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現代文頻出テーマ「言語と思考」完全攻略|ソシュール・丸山圭三郎の言語学

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はじめに――「言語と思考」は現代文最重要テーマのひとつ

数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!

今回取り上げるのは、現代文頻出テーマ「言語と思考」です。共通テスト・難関私大・国公立二次問題を問わず、毎年のように出題されるこのテーマは、「なぜ人間は言葉によってしか世界を認識できないのか」という根本的な問いに迫るものです。

翔先生が塾の現場でよくこう言います。「『言語と思考』の問題で点が取れない生徒に共通しているのは、ソシュールや丸山圭三郎の名前は知っているけれど、彼らの議論の”核心”が何かをわかっていないことなんです」と。まさにその通りで、キーワードの暗記だけでは得点につながりません。

この記事では、ソシュールの言語学の基本から、日本での受容・発展を担った丸山圭三郎の思想まで、現代文の読解に直結する形で徹底解説します。読み終えたとき、あなたはこのテーマが出題されるどんな文章にも対応できるようになっているはずです。


核心情報・基礎知識――ソシュール言語学の革命とは何か

言語は「名前のリスト」ではない

まず、ソシュール以前の言語観を確認しましょう。かつて人々は言語を「すでに存在するモノに名前をつけるラベル」だと考えていました。たとえば、木という実体がまずあって、そこに「き(木)」という名前が貼られる、という発想です。これをソシュールは根本から覆しました。

フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure、1857〜1913)は、スイスの言語学者で、20世紀の思想全体に多大な影響を与えた人物です。彼の死後、弟子たちがまとめた講義録『一般言語学講義』(1916年)は、現代思想の出発点のひとつとされています。

ソシュールの核心的な主張は次の通りです。

  • 言語記号(signe)は「シニフィアン(signifiant)」と「シニフィエ(signifié)」の結合体である
  • シニフィアン=音声イメージ(聴覚映像)、シニフィエ=概念(意味内容)
  • この結合は恣意的(アルビトレール)である――つまり必然的な理由はない

「木」という概念に「き」という音が結びついているのは、日本語話者の社会的な約束事に過ぎません。英語では “tree”、フランス語では “arbre” と呼ばれます。どれも「正解」であり「間違い」はない。これが言語記号の恣意性です。

差異の体系――言語は世界を「切り分ける」

ソシュール言語学でもう一つ重要なのが、「言語は差異の体系である」という考え方です。

わかりやすい例を挙げましょう。日本語には「青」と「緑」という語があります。しかし、信号機の「青」は物理的には緑色に近い色です。それでも日本語話者は「青信号」と呼びます。なぜなら、日本語の色彩語の体系が、その範囲を「青」として切り取っているからです。

一方、言語によっては「青」と「緑」を区別しない場合もあります。これは視覚能力の差ではなく、言語の体系が世界の切り分け方を決めていることを示しています。つまり、言語が先にあって、世界の見え方が決まるのです。

この発想は「言語と思考は切り離せない」という現代文頻出テーマの根拠になっています。言語がなければ、思考はそもそも成立しない、あるいは大幅に制限される――これが現代文で繰り返し問われる論点です。

ラング・パロール・ランガージュの区別

ソシュール言語学を理解するうえで欠かせない三つの概念があります。

  • ランガージュ(langage):人間が言語を使う能力全体。普遍的な言語能力。
  • ラング(langue):特定の社会集団が共有する言語体系(日本語・英語など)。社会的・規則的。
  • パロール(parole):個人が実際に発する発話・言語行為。個別的・偶発的。

ソシュールが言語学の対象として重視したのはラングです。個々の発話(パロール)ではなく、その背後にある体系(ラング)を研究することが科学的言語学だと主張しました。これはまさに「構造主義」的な発想の原点です。


具体的な解説――丸山圭三郎とソシュール受容の深化

丸山圭三郎とはどんな思想家か

丸山圭三郎(1933〜1993)は、日本でソシュール言語学を深く研究・普及させた思想家・フランス文学者です。著書『ソシュールの思想』(1981年)『言葉と無意識』(1987年)などは、現代文の入試問題に頻繁に引用されます。

丸山の功績は単なるソシュールの紹介にとどまりません。彼はソシュールの言語論を発展させ、「人間は言語によって存在し、言語によって世界を構築する」という独自の人間観・世界観を打ち立てました。

「アンパラージュ」――言語による世界分節

丸山が特に力を入れて論じたのが、ソシュールの「分節(articulation)」概念です。丸山はこれを「言語は連続した混沌(カオス)である現実を、意味のある単位に切り分ける」という形で説明しました。

現実の世界は本来、境界のない連続体です。たとえば色は連続したスペクトルですが、私たちは「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」という言葉によってそれを区切って認識します。温度も本来は連続していますが、「暑い・温かい・涼しい・寒い」という語によって分節されます。

言語が世界を切り分ける前には、人間にとって「意味のある世界」は存在しない――これが丸山の根本テーゼです。この考え方は、現代文問題において「言語と現実の関係」「言語と認識」「言語と文化」といった設問で問われる核心です。

「ランガジュ的動物」としての人間

丸山圭三郎は人間を「ランガジュ的動物(animal langagier)」と表現しました。これはアリストテレスが人間を「ポリス的動物(社会的動物)」と呼んだことをもじったものです。

人間だけが言語によって世界を構造化し、意味を生み出し、文化を創造する。言語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、人間の存在様式そのものだというのが丸山の主張です。

翔先生がよく授業で使う例があります。「たとえば『愛』という言葉を知らない人は、愛という感情を経験できるでしょうか?感情はあるかもしれないが、それを『愛』として認識し、意味づけ、他者と共有することは難しい。言語がなければ、感情は霧の中にぼんやりと存在するだけで、輪郭を持てない。これが言語と思考の関係です」と。これはまさに丸山の議論の核心をついています。

「シニフィアンの優位」と記号論的転回

ソシュールは、シニフィアン(音声イメージ)とシニフィエ(概念)の結びつきは恣意的だと言いました。ところが丸山はさらに踏み込み、シニフィアンの側が概念(シニフィエ)を生み出すという方向性を強調します。

つまり、「悲しみ」という言葉(シニフィアン)があるから、私たちは「悲しみ」という感情(シニフィエ)を明確に認識できる。言語が感情や概念を「発生させる」という逆転した発想です。これは後のラカン精神分析やデリダの脱構築にもつながる重要な視点であり、現代文の評論文でも頻繁に論じられます。

入試問題でどう問われるか――出題パターンの整理

「言語と思考」テーマは、次のようなパターンで出題されます。

  • ①概念説明型:「シニフィアン・シニフィエ」「恣意性」「差異の体系」の意味を問う
  • ②傍線部解釈型:「言語は現実を切り分ける」「人間は言語によって世界を構築する」などの意味を自分の言葉で説明する
  • ③論旨把握型:筆者の主張(言語と思考の不可分性)を正確に把握する
  • ④対比構造型:「言語=ラベル観(旧来の言語観)」VS「言語=分節・構築(ソシュール以降の言語観)」の対比を理解する

特に④の対比構造は頻出です。文章の中で「かつては〜と考えられていた」「しかし〜」という構造を見つけたら、必ず旧来の言語観とソシュール的言語観の対比を意識してください。


藤原&翔先生の実践アドバイス

藤原進之介より:「図式化」で構造を掴め

私が指導で必ず使うのが「対比図式の可視化」です。「言語と思考」の文章を読むとき、まずノートの左右に「旧来の言語観」「ソシュール的言語観」の二列を作り、本文から情報を振り分けていきます。

たとえば:

  • 旧来:世界→言語(世界が先にあって言語がラベルを貼る)
  • ソシュール:言語→世界(言語が世界を分節・構築する)

この矢印の向きの逆転が理解できれば、傍線部問題の多くは解けます。難関大でも、この対比の理解を問う問題が大半です。

翔先生より:「具体例変換」で理解を深める

翔先生がすすめるのは、抽象的な概念を自分の身近な具体例に置き換える練習です。「言語が世界を分節する」という主張を読んだら、すぐに「これは信号機の青の話だ」「色のスペクトルの話だ」と置き換えられるようにしておく。

さらに発展として、「日本語にあって英語にない(またはその逆の)概念」を集めると理解が深まります。たとえば「木漏れ日」「侘び寂び」「甘え」などは、英語に対応する一語がない日本語独自の概念です。これらの存在は、言語が世界の切り分け方を規定しているソシュール・丸山の主張の強力な証拠になります。

塾現場のエピソードを一つ。ある生徒が「言語がなければ概念がないって、本当ですか?感情は言葉なしでもあると思います」と質問してきました。翔先生はこう答えました。「生理的な反応はあります。でも、それを『愛』なのか『執着』なのか『依存』なのか区別して理解するためには、言語が必要です。言語は感情に輪郭と意味を与えるんです」。この説明で生徒は納得し、その後の問題も驚くほどスムーズに解けるようになりました。


よくある疑問・失敗パターンと解決策

失敗パターン①:「恣意性=でたらめ」と誤解する

「恣意的(arbitraire)」とは「でたらめ」ではありません。「必然的・自然的な根拠を持たない」という意味です。「犬」という動物を “dog” と呼ぶことに科学的・論理的な必然性はないが、一度社会的に決まったら、その社会の中では完全に拘束力を持つ。ここを誤解すると、解答でピントがずれます。

失敗パターン②:ソシュールと丸山を混同する

入試文章がソシュールの原典を引用しているのか、丸山圭三郎の解釈・発展を論じているのかを区別してください。丸山は「シニフィアンの優位」や「人間=言語的存在」という方向へソシュールを発展・読み替えたという点が重要です。文章のどの部分でどちらが論じられているかを意識しながら読みましょう。

失敗パターン③:「言語と思考」を「言語と感情」だけで考える

このテーマは感情だけでなく、認識・文化・社会・アイデンティティにまで広がります。「ある言語を失った民族は、その言語がとらえていた世界観を失う」という議論は、言語と文化・アイデンティティの問題です。テーマの射程の広さを意識してください。

疑問:「ウォーフの仮説とソシュールの違いは?」

ベンジャミン・リー・ウォーフの「言語相対性仮説」(言語が思考を規定する)はソシュールと方向性が似ていますが、入試ではほとんどの場合ソシュール・丸山の文脈で論じられます。ウォーフは「異なる言語の話者は異なる世界認識を持つ」という経験的・文化人類学的な主張をしたのに対し、ソシュールはより構造的・理論的なアプローチを取っています。混同しないよう注意してください。


今日からできるアクション・チェックリスト

「言語と思考」テーマを完全攻略するために、以下のチェックリストを活用してください。

  • ソシュールの三概念(ランガージュ・ラング・パロール)を自分の言葉で説明できる
  • シニフィアン・シニフィエ・恣意性を具体例とともに説明できる
  • 「言語は差異の体系」の意味を色の例・温度の例を使って説明できる
  • 旧来の言語観(ラベル説)とソシュール的言語観の対比を図式化できる
  • 丸山圭三郎の「分節」「ランガジュ的動物」の意味を理解している
  • 日本語固有の概念(木漏れ日・甘え・侘び寂び等)を3つ以上挙げられる
  • ☑ 過去問(早稲田・慶應・共通テスト)の「言語と思考」系問題を最低3題解いた
  • ☑ 丸山圭三郎『言葉と無意識』または『ソシュールの思想』の概要(解説書・要約)を読んだ

特に最初の5項目は、問題を読む前の「頭の中の地図」として必須です。この地図があるかないかで、同じ文章の理解度が劇的に変わります。

翔先生からの追加アドバイス:「評論文を読むときは、筆者が『言語をどんなものとして捉えているか』を常に問い続けてください。ラベルとして捉えているか、分節・構築するものとして捉えているか。その判断が設問の8割を解くカギになります」


まとめ・日本国語塾トップについて

今回は現代文頻出テーマ「言語と思考」について、ソシュールの言語学から丸山圭三郎の思想まで、入試に直結する形で解説しました。重要ポイントを最終確認しましょう。

  • ソシュールの革命:言語はラベルではなく、差異の体系として世界を分節する
  • 言語記号の恣意性:シニフィアンとシニフィエの結びつきに必然性はないが、社会的拘束力は絶対的
  • 丸山圭三郎の発展:人間は「ランガジュ的動物」であり、言語が存在・思考・文化を構築する
  • 入試対策の核心:旧来の言語観とソシュール的言語観の対比を「矢印の向き」で把握する

「言語と思考」は、現代文の中でも特に抽象度が高く、多くの受験生が苦手意識を持つテーマです。しかし、今回解説したフレームワークを使えば、どんな文章が出ても恐れる必要はありません。言語学の基本構造を理解した上で文章を読むことで、筆者の主張が驚くほどクリアに見えてきます。

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