はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:今回から始まる「傍線部説明」シリーズ、第1回はどんな回にしましょうか。
翔先生:はい。傍線部説明問題って「なんとなく」で解いてしまう受験生が本当に多いんです。今回は基礎レベルの評論文を使って、「傍線部の前後をどう根拠にするか」という基本動作を10問通して徹底的に練習してもらいます。
藤原:大事なのは、傍線部そのものだけを見て答えを作らないこと。傍線部の言い換え・具体例・理由が、必ず本文の近くに書いてありますからね。
翔先生:その通りです。今回の文章は「わかりやすさ」というテーマで書き下ろしました。全10問、記述形式で解いていきましょう。答えは一つに定まるように作ってありますので、解答例と自分の答えを丁寧に比べてみてください。
問題(全10問)
※以下は学習用に書き下ろしたオリジナルの評論文です。
現代社会は「わかりやすさ」を過剰に求める傾向にある。テレビの解説番組では、複雑な出来事が数分で図解され、専門家は難解な用語を避けて話すよう求められる。①こうした風潮は、一見すると親切なもののように思える。だれもが情報にアクセスできるようになり、知識の格差が縮まるように見えるからだ。
しかし、わかりやすさの追求には見落とされがちな代償がある。②物事を単純化して伝えるという行為は、必然的に情報の一部を切り捨てる作業を伴う。複雑な現実を単純な図式に置き換えるとき、私たちは細部のニュアンスや例外的な事象を捨象せざるを得ない。③その結果、受け手は物事を理解した気になりながら、実は表面的な理解にとどまっている場合が少なくない。
この傾向がとりわけ顕著なのが、社会問題の報道である。④たとえば貧困や差別といった問題は、当事者ごとに事情が異なり、一般化することが難しい。にもかかわらず、メディアはしばしば「典型的な事例」を提示し、視聴者にわかりやすい物語として提供する。⑤こうした物語は共感を呼びやすい一方で、問題の多様な側面を覆い隠してしまう危険をはらんでいる。
では、私たちはどうすればよいのか。⑥わかりやすさを全面的に否定する必要はない。複雑な情報を整理し、要点を示すこと自体は、理解の第一歩として有効である。問題は、わかりやすさを「最終目的」にしてしまうことにある。⑦わかりやすい説明を出発点としながらも、そこにとどまらず、自ら一次資料にあたったり、異なる立場の意見を比較したりする姿勢が求められる。
⑧わかりやすさとは、いわば地図のようなものだ。地図は現実の風景を単純化して示すことで、私たちの移動を助けてくれる。しかし、⑨地図だけを見て、その土地を理解した気になってしまえば、実際に歩いてみたときに見える細部や、地図には載らない一本道の存在に気づけなくなる。⑩わかりやすさという地図を手にしながらも、時には現地に足を運び、自分の目で確かめる姿勢こそが、情報化社会を生きる私たちに求められているのである。
第1問
傍線部①「こうした風潮は、一見すると親切なもののように思える」とあるが、これはどういうことか、説明しなさい。
第2問
傍線部②「物事を単純化して伝えるという行為は、必然的に情報の一部を切り捨てる作業を伴う」とあるが、これはどういうことか、説明しなさい。
第3問
傍線部③「その結果、受け手は物事を理解した気になりながら、実は表面的な理解にとどまっている場合が少なくない」とあるが、なぜこのようなことが起こるのか、理由を説明しなさい。
第4問
傍線部④「たとえば貧困や差別といった問題は、当事者ごとに事情が異なり、一般化することが難しい」とあるが、筆者はここでどのようなことを述べているか、説明しなさい。
第5問
傍線部⑤「こうした物語は共感を呼びやすい一方で、問題の多様な側面を覆い隠してしまう危険をはらんでいる」とあるが、これはどういうことか、説明しなさい。
第6問
傍線部⑥「わかりやすさを全面的に否定する必要はない」と筆者が述べるのはなぜか、理由を説明しなさい。
第7問
傍線部⑦「わかりやすい説明を出発点としながらも、そこにとどまらず」とあるが、これはどのような姿勢を指すか、説明しなさい。
第8問
傍線部⑧「わかりやすさとは、いわば地図のようなものだ」とあるが、これはどういうことか、説明しなさい。
第9問
傍線部⑨「地図だけを見て、その土地を理解した気になってしまえば」とあるが、これは何をたとえた表現か、説明しなさい。
第10問
傍線部⑩「わかりやすさという地図を手にしながらも、時には現地に足を運び、自分の目で確かめる姿勢こそが、情報化社会を生きる私たちに求められているのである」とあるが、この一文にまとめられている筆者の主張を説明しなさい。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答例:専門用語を避けて図解することで誰もが情報にアクセスしやすくなり、知識の格差が縮まるように見える点で、好ましいものとして受け止められているということ。
傍線部直後の「だれもが情報にアクセスできるようになり、知識の格差が縮まるように見えるからだ」が、そのまま①の理由=内容説明になっています。傍線部の直後に「〜からだ」という理由の形が続いている場合、それをそのまま言い換えて答えに組み込むのが基本です。「一見すると」という言葉から、後にこの評価が覆されることも意識しておくと、文章全体の構造が見えてきます。
第2問の解答と解説
解答例:物事をわかりやすく伝えようとすると、細部のニュアンスや例外的な事象を省かざるを得ず、情報の一部が失われてしまうということ。
傍線部の直後の一文「複雑な現実を単純な図式に置き換えるとき、私たちは細部のニュアンスや例外的な事象を捨象せざるを得ない」がほぼそのまま解答の骨組みになります。「切り捨てる」という比喩的な表現を、「省く」「失う」といった具体的な言葉に置き換える練習にもなる問題です。傍線部の言葉をそのまま使うのではなく、直後の説明を使って言い換える意識を持ちましょう。
第3問の解答と解説
解答例:単純化された説明で全体を把握した気分にはなるが、実際には切り捨てられた細部や例外を知らないまま、物事の一面しか理解できていないから。
これは理由説明の問題です。③の前にある②の内容(単純化=情報の切り捨て)が、そのまま③の理由になっています。傍線部と直前の文がイコールの関係(言い換え・因果)になっているケースは非常に多く、「その結果」という接続表現がその合図です。前の内容を丁寧に引き継いで理由として組み立てられたかがポイントです。
第4問の解答と解説
解答例:貧困や差別は個々人の背景や状況によって内実が異なり、一つの型にまとめて説明することができない、複雑で多様な問題であるということ。
④は「たとえば」から始まる具体例ですが、設問では「どのようなことを述べているか」と一般化して問われています。具体例を単に写すのではなく、「事情が異なる」「一般化が難しい」という部分を抽象化して、問題の性質そのものを説明する形にまとめる必要があります。具体例をそのまま答えにしてしまうミスに注意しましょう。
第5問の解答と解説
解答例:メディアが示す「典型的な事例」は感情移入しやすく共感を得やすいが、それ以外の多様な実情や例外的なケースが視聴者の目に触れなくなってしまうということ。
「一方で」という逆接的な接続表現に注目します。前半の「共感を呼びやすい」というプラスの側面と、後半の「覆い隠してしまう」というマイナスの側面を、両方きちんと解答に盛り込むことが必要です。片方だけを説明してしまうと減点対象になるので、二面性を含む傍線部は必ず両方の要素を書く癖をつけましょう。
第6問の解答と解説
解答例:情報を整理して要点を示すこと自体は理解の第一歩として有効であり、問題があるのはわかりやすさに満足してそこで探求をやめてしまうことだから。
直後の二文「複雑な情報を整理し、要点を示すこと自体は、理解の第一歩として有効である。問題は、わかりやすさを『最終目的』にしてしまうことにある」を根拠にまとめます。理由説明の問題では、傍線部の直後に続く説明を見落とさないことが最重要です。ここも直後の内容をそのまま活用できる典型的な問題です。
第7問の解答と解説
解答例:わかりやすい説明を理解の入り口として活用しつつ、そこで満足せず、自分で一次資料に当たったり異なる立場の意見を比較したりして理解を深めようとする姿勢。
「そこにとどまらず」の後に続く「自ら一次資料にあたったり、異なる立場の意見を比較したりする姿勢」がそのまま解答の中心になります。傍線部だけでは意味が完結していない場合、後ろまで読んで初めて答えが完成するという典型例です。前半(わかりやすさの活用)と後半(それを超える行動)の両方を書くことがポイントです。
第8問の解答と解説
解答例:わかりやすさは複雑な現実を単純化して示すことで理解を助ける点で、現実の風景を簡略化して示す地図と同じ働きをしているということ。
比喩の説明は「何がどう似ているか」を明示することが必須です。地図の性質(現実の風景を単純化して示し、移動を助ける)が、わかりやすさの性質(複雑な現実を単純化して示し、理解を助ける)と対応していることを、直後の一文から読み取ります。比喩をそのまま繰り返すだけでは不十分で、共通点を言葉で説明する必要があります。
第9問の解答と解説
解答例:わかりやすく単純化された説明だけを鵜呑みにして、それで物事の全体を知った気になり、実際の複雑な実情に気づけなくなってしまうこと。
ここも比喩の問題ですが、⑧とセットで考える必要があります。「地図」=わかりやすい説明、「土地」=複雑な現実、「歩いてみたときに見える細部」=説明からこぼれ落ちる実情、という対応関係を意識して、比喩を一般的な言葉に置き換えます。比喩の一部だけを訳すのではなく、文全体を対応させて訳すことが高得点のコツです。
第10問の解答と解説
解答例:わかりやすい説明を理解の手がかりとして活用しながらも、それだけに満足せず、自らの手で情報の実情や真偽を確かめようとする探究的な姿勢こそが、情報が氾濫する現代社会を生きる私たちには必要である、という主張。
最終問題は文章全体の結論を問う問題です。⑦で述べられた「出発点としながらもとどまらない姿勢」と、⑧⑨の地図の比喩(わかりやすさの限界)を統合して答える必要があります。一文だけを訳すのではなく、それまでの論の流れ(わかりやすさの利点と代償)を踏まえてまとめられているかが評価のポイントになります。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問を通して感じてほしいのは、「傍線部の答えは、たいてい傍線部のすぐ近くにある」ということです。特に「その結果」「なぜなら」「一方で」「〜からだ」といった接続表現の前後は、理由や言い換えの宝庫です。
藤原:もう一つ大事なのは、比喩の問題(今回でいう地図の話)です。比喩が出てきたら、必ず「何と何が対応しているか」を図にして整理する癖をつけましょう。それだけで説明問題の正答率はぐっと上がります。
翔先生:そして最後の問題のように、文章全体の結論を問われたときは、途中の対比(利点と代償)を両方踏まえてまとめること。一部分だけの理解で答えを書いてしまうと減点されてしまうので、注意が必要です。「利点をきちんと認めたうえで、その限界も指摘する」という両面からの説明ができるようになると、記述問題の完成度は格段に上がります。
藤原:あとは、傍線部説明と理由説明を混同しないことも大切です。「どういうことか」と聞かれたら内容の言い換え、「なぜか」と聞かれたら原因・根拠を答える。今回の10問はこの2種類をバランスよく配置してありますので、解き終わったあとにもう一度、自分がどちらの問いに答えていたのかを見直してみてください。
翔先生:最後に一つ。今回のように「わかりやすさ」自体をテーマにした評論は、皮肉なことに油断すると「わかった気」になりやすい文章でもあります(笑)。だからこそ、傍線部の根拠を本文中の言葉で一つひとつ確認する作業を面倒がらずに続けることが、遠回りに見えて一番の近道です。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は「傍線部説明・理由説明」の基礎を鍛える10問を通して、①接続表現(その結果・なぜなら・一方で など)の前後に注目する、②比喩は対応関係を図式化してから訳す、③対比構造(利点と代償)は両面をバランスよく書く、という3つのポイントを確認してきました。傍線部問題は「センス」で解くものではなく、本文のどこを根拠にするかという「型」を身につければ、確実に得点できる分野です。ぜひ何度も本文を読み返し、解答例と自分の答えのズレを分析してみてください。
日本国語塾TOPは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
前橋校・横浜校・オンラインで全国対応しています。nihonkokugojuku.comからお気軽にお問い合わせください。
また、数学・理系科目は数強塾(sukyojuku.com)もあわせてご利用ください。
💬 数強塾グループ 公式LINEに登録しよう
情報I・数学・英語・国語に関する有益な情報発信や無料授業の告知をLINEで行っています。英検合格保証の英論会もこちら👇
プレゼント付き公式LINEを友だち追加