数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
はじめに
「東大古文は記述式だから、識別問題そのものはあまり出ない」——そう思っている受験生は少なくありません。実際、選択肢から助動詞や助詞の文法的意味を選ばせるような設問形式は、東大古文では中心的な出題形式ではありません。しかし翔先生、これは大きな誤解を生みますよね。
翔:はい。東大古文の中心は「傍線部を正確に現代語訳する」「内容を説明する」という記述問題です。ここで文法識別のミスがあると、訳全体が崩れてしまいます。「なり」「る・れ」「に」の判別ができていないと、主語を取り違えたり、断定なのか伝聞なのかを誤って因果関係を逆に読んでしまったりする。つまり識別力は、設問の答え方ではなく、答えの精度そのものを左右する力なんです。
この記事では、東大古文の記述問題で確実に得点するために欠かせない「なり」「る・れ」「に」の判別方法を、判断フローと具体例つきで徹底解説します。
出題の全体像
近年の東大古文は、複数の文章から傍線部の現代語訳・内容説明を記述させる形式が続いています(試験時間・配点・大問構成は年度により変わる可能性があるため、必ず最新の募集要項・入試要項でご確認ください)。選択肢問題としての文法識別は前面に出てきませんが、採点基準の中には「助動詞の意味を正しく反映しているか」「主語・敬意の方向を正しく捉えているか」という要素が含まれていると考えるのが自然です。
特に次の3種類の語は、形が似ているために誤読が起こりやすく、東大古文の記述で差がつきやすいポイントです。
- 「なり」…断定か、伝聞・推定か、形容動詞の一部か、動詞「なる」の活用形か
- 「る・れ」…受身・尊敬・自発・可能の助動詞か、完了の助動詞「り」の一部か、動詞の活用語尾か
- 「に」…断定の助動詞「なり」の連用形か、完了の助動詞「ぬ」の連用形か、格助詞か、接続助詞か、形容動詞の活用語尾か
これらはいずれも古文単語や単純な文法暗記だけでは対応できず、「文脈の中での接続」を正しく見抜く力が必要です。だからこそ東大古文では、識別の判断フローを体に染み込ませておくことが重要になります。
設問タイプ別の解き方
「なり」の判別フロー
「なり」の識別は、直前の語の活用形(接続)を確認することから始めます。
- 体言・連体形に接続する「なり」→断定の助動詞「〜である」と訳します。
例文(自作):「この山、都の中の山なり。」→「なり」の直前は体言「山」なので断定。「この山は都の中の山である。」 - 終止形(ラ変型は連体形)に接続する「なり」→伝聞・推定の助動詞「〜だそうだ・〜と聞こえる/〜のようだ」と訳します。
例文(自作):「かの人、都へ上るなり。」→「上る」は終止形なので伝聞・推定。「あの人は都へ上るそうだ(上るようだ)。」 - 「〜げなり」「〜かなり」など形容動詞の活用語尾単独で切り離せない場合は形容動詞の一部です。
例文(自作):「花のけしき、いとあはれなり。」→「あはれなり」で一語の形容動詞。 - 「なり」が動詞「なる」の連用形「〜になる」の意味で、直前に体言+格助詞「に」が来ることが多いです。
例文(自作):「翁、たちまちに長者になりにけり。」
翔:判別のコツは「直前の活用形を見る」の一点に尽きます。体言・連体形なら断定、終止形なら伝聞・推定、と機械的に処理できるようにしておくと、東大古文の長い文章の中でも迷わず判断できます。
「る・れ」の判別フロー
「る」「れ」は、直前の音(活用語尾)と文脈から判断します。
- 四段・ナ変・ラ変動詞の已然形+「り」→完了の助動詞「り」の連体形・已然形
例文(自作):「花の咲ける庭を見る。」→「咲け」は四段動詞已然形+「る」で完了「り」の連体形。「花が咲いている庭を見る。」 - 未然形に接続する「る・れ」→受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」「らる」
例文(自作):「大臣、帝に召さる。」→「召さ」は未然形なので受身「る」。「大臣は帝にお呼びになられる(召される)。」 - この受身・尊敬・自発・可能の判別は、さらに文脈で絞り込みます。
- 身分の高い人が主語+動作が上位から下位へ→尊敬「〜なさる」
- 「思ふ・泣く」など心情動詞+自然にそうなる文脈→自発「自然と〜れる」
- 下位者が動作を受ける文脈→受身「〜される」
- 打消と一緒に使われる、または「え〜る」の形→可能「〜できる」
翔:東大古文では「誰が誰に何をしたか」という関係が問われることが多く、「る・れ」を尊敬と取るか受身と取るかで主語や敬意の方向が変わってしまいます。ここを誤ると訳全体が破綻するので、要注意ポイントです。
「に」の判別フロー
「に」は最も種類が多く、東大古文の記述でも誤訳の原因になりやすい語です。次の順序でチェックしましょう。
- 「に」を取り除いても文が成立し、後ろに「あり・侍り・候ふ」等が続く、または「にて」「にや」「にこそ」の形→断定の助動詞「なり」の連用形
例文(自作):「これは昔の都の跡にありけり。」 - 直前が連用形で、「に」の後ろに「けり・たり・き」など過去・完了の語が続く→完了の助動詞「ぬ」の連用形
例文(自作):「花は散りにけり。」→「散り」は連用形、「けり」に続くので完了。「花は散ってしまった。」 - 体言に接続し、場所・時・対象・原因などを示す→格助詞
例文(自作):「山に登りて眺めをり。」 - 連体形に接続し、逆接・単純接続を示す(「〜のに」「〜と」)→接続助詞
例文(自作):「雨の降るに、なほ出でたり。」→「雨が降るのに、それでも出かけた。」 - 「あはれに」「静かに」など形容動詞の連用形活用語尾単独で切り離せない場合はここに分類します。
翔:「に」の識別は東大古文でも最頻出クラスの判断です。断定の「に」を格助詞と誤読すると、主述関係そのものがずれてしまいます。逆に、完了の「に」を断定と誤読すると、時制の解釈がおかしくなります。まずは「に」の直前・直後を必ずセットで確認する習慣をつけましょう。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原:識別問題は単体で出なくても、東大古文の得点を左右する「隠れた配点」だと考えてください。採点者は、傍線部の現代語訳や説明の中に、文法的な誤りがないかを必ず見ています。「なり」を断定と伝聞で取り違えた訳、「る・れ」を尊敬と受身で取り違えた訳は、内容が破綻していなくても減点対象になり得ます。
翔:実戦的には、次の3ステップを本文を読む段階で常に回すことをおすすめします。
- 傍線部やその前後に「なり」「る・れ」「に」を見つけたら、いったん立ち止まる
- 直前の語の活用形を確認する(体言か、未然形か、連用形か、終止形か、連体形か、已然形か)
- 文脈上、誰が主語で、誰に対して敬意が向いているかを確認し、最終的な訳を確定する
この3ステップは慣れれば数秒でできるようになります。逆にこれを飛ばして「なんとなく」で訳している受験生は、東大古文の記述で安定した得点が取れません。
よくある失敗と解決策
失敗1:「なり」を全部「〜である」と訳してしまう
直前が終止形なのに断定として訳してしまうケースです。解決策は、「なり」の直前が体言・連体形か、終止形かを必ず指で押さえて確認する習慣をつけること。ラ変型活用の語(あり・をり・侍り・いますがりなど)は連体形と終止形が同じ形になるため、特に注意が必要です。
失敗2:「る・れ」を尊敬か受身かで直感的に決めてしまう
「偉い人が主語だから尊敬」と機械的に決めてしまい、実は受身や自発だったというミスです。解決策は、動詞の意味(心情動詞かどうか)と、動作の受け手・与え手の関係を文脈から丁寧に追うこと。特に「思はる」「泣かる」は自発の可能性を常に疑いましょう。
失敗3:「に」を全部格助詞として読み飛ばす
「に」は数が多いので、深く考えずに格助詞として処理してしまう受験生が多いです。しかし断定・完了の「に」を見逃すと、時制や主述関係の解釈がずれます。解決策は、「に」の後ろに続く語(あり系・けり・たり等)を必ずチェックすることです。
今日からできるアクション
- 古文単語帳とは別に、識別専用のフローチャートをノートに1ページでまとめる「なり」「る・れ」「に」それぞれについて、接続と訳し分けを一目で見返せる表を自作しましょう。
- 毎日読む古文の中で、「なり」「る・れ」「に」に丸をつけ、その場で識別を口頭で説明する音読しながら「これは断定、直前が体言だから」と声に出す練習が効果的です。
- 週に1回、自作の例文を10文作って識別の答え合わせをする問題演習だけでなく、自分で例文を作る訓練は、識別の理屈を本当に理解しているかを確認する良い方法です。
- 記述答案を書いたら、助動詞・助詞の解釈が訳に反映されているか見直す「なり」「る・れ」「に」を含む一文を訳したら、その語の文法的意味が訳文にきちんと表れているか、必ずチェックする習慣をつけましょう。
まとめ・日本国語塾TOPについて
東大古文において、「なり」「る・れ」「に」の判別は、単なる文法の丸暗記ではなく、現代語訳の精度そのものを支える基礎体力です。設問形式として識別問題が出るかどうかにかかわらず、記述の一文一文の中でこれらの語を正確に読み分ける力が、最終的な得点差を生みます。今日からできるアクションを一つずつ積み重ね、文法識別を「なんとなく」から「根拠を持って説明できる」レベルまで引き上げていきましょう。
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