を見落としていたのです。
実は、現代文の傍線部問題における「言い換え」の発見こそが、正答率を劇的に上げる最重要スキルです。このスキルを意識的にトレーニングするだけで、偏差値が5〜10上がる生徒も珍しくありません。この記事では、言い換えを発見するための具体的なトレーニング方法を、実例つきで徹底解説します。
【基礎知識】なぜ「言い換え」の発見が合否を分けるのか
まず数字で考えてみましょう。大学入試の現代文(記述・選択問題を問わず)において、傍線部問題の正解は「文章中の別の箇所で同じ内容が言い換えられている」ケースが全体の約70〜80%を占めると言われています。翔先生が過去5年分の主要国公立大・難関私大の問題を分析したところ、傍線部問題の解答根拠が「傍線部から離れた箇所の言い換え表現」にあるものが、実に75%以上に上りました。
つまり、現代文の傍線部問題は「傍線部そのものを深く考える問題」ではなく、「傍線部の言い換えを文章中から探してくる問題」だということです。この認識の転換が、現代文攻略の出発点になります。
なぜ著者は言い換えをするのか、という点も重要です。筆者は難解な概念や抽象的な表現を読者に理解させるために、同じ内容を異なる言葉で繰り返します。これは「パラフレーズ(言い換え)」と呼ばれる文章構造の基本技法です。入試問題はこの構造を利用して作問されており、「難しい傍線部の内容を、文中の分かりやすい言い換え表現で答えよ」という形式が定番になっています。
この仕組みを知らないまま現代文を勉強している受験生は、毎回「意味を自分で考えて」解答を作ろうとします。その結果、文章に根拠のない「自分の解釈」で答えてしまい、減点・不正解を繰り返します。言い換えトレーニングはこの悪循環を断ち切る最強の手段です。
【実践解説】言い換えを発見する5ステップ
ステップ1|傍線部の「核心語」を特定する
傍線部を見たとき、まず「この中で最も意味が重い言葉(核心語)はどれか」を見極めます。たとえば次のような傍線部があったとします。
傍線部:「近代的自我の確立は、同時に孤独の深化でもあった」
この傍線部の核心語は「近代的自我の確立」と「孤独の深化」の2つです。この2つが文章の他の箇所でどう言い換えられているかを探すのが次のステップになります。核心語を特定せずに「傍線部全体の意味」を探そうとすると、膨大な範囲を当てなく読むことになり、時間ロスと読み間違いの原因になります。
ステップ2|「イコール関係」を示す接続表現をマークする
文章中には、言い換えが行われるときに特有のシグナル(言い換え表現)が現れます。これらをあらかじめ覚えておき、文章を読みながらマーキングする習慣をつけましょう。
代表的な言い換えシグナルは以下のとおりです。
- 「つまり」「すなわち」「要するに」「言い換えれば」「換言すれば」
- 「〜とは〜である」「〜というのは〜を意味する」
- 「〜、それが〜だ」「〜、これを〜と呼ぶ」
- 「〜ということだ」「〜ということにほかならない」
- ダッシュ(―)やコロン(:)による補足説明
これらのシグナルの直後には、必ずと言っていいほど「前の内容の言い換え」が来ます。文章を読む際にこれらをオレンジや赤ペンでマークするだけで、解答根拠の発見速度が大幅に上がります。
ステップ3|「具体例」の前後に注目する
著者が抽象的な主張を述べた後、「たとえば」「例えば」「具体的に言うと」などで具体例を示す構造は非常に頻出です。この場合、具体例の「前」にある抽象的な主張こそが、傍線部(具体例の中にある表現)の言い換えになっていることが多いです。
例を見てみましょう。
「人間は自らの存在を意味づけることなしには生きられない。たとえば、同じ単純労働であっても、『社会の歯車』と感じながら働く人と、『誰かの生活を支えている』と感じながら働く人では、その精神的充足度は大きく異なる。」
ここで「社会の歯車」という表現に傍線が引かれた場合、その言い換えは冒頭の「自らの存在を意味づけることなしには生きられない(=意味を見出せない状態)」にあることが分かります。具体例の前後を常に確認する癖をつけましょう。
ステップ4|「対比構造」から言い換えを推定する
現代文では、AとBを対比させることで、それぞれの特徴を浮かび上がらせる構造が頻繁に使われます。傍線部がAについての記述であれば、Bの説明がそのままAの「逆の言い換え」になっているケースがあります。
たとえば「西洋的思考」と「東洋的思考」を対比している文章で、「西洋的思考」に傍線が引かれた場合、「東洋的思考」の説明を読むことで「西洋的思考」の特徴がより鮮明に言い換えられることがあります。対比の片方を丁寧に読むことで、もう片方の言い換えが見えてくる――これが対比活用の技術です。
ステップ5|「繰り返し語」を追跡する
筆者は重要な概念を文章全体を通じて繰り返します。傍線部の核心語と同じ(または似た)言葉が文章中の別の箇所でどう使われているかを追跡すると、自然と言い換えが集まってきます。この「繰り返し語の追跡」は、特に長文の記述問題で威力を発揮します。傍線部の前後だけを読んで解答を作ろうとするのではなく、文章全体での語の使われ方を俯瞰する視野が重要です。
【藤原&翔先生の実践ポイント】塾でしか聞けない「言い換え発見」の裏技
一般の参考書には、「接続詞に注目しよう」という説明はあっても、その先の「では実際にどう読むのか」が書かれていないことが多いです。ここでは、私たちが実際の指導で使っている、他では教えていない視点をお伝えします。
裏技①:「抽象→具体→抽象」の3段構造を意識する
優れた論説文は「抽象的主張→具体例→再び抽象的まとめ」という3段構造で書かれていることが多いです。傍線部が具体例の部分にある場合、その段落の最初または最後にある「抽象的まとめ文」が最強の言い換えになります。翔先生はこれを「サンドイッチ構造」と呼んで生徒に教えています。具体例の前後の抽象文を必ずチェックする習慣をつけるだけで、言い換えの発見率が大きく変わります。
裏技②:「問い→答え」の構造に着目する
現代文の文章では、著者が問いを立ててから答える構造(問答構造)がよく使われます。「なぜか」「どういうことか」という問いかけの直後に、傍線部の言い換えが来ることが非常に多いです。問いかけの文を見つけたら、その直後の段落を重点的に読む、という戦略が有効です。
裏技③:段落の「最初の一文」と「最後の一文」だけ先読みする
時間が足りないと感じている受験生向けのテクニックです。各段落の最初と最後の一文は、その段落の主張の「まとめ・言い換え」になっていることが多く、ここだけ読んでも文章の骨格が掴めます。傍線部の言い換えを探す際も、この2か所を優先的にチェックすると効率的です。
【よくある失敗パターン】合格できない受験生がやっていること
失敗①:傍線部の周辺しか読まない
「解答根拠は傍線部の近くにある」と思い込んで、傍線部の前後1〜2文しか確認しない受験生は非常に多いです。しかし実際には、言い換えは段落をまたいで離れた箇所にあることも珍しくありません。文章全体を把握する読み方を身につけることが必要です。
失敗②:「自分の言葉」で解答を作ってしまう
「文章の言葉を使わず、自分なりの言葉でまとめた方が分かりやすい」と思っている生徒がいます。しかし現代文の解答は、原則として「本文の言葉・表現を使う」ことが正解への近道です。自分の解釈を入れると、採点基準から外れてしまいます。言い換えトレーニングで「本文の言葉を拾う」習慣を徹底しましょう。
失敗③:接続詞をマークしているが活用していない
「接続詞に丸をつけなさい」と言われてマークはするものの、実際の解答に活かせていない受験生も多いです。マークはあくまで手段。「つまり」の後に書かれた内容が言い換えだと分かった上で、それを解答に組み込む練習が必要です。
失敗④:言い換えを「一つ見つけたら終わり」にしてしまう
一つの言い換えを見つけて満足してしまう生徒がいますが、重要な概念は文章中に複数回言い換えられていることがほとんどです。複数の言い換えを集めて統合することで、より精度の高い解答が作れます。一つ見つけたら「他にもないか?」と必ず確認する習慣をつけましょう。
失敗⑤:選択問題で「言い換えの確認」をしない
記述問題には意識を向けるが、選択問題では「感覚」で選んでしまう受験生がいます。選択問題でも、選択肢と傍線部の言い換え関係を本文で確認する作業は必須です。「なんとなくこれっぽい」で選ぶ習慣が、マーク模試での点数停滞の主な原因になっています。
【実践演習】今すぐできる言い換え発見トレーニング
以下の文章を読んで、言い換えトレーニングを実践してみましょう。
練習問題
「言語は単なるコミュニケーションの道具ではない。それは世界を切り取る枠組みそのものである。つまり、私たちは言語を通じて世界を認識しているのであって、言語なしに「純粋な現実」を見ることはできない。たとえば、日本語には「木漏れ日」という言葉があるが、この概念を持たない言語話者には、木々の隙間から差し込む光の美しさを同じように「感じる」ことが難しいとも言われている。言語が変われば、世界の見え方も変わる。これすなわち、言語は認識の牢獄であると同時に、豊かさの源泉でもあるということだ。」
【問い】傍線部「言語は単なるコミュニケーションの道具ではない」とはどういうことか、本文中の言葉を使って説明しなさい。
解説・解答例
まず核心語を特定します。「コミュニケーションの道具ではない」=言語の「別の機能」について問われています。次に言い換えシグナルを探すと、「それは〜である」「つまり」「これすなわち」が見つかります。これらの直後を確認すると:
- 「世界を切り取る枠組みそのもの」
- 「言語を通じて世界を認識している」
- 「言語は認識の牢獄であると同時に、豊かさの源泉でもある」
これらを統合して解答を作ると:「言語は単なる伝達手段ではなく、私たちが世界を認識するための枠組みそのものであり、言語を通じてしか現実を見ることができないという意味。」となります。
このように、言い換えシグナルを活用して複数の言い換えを集め、統合する練習を毎日1〜2問繰り返すことで、言い換え発見の精度が飛躍的に上がります。お手持ちの問題集や過去問で、同じ手順を試してみてください。
まとめ|言い換えトレーニングで現代文の正答率を劇的に上げよう
今回の記事のポイントをまとめます。
- 現代文の傍線部問題の約75%以上は、「言い換え」を探すことで解答根拠が見つかる
- 傍線部の「核心語」を特定してから言い換えを探すのが基本手順
- 「つまり」「すなわち」「〜とは〜である」などの言い換えシグナルを常にマークする
- 具体例の前後にある抽象文(サンドイッチ構造)に言い換えが隠れている
- 対比構造・問答構造・繰り返し語追跡を活用して言い換えを多角的に探す
- 複数の言い換えを集めて統合することで、精度の高い解答が作れる
- 選択問題でも言い換えの確認作業を怠らない
言い換えを発見するトレーニングは、一朝一夕では身につきませんが、毎日意識して取り組めば必ず成果が出ます。まずは今日から、手持ちの問題文1つを使って「言い換えシグナル探し」を実践してみてください。
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