はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
翔先生:藤原先生、今回は漢文書き下しシリーズの第3回ですね。前回・前々回よりも一段階レベルを上げるとのことですが。
藤原:そうですね。今回は「返り点を読んで書き下す」だけでなく、「書き下し文から返り点を自分で付ける」問題も入れています。これができると、返り点のルールを本当に理解しているかどうかがはっきり分かります。
翔先生:使役、受身、比較、反語、抑揚、仮定と、句形もバランスよく入っていますね。
藤原:はい。この10問をきちんとやり切れば、返り点の基本パターン(レ点・一二点・一二点とレ点の複合)を一通り体験できます。焦らず、一字一字読む順序を確認しながら取り組んでください。
※本記事の白文表記では、返り点は本来「文字の右下に小さく付す」ものですが、テキストで分かりやすく示すため、該当する漢字の直後に[ ]で記します。例:「学[レ]」は「学」の字にレ点が付いていることを表します。
問題(全10問)
第1問
次の白文を書き下し文にせよ。※学習用に作成した例文です。
師使[二]弟子学[レ一]文。
第2問
次の白文を書き下し文にせよ。※学習用に作成した例文です。
小人為[二]君子[一]所[レ]笑。
第3問
次の白文を書き下し文にせよ。※学習用に作成した例文です。
豈不[二]亦楽[一]乎。
第4問
次の白文を書き下し文にせよ。※学習用に作成した例文です。
光陰貴[二]於黄金[一]。
第5問
次の白文を書き下し文にせよ。※学習用に作成した例文です。
唯読[二]書[一]耳。
第6問
次の書き下し文になるように、白文「王命将軍伐敵」に返り点を付けよ。
【書き下し文】王将軍に命じて敵を伐たしむ。
白文:王 命 将軍 伐 敵。
第7問
次の書き下し文になるように、白文「賢者為愚者所侮」に返り点を付けよ。
【書き下し文】賢者は愚者の侮る所と為る。
白文:賢者 為 愚者 所 侮。
第8問
次の書き下し文になるように、白文「何為不去」に返り点を付けよ。
【書き下し文】何為れぞ去らざる。
白文:何為 不 去。
第9問
次の書き下し文になるように、白文「獣尚有恩況人乎」に返り点を付けよ。
【書き下し文】獣すら尚ほ恩有り、況んや人をや。
白文:獣尚有恩、況人乎。
第10問
次の書き下し文になるように、白文「人若不学必為愚」に返り点を付けよ。
【書き下し文】人若し学ばずんば、必ず愚と為らん。
白文:人若不学、必為愚。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:師弟子をして文を学ばしむ。
この文は使役形「使AB(AをしてBしむ)」の応用問題です。読む順序は「師→弟子→文→学→使」となり、「文」を読んでから「学」に一字返る(レ点)、さらに「学」から二字以上隔てた「使」へ返る(一二点)という複合返り点になっています。使役の対象「弟子」は「をして」と読み、動詞の後に「しむ」を送るのがポイントです。間違えやすいのは、複合点が出てきたときに「レ点を先に処理してから一二点に進む」という順序を忘れてしまうことです。今回のように一二点とレ点が同じ字に重なる形は、返り点の中でも読解力を問われる典型パターンなので、しっかり押さえておきましょう。
第2問の解答と解説
解答:小人は君子の笑ふ所と為る。
「為A所B(AのB所と為る)」は受身形の代表的な句形です。「為」は「なる」ではなく「〜と為る」と読み、「所」は「〜する所」という体言化の働きをする点に注意しましょう。読む順序は「小人→君子→笑→所→為」で、「笑」から「所」へレ点、「君子」から「為」へ一二点となります。この句形は「為」を単独の動詞と誤読して「小人は君子と為り笑ふ」のように読み違える受験生が多いため、「為〜所〜」というセットで暗記しておくことが大切です。
第3問の解答と解説
解答:豈に亦楽しからずや。
「豈不〜乎」は反語形の基本句形で、「豈に〜ずや」と読み「なんと〜ではないか」という強い肯定の意味になります。「豈」は返読文字ではなくそのまま「あに」と読み進め、「乎」は「や」と読み下すだけで返り点は付きません。間違えやすいのは「豈」を疑問文と誤解し、「ないのか?」という単純な疑問に訳してしまうことです。反語は「〜だろうか、いや〜ではない」という裏に強い断定を含む点をしっかり意識しましょう。
第4問の解答と解説
解答:光陰は黄金よりも貴し。
「A貴於B」は比較形の基本パターンで、「於」は比較の対象を導く働きをし「〜より(も)」と読みます。返り点は「貴」から「於黄金」へ一二点で返り、「於」自体には送り仮名で「より」を付けるだけで返り点は付きません。この句形で間違えやすいのは、「於」を置き字と勘違いして読み飛ばしてしまうことです。比較形の「於」は置き字ではなく必ず「より」と読む字である点をしっかり区別してください。
第5問の解答と解説
解答:唯だ書を読むのみ。
「唯〜耳」は限定形の代表的な句形で、「唯だ〜のみ」と読み「ただ〜だけだ」という限定の意味を表します。「読」から「書」へ一二点で返り、「耳」はそのまま「のみ」と読み下し、返り点は付きません。間違えやすいのは、「耳」を置き字だと思い込んで読み飛ばしてしまうことです。限定形の「耳」「已」「而已」「而已矣」などは、いずれも「のみ」と読む重要な字であり、置き字ではない点をしっかり区別しておきましょう。また「唯」は「ただ」と読み、この字が文頭にあることで限定のニュアンスが強調されている点も押さえておきたいポイントです。
第6問の解答と解説
解答:王命[二]将軍伐[一][レ]敵。
この文は「命じてAにBさせる」という使役に近い構造を持つ句形です。読む順序は「王→将軍→敵→伐→命」となり、「敵」から「伐」へレ点で一字返り、さらに「伐」から二字以上隔てた「命」へ一二点で返ります。第1問と同様の複合返り点の構造ですが、今回は自分で返り点を組み立てる問題なので、まず書き下し文から読む順序を確定し、それから返り点を後ろから逆算する練習になります。間違えやすいのは、「将軍」の直後にレ点を打ってしまい、二字以上隔たっているのに一二点を使うべき箇所を見落とすことです。返り点を付ける問題では、必ず「読む順序を全部書き出してから逆算する」という手順を徹底しましょう。
第7問の解答と解説
解答:賢者為[二]愚者[一]所[レ]侮。
第2問と同じ「為A所B」の受身形を、今度は返り点を付ける形で確認する問題です。読む順序は「賢者→愚者→侮→所→為」となり、「侮」から「所」へレ点、「愚者」から「為」へ一二点となります。ここで間違えやすいのは、「所」にも一二点を付けてしまうケースです。「所」は「侮」からレ点一字で返ってくるだけなので、一二点は「為」と「愚者」の間だけに使う点をしっかり確認してください。受身形の返り点パターンは頻出なので、この形を型として覚えてしまうと得点源になります。
第8問の解答と解説
解答:何為不[レ]去。
「何為」は「なんすれぞ」と読む疑問・反語の慣用表現で、これ自体には返り点は付きません。「不去」の部分は「去(さ)らず」と読み、「去」から「不」へレ点で一字返るだけのシンプルな構造です。間違えやすいのは、「何為」を「何」と「為」に分解して個別に返り点を付けようとしてしまうことです。「何為」はセットで慣用表現として扱い、そのまま「なんすれぞ」と読み進める点を必ず覚えておきましょう。反語のニュアンス「どうして去らないのか、いや去るべきだ」という含みも意識できると読解が深まります。
第9問の解答と解説
解答:獣尚有[レ]恩、況人乎。
これは抑揚形「A尚〜、況B乎(Aすら尚ほ〜、況んやBをや)」の代表的な句形です。「獣すら尚ほ恩有り」の部分は「恩」から「有」へレ点で一字返るだけで、「況人乎」の部分は返り点を付けずにそのまま「況んや人をや」と読み下します。間違えやすいのは、「況」以下にも返り点が必要だと思い込んでしまうことです。抑揚形の後半「況〜乎」は、返り点を使わずに読み下す決まった形なので、丸ごと型として覚えておくと安心です。「軽いものですら〜なのだから、まして重いものは当然〜だ」という論理構造も合わせて理解しておきましょう。
第10問の解答と解説
解答:人若不[レ]学、必為[レ]愚。
「若し〜ば」という仮定形と、「為(なる)」を使った基本構造が組み合わさった問題です。「学ばずんば」の部分は「学」から「不」へレ点で一字返り、「愚と為らん」の部分は「愚」から「為」へレ点で一字返ります。どちらも一字ずつの返りなのでレ点で十分処理できる、比較的取り組みやすい構造です。間違えやすいのは、「若」に返り点を付けようとしてしまうことですが、「若」は文頭で「もし」と読むだけで返り点は不要です。仮定形は「若し〜ば、〜」という基本の型さえ覚えておけば、返り点自体は難しくないケースが多いので、まず句形の型を覚えることを優先しましょう。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:藤原先生、今回のように「書き下し文から返り点を逆算する」問題は、生徒にとって難しく感じられませんか。
藤原:そうですね。でも実はこれ、返り点を「読む」だけの練習よりずっと力がつきます。コツは、まず書き下し文を見て「実際に読む順番」を単語ごとに番号で振ってみることです。①王②将軍③敵④伐⑤命、というように。その番号の並びを見れば、どこにレ点が必要で、どこに一二点が必要かが機械的に分かります。
翔先生:なるほど。感覚ではなく、番号を振って「戻る幅」を確認するんですね。
藤原:はい。一字だけ戻るならレ点、二字以上・複数の語句をまたいで戻るなら一二点、そしてその両方が重なるときは複合点になる。このルールさえ体に染み込ませれば、初見の白文にも自信を持って対応できます。使役・受身・比較・反語・抑揚・仮定といった句形は、どれも「型」として覚えてしまうのが一番の近道です。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は書き下し文と返り点の両方向から漢文の句形を確認する10問に挑戦していただきました。使役、受身、比較、反語、限定、抑揚、仮定と、入試で頻出の句形を一通り扱いましたので、間違えた問題は必ず「読む順序を番号で振る」という手順に戻って復習してください。次回以降のシリーズでも、さらに実戦的な問題を用意していきますので、ぜひ継続して取り組んでみてください。
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