はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
今回のテーマは「東大古文の内容説明・理由説明の記述」です。東大古文の記述式設問は、解答欄が驚くほど短いことで知られています。二行、三行程度の枠の中に、本文から読み取った内容を過不足なく詰め込まなければならず、多くの受験生が「書きたいことはあるのに枠に入らない」「逆に何を書けばいいか分からず薄い解答になる」という悩みを抱えます。
この記事では、東大古文の内容説明・理由説明の記述について、①要素の抽出、②優先順位づけ、③接続の型、そして④字数が足りないときに何を捨てるか、という4つの観点から具体的に解説します。翔先生、よろしくお願いします。
翔:よろしくお願いします!東大古文の記述は「短いのに要素が多い」という特殊な難しさがあります。今日はその攻略法を、自作の例文を使いながら一緒に整理していきましょう。
出題の全体像
東大古文では、近年は本文中の一部の内容や登場人物の心情・行動の理由を、短い解答欄に記述させる設問が続いています。解答欄の行数は年度によって変わることがあるため、具体的な行数や配点については必ず最新の募集要項・入試要項でご確認ください。
ここで重要なのは、東大古文の内容説明・理由説明が「本文の言葉をそのまま抜き出す」ことでは対応できないという点です。求められているのは、
- 傍線部の中の指示語・省略主語・比喩表現を具体的な内容に置き換える
- その内容がなぜそうなるのか、本文の因果関係・文脈から理由を補う
- 解答欄の字数に合わせて、要素を取捨選択し、簡潔な日本語に圧縮する
という一連の「読解→抽出→圧縮」の作業です。東大古文の記述は、単に古文単語や文法が分かるだけでは太刀打ちできず、現代文的な要約力・論理構成力が同時に問われる点が大きな特徴だと言えます。
翔:生徒を見ていても、古文単語・文法は完璧なのに、記述になると急に点数が下がる子は多いです。それは読解力の問題ではなく「圧縮の技術」を知らないからなんですよね。
設問タイプ別の解き方
内容説明の型:傍線部を「具体化」する
内容説明問題の基本は、傍線部の中にある「抽象的・省略された表現」を、本文の文脈をもとに「具体的な言葉」に置き換えることです。手順は以下の3ステップです。
- 傍線部を品詞分解し、主語・目的語・指示語を特定する。古文は主語が省略されることが多いため、まず「誰が」「何を」の部分を本文中から補います。
- 比喩・婉曲表現があれば、その具体的中身を本文の別の箇所から探す。東大古文では、傍線部の少し前後に、具体化のヒントとなる記述が置かれていることが多いです。
- 「主語+具体化した内容+述部」の形に整える。この段階で、まだ解答欄の字数を気にせず、要素をすべて書き出しておきます。
ここで、自作の例文(実際の入試問題ではなく、解説用にオリジナルで作成した文章です)を使って練習してみましょう。
(自作例文)「さやうのことは、ならはぬ人は心づきなく思ふべけれど、これは古き世よりのならひなれば、あながちに咎むべきにもあらず」
この文の傍線部を「これは古き世よりのならひなれば」だとします。設問は「『これ』とは何を指すか、具体的に説明せよ」というものだとしましょう。
翔:この場合、まず「これ」が何を指すかを、前の文脈(「さやうのこと」)から特定します。「さやうのこと」がさらに前の段落で具体的に何を指していたか、本文をさかのぼって確認するのが第一歩です。
藤原:そうですね。東大古文では、指示語一つとっても、単に「前の一文」ではなく「段落をまたいだ前の記述」を指していることがあります。だからこそ、傍線部の直前だけを見て早合点せず、必ず前段落まで視野を広げて確認する習慣をつけましょう。
理由説明の型:因果関係を「二段階」で押さえる
理由説明問題では、「なぜそのような行動・心情になったのか」を問われます。ここで多くの受験生が陥りがちなのが、「直接の原因」だけを書いて終わってしまうミスです。東大古文の理由説明は、しばしば以下のような二段階構造になっています。
- 直接の原因(きっかけとなった出来事)
- その背景にある心情・価値観・立場
再び自作の例文で確認してみましょう。
(自作例文)「女、この文を見て、いとど涙もとどまらず。もとより、かかる契りのはかなきことをば知りたれど、いま更にあはれと思ひ知られければなるべし」
ここで「なぜ女は涙が止まらなかったのか」と問われた場合、答えるべきは単に「文を見たから」ではありません。「もとより、はかない縁だと分かっていた」という背景と、「今さらながら、その儚さを実感として思い知らされた」という心情の変化、この二段階を両方書く必要があります。
翔:一段階だけの解答は、本文の半分しか読めていないことの証拠になってしまいます。「きっかけ」と「背景」、この二つをセットで探す癖をつけると、理由説明の解答の厚みが一気に増します。
要素の優先順位づけ:解答欄に入れる順番を決める
内容説明・理由説明ともに、下書き段階では要素を多めに書き出します。しかし東大古文の解答欄は短いため、すべてを書ききることはほぼ不可能です。ここで必要になるのが「優先順位づけ」です。優先順位の基準は次の通りです。
- 設問が直接聞いていることに答える要素(最優先)
- その要素を成立させるために必要な補足情報(次点)
- 本文の背景・文脈説明(余裕があれば)
この優先順位は、必ず「設問文の問い方」から逆算して決めます。「〜はなぜか」と聞かれたら理由の核心が最優先、「〜とはどういうことか」と聞かれたら具体的内容の核心が最優先です。この基本を外さないことが、東大古文の記述で高得点を取る第一条件です。
接続の型:短い解答欄でも論理を切らさない
短い解答欄に複数の要素を入れる際、単語を羅列するだけでは論理が伝わりません。東大古文の内容説明・理由説明では、以下のような接続の型を覚えておくと、限られた字数の中でも論理的な文章が組み立てやすくなります。
- 「AだったのでB」型:直接の原因+帰結を一文でつなぐ
- 「AでありながらB」型:矛盾・逆接を含む心情説明に有効
- 「Aという状況の中でB」型:背景説明と行動・心情を一体化させる
先ほどの例文で言えば、「もとより儚い縁と知りながら、いざその通りになると改めて悲しみを実感したから」というように、「知りながら〜実感したから」という逆接+因果の一文にまとめることで、二段階の要素を一つの文に圧縮できます。
翔:この接続の型を3〜4パターン、あらかじめ自分の中にストックしておくと、本番で「どうつなげばいいか」で悩む時間が大幅に減りますよ。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原:東大古文の記述で一番大事なのは、「解答欄の大きさから逆算して書く」という発想です。まず要素を全部書き出し、それから優先順位に従って削っていく。この順番を守ることが、内容説明・理由説明どちらの記述にも共通する鉄則です。
翔:私が指導する際は、必ず「一度、字数制限を無視して全部書かせる」ようにしています。その上で、「この中で一番大事なのはどれ?」と聞いて、生徒自身に優先順位を判断させるんです。自分で削る経験を積むと、本番でも迷わず判断できるようになります。
藤原:もう一つ大事なのが、「捨てる基準」を明確に持つことです。字数が足りないときは、以下の順番で削るとよいでしょう。
- 設問の問いに直接答えていない周辺情報から削る
- 同じ内容を言い換えて重複している表現を一本化する
- 装飾的な形容表現(「とても」「まさに」など)を削る
- それでも足りない場合のみ、背景説明を圧縮する(核心部分は最後まで残す)
翔:この順番を知っているかどうかで、本番の判断スピードがまったく違います。「何を削るか」を事前に決めておくと、試験中に迷わなくなるんです。
よくある失敗と解決策
失敗1:本文の言葉をそのまま抜き出してしまう
内容説明問題で、傍線部の言葉をほぼそのまま使って解答してしまうケースです。指示語や比喩表現を「具体化」せず、そのまま繰り返すだけでは説明になっていません。解決策は、必ず「別の言葉に言い換えられているか」を解答を書き終えた後にチェックする習慣をつけることです。
失敗2:理由説明で直接の原因しか書かない
先述の通り、東大古文の理由説明は二段階構造になっていることが多いです。「きっかけ」だけを書いて満足せず、その背景にある心情・価値観まで掘り下げて書けているか、必ず確認しましょう。
失敗3:字数を意識せず下書きの段階で満足してしまう
下書きの時点ですべての要素を詰め込み、それをそのまま清書してしまうと、当然字数オーバーになります。下書き→優先順位づけ→圧縮、という3段階を必ず踏むことが大切です。
失敗4:接続助詞を省略して要素を羅列するだけになる
字数を削ろうとするあまり、「A、B。」のように単語を並べるだけの解答になってしまうケースです。これでは論理関係が採点者に伝わりません。前述の「接続の型」を使い、最低限の因果・逆接の接続を残すようにしましょう。
今日からできるアクション
- 過去の演習で解いた内容説明・理由説明の解答を見直し、「本文の言葉のコピペ」になっていないかチェックする。
- 理由説明の問題では、必ず「直接の原因」と「背景の心情」を分けてメモしてから解答を作る練習をする。
- 解答欄の字数を数える前に、まず要素を箇条書きで全部書き出し、優先順位に番号をつける習慣をつける。
- 「AだったのでB」「Aでありながらb」など、自分なりの接続の型を3つ以上用意し、演習のたびに使ってみる。
- 書いた解答を、家族や先生に音読して聞いてもらい、「一読して意味が通じるか」を確認する。
翔:特に4番目の「音読チェック」はおすすめです。自分では分かっているつもりでも、声に出して読むと、論理が飛んでいる箇所にすぐ気づけます。
まとめ・日本国語塾TOPについて
東大古文の内容説明・理由説明の記述は、「短い解答欄に、いかに要素を厳選して詰め込むか」という技術の勝負です。傍線部の具体化、二段階の因果関係の把握、優先順位づけ、そして接続の型を使った圧縮――この4つのステップを繰り返し練習することで、着実に得点力が上がっていきます。東大古文の記述対策は、一朝一夕では身につきませんが、正しい手順を知って繰り返し実践すれば、必ず再現性のある形で解答が書けるようになります。ぜひ今日紹介した内容説明・理由説明のステップを、日々の古文演習に取り入れてみてください。
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