はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:今回から「和歌の修辞」シリーズを始めます。翔先生、第1回はどんなテーマですか?
翔先生:はい。掛詞・縁語・序詞・枕詞・本歌取りという、和歌修辞の基本5点セットを一気に扱います。入試の古文では、和歌が本文中に出てきたときに「この歌の修辞を指摘し、歌意を説明せよ」という形で必ずと言っていいほど問われます。
藤原:そうですね。修辞は「暗記して終わり」ではなく、「和歌のどこに着目すれば見つかるか」というパターン認識が大事です。
翔先生:今回の10問を通して、①掛詞は同音異義に着目する、②縁語は関連語のまとまりを探す、③序詞は自然描写から本旨への橋渡しを見る、④枕詞は特定の言葉とセットで覚える、⑤本歌取りは本歌のどの語句・発想を取っているかを比較する、という5つの視点を身につけましょう。
それでは、実際に10問解いてみましょう。
問題(全10問)
第1問
次の和歌に含まれる掛詞を一つ指摘し、それぞれの意味を答えなさい。
「君を待つ松の葉の色変はらねば秋にも我は心変へじな」
※学習用に作成した例文です。
第2問
次の和歌に含まれる掛詞を指摘し、その二つの意味を答えなさい。
「いかにせむ人の心のあきくれば我が身一つの物思ふらむ」
※学習用に作成した例文です。
第3問
次の和歌に用いられている枕詞を抜き出し、それがどの語にかかっているか答えなさい。
「あしひきの山道を越えて君が住む里まで我は急ぎ来にけり」
※学習用に作成した例文です。
第4問
次の和歌に用いられている枕詞を抜き出し、それがどの語にかかっているか答えなさい。
「たらちねの母の教へを忘れずて今日も学びの道を歩まむ」
※学習用に作成した例文です。
第5問
次の和歌(『拾遺和歌集』所収、柿本人麻呂作とされる歌)を読んで、序詞にあたる部分を抜き出し、それがどの語を導いているか説明しなさい。
「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」
第6問
次の和歌に用いられている縁語を三つ抜き出しなさい。
「涙川袖のみぬれてわたる瀬に流れもやらぬ我が思ひかな」
※学習用に作成した例文です。
第7問
次の本歌と本歌取りの歌を比較し、本歌取りの歌が本歌からどの語句を取っているか、二つ指摘しなさい。
【本歌】「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」(藤原定家・『新古今和歌集』)
【本歌取りの歌】「見わたせば霞も雲もなかりけり峰の松風秋の夕暮れ」
※本歌取りの歌は学習用に作成した例文です。
第8問
次の和歌に含まれる掛詞を指摘し、その二つの意味を答えなさい。
「ながめつつ思ふ心も晴れやらで降る白雨に袖ぬらしけり」
※学習用に作成した例文です。
第9問
次の和歌に用いられている枕詞を抜き出し、それがどの語にかかっているか答えなさい。
「しろたへの衣の袖に置く露のはかなき世をば嘆きこそすれ」
※学習用に作成した例文です。
第10問
次の和歌には掛詞と縁語がそれぞれ用いられている。掛詞を一つ、縁語を二つ指摘しなさい。
「浮き沈む心の内を知らねばや浮き寝の床に夜を明かすらむ」
※学習用に作成した例文です。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:「松」に「松(植物)」と「待つ(動詞)」が掛けられている。歌意は「あなたを待つ、その松の葉の色が変わらないように、秋になっても私の心は変わりません」。松は常緑樹で色が変わらないことから「心変わりしない」というたとえに使われ、そこに「待つ」人物の心情が重ねられている。掛詞は同音の言葉を漢字で書き分けたときに二つの意味が現れる点が見抜くポイントで、平仮名表記の和歌では特に注意して読む必要がある。「松」=「待つ」は最も基本的な掛詞なので、必ず即答できるようにしておこう。
第2問の解答と解説
解答:「あき」に「秋(季節)」と「飽き(動詞「飽く」の連用形)」が掛けられている。歌意は「どうしたらよいのか。人の心が秋(飽き)になれば、私一人がもの思いにふけることになるだろう」。恋人の心変わりを「秋」の到来にたとえるのは和歌の伝統的な発想で、「秋」と「飽き」の掛詞は頻出パターンの一つである。間違えやすいのは「あきくれば」を「秋来れば」とだけ訳してしまい、「飽き」の意味を見落とすことなので、恋の歌では「あき」が出たら必ず両方の意味を疑う癖をつけたい。
第3問の解答と解説
解答:枕詞は「あしひきの」で、「山」にかかっている。「あしひきの」は「山」を導く決まった枕詞であり、それ自体に明確な現代語訳はなく、語調を整え、後に続く語を印象づける働きを持つ。歌意は「山道を越えて、あなたの住む里まで私は急いで来たのだなあ」となる。枕詞は訳出しなくてよい点が最大の注意点で、無理に意味を持たせて訳してしまう誤りが多いので気をつけたい。
第4問の解答と解説
解答:枕詞は「たらちねの」で、「母」にかかっている。「たらちねの」は「母」(まれに「親」)を導く枕詞として固定的に用いられ、こちらも訳出は不要である。歌意は「母の教えを忘れずに、今日も学問の道を歩んでいこう」。枕詞は「かかる語がほぼ決まっている」という性質を持つため、代表的な組み合わせ(あしひきの→山、たらちねの→母、ひさかたの→光・空、しろたへの→衣・雪など)は表にして覚えておくと得点源になる。
第5問の解答と解説
解答:序詞は「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の」で、「長々し(夜)」を導いている。山鳥の尾が長く垂れ下がっている様子から、同じ「長い」というイメージで「長々し夜」を引き出す構造になっており、歌意は「山鳥の尾のように長い秋の夜を、私はひとり寂しく寝るのだろうか」となる。序詞は枕詞と違い長さが自由で、多くは五音を超えて情景描写を伴う点が特徴なので、枕詞との違いを問われたら「長さ」と「訳の要不要(序詞は前半部分も意味的なつながりを持つため訳に含める)」を基準に説明するとよい。なお冒頭の「あしひきの」は「山」にかかる枕詞であり、序詞の中に枕詞が含まれている二重構造になっている点も押さえておきたい。
第6問の解答と解説
解答:縁語は「袖」「ぬれ」「瀬」「流れ」のうち三つ(例:「袖」「ぬれ」「流れ」)で、いずれも「涙川」という「川・水」のイメージに関連する語である。歌意は「涙の川に袖ばかりが濡れて渡っていく瀬で、流れ去ることもない私の物思いであるよ」。縁語は掛詞と違い一語に二つの意味を持たせるものではなく、一首の中に同じ連想group(ここでは水にまつわる語)を意図的に散りばめて表現の統一感と余情を生み出す技法である点が、掛詞との大きな違いなので混同しないようにしたい。
第7問の解答と解説
解答:本歌取りの歌は、本歌から「見わたせば」という句と、「秋の夕暮」という結句を取っている。本歌が「花も紅葉もなかりけり」と華やかなものの不在を詠んで寂寥感を出しているのに対し、本歌取りの歌は「霞も雲もなかりけり」として春から初秋への移ろいを暗示しつつ、同じ「秋の夕暮」の情感に着地させている点が本歌取りの工夫である。本歌取りを見抜くコツは、共通する語句(特に上の句の書き出しや結句)を機械的に照合することで、意味やイメージが本歌を踏まえてどう発展・変化しているかまで説明できると高得点につながる。単に「同じ言葉がある」で終わらせず、本歌との違い(何を花・紅葉の代わりに置いたか)まで答えられるようにしておこう。
第8問の解答と解説
解答:「ながめ」に「眺め(物思いにふけってぼんやり見ること)」と「長雨」が掛けられている。歌意は「物思いにふけりながら、心も晴れないまま、降る長雨に袖を濡らしてしまったなあ」。「ながめ」は「眺め」と「長雨」の掛詞として和歌に頻出する語で、後に続く「晴れやらで」「袖ぬらし」といった語とも縁語的につながりを持つ点も見逃せない。「ながめ」が出てきたら反射的に両方の意味を検討する習慣をつけることが、この掛詞の取りこぼしを防ぐ最善の方法である。
第9問の解答と解説
解答:枕詞は「しろたへの」で、「衣」にかかっている。「しろたへの」は「衣」「袖」「雪」などを導く枕詞であり、白い布のイメージから連想される語に付く。歌意は「白い衣の袖に置く露のようにはかない、この世の中を嘆かずにはいられない」。ここでは枕詞「しろたへの」が導く「衣」と、その後の「露」「はかなき」という語が意味の上でもつながっており、枕詞であっても前後の文脈と自然に響き合う場合がある点を確認しておこう。
第10問の解答と解説
解答:掛詞は「うき」で、「浮き(水に浮くこと)」と「憂き(つらい)」が掛けられている。縁語は「浮く」「沈む」「浮き寝」で、いずれも「水」にまつわる連想でつながっている。歌意は「つらく沈む心の内を知らないからか、落ち着かない浮き寝の床で夜を明かすのだろう」。この歌のように、掛詞と縁語は同じ一首の中で同時に使われることが多く、「うき」のような同音異義の語を掛詞として押さえつつ、その周辺に置かれた関連語をまとめて縁語として指摘する、という二段階の読み取りが求められる点を意識しておきたい。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問を通して感じてほしいのは、修辞ごとに「探し方の型」が違うということです。掛詞は同音異義語のアンテナ、縁語は語の連想グループ探し、枕詞は決まった組み合わせの暗記、序詞は自然描写から本旨への橋渡しの発見、本歌取りは既知の有名歌との照合、という具合です。
藤原:その通りです。特に枕詞と序詞は混同されやすいので、「訳す必要があるかないか」「長さが自由かどうか」の2点で必ず区別してください。掛詞は「ながめ」「あき」「うき」「まつ」「かる」など頻出語を単語帳のように覚えておくと、本番で瞬時に反応できます。
翔先生:本歌取りが出てきたときは、有名な本歌をどれだけ知っているかがものを言います。百人一首レベルの歌は、意味だけでなく作者・出典まで一体でセットで覚えておくことをおすすめします。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は和歌の修辞の基本5技法について、10問の一問一答形式で練習しました。掛詞・縁語・序詞・枕詞・本歌取りは、それぞれ見抜くための「視点」が異なります。今回の解説で紹介した型を意識しながら、次回以降さらに実戦的な和歌にも挑戦していきましょう。
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