はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
藤原:翔先生、心情読解シリーズも第3回になりましたね。今回はどんなところに焦点を当てましょうか。
翔先生:はい。今回は「心情そのもの」ではなく「心情が生まれた根拠」を丁寧に探す練習に重点を置きました。受験生がよくやる失敗は、傍線部の言葉だけで気持ちを決めてしまうことです。前後の行動や会話、情景描写まで含めて根拠を拾えるかを試す問題を10問用意しました。
藤原:「なんとなくこう感じそう」で選ばず、「本文のここにこう書いてあるから、この心情だ」と言えるようになることが目標ですね。全問オリジナルの短編場面ですので、初見の文章に対応する力を試すのにも最適です。それでは早速始めましょう。
問題(全10問)
第1問
※学習用に作成した文章です。
リレーの選手発表の日、太郎は自分の名前が呼ばれるのを待っていた。しかし発表されたのは親友の健の名前だった。太郎は拍手をしながら、健の背中をじっと見つめていた。放課後、健が「一緒に走ろうな」と声をかけてきたとき、太郎は「うん」とだけ答え、すぐにグラウンドの方を見た。
問:傍線部「すぐにグラウンドの方を見た」ときの太郎の心情として最も適切なものを選べ。
①健への嫉妬を隠すために話題をそらそうとしている
②選ばれなかった悔しさと健への複雑な思いを表に出さないようにしている
③健の申し出を拒否したい気持ちを遠回しに示している
④グラウンドで練習している他の部員が気になっている
第2問
※学習用に作成した文章です。
受験前夜、母は珍しく夜遅くまで台所にいた。翌朝、机の上にはいつもより丁寧に握られたおにぎりが二つ置かれていた。母は「頑張ってね」とだけ言うと、いつもと同じように背を向けて洗い物を始めた。花はその背中を見て、何も言わずに玄関を出た。
問:傍線部「その背中を見て、何も言わずに玄関を出た」ときの花の心情として最も適切なものを選べ。
①母の言葉が少なかったことに不満を感じている
②母の気遣いに気づき、こみ上げる思いを言葉にできずにいる
③母に見送られることを恥ずかしく思っている
④受験への不安が大きく、母の存在に気づく余裕がない
第3問
※学習用に作成した文章です。
文化祭の劇の内容で、美咲と歩は意見が割れていた。美咲は明るい結末を、歩は原作通りの結末を主張し、話し合いは平行線をたどった。数日後、歩が「美咲の案でいいよ」と静かに言うと、美咲は「歩がそこまで言うなら、もう一回二人で台本を見直そう」と机に台本を広げた。
問:傍線部「もう一回二人で台本を見直そう」と言った美咲の心情として最も適切なものを選べ。
①歩の主張が正しかったと気づき、意見を変えようとしている
②歩が譲ってくれたことに応え、二人で納得できる形にしたいと思っている
③歩に対して優位に立てたことに満足している
④劇の完成を急ぎたいという焦りから提案している
第4問
※学習用に作成した文章です。
転校する陸は、最後の日に教室の窓際で友人たちと話していた。チャイムが鳴っても誰も動かず、担任が呼びに来るまで話は続いた。陸は教室を出るとき、机や黒板をゆっくり見回し、最後にもう一度戸口で立ち止まった。
問:傍線部「戸口で立ち止まった」ときの陸の心情として最も適切なものを選べ。
①転校を後悔し、引き返そうか迷っている
②新しい環境への期待で気持ちが高まっている
③この教室での日々を心に刻み、去りがたい思いを抱いている
④担任に何か言い忘れたことがないか確認している
第5問
※学習用に作成した文章です。
バスケ部を引退する先輩の恵は、最後の練習で後輩の主将にボールを手渡した。「あとは頼んだ」と言うと、後輩は黙ってボールを胸に抱えた。恵は体育館を出る前に一度だけ振り返り、後輩たちが練習を始める音を聞いてから、ゆっくりと歩き出した。
問:傍線部「ゆっくりと歩き出した」ときの恵の心情として最も適切なものを選べ。
①後輩の実力を疑い、心配で足が進まない
②チームを託せたという安心感と、離れる寂しさが入り混じっている
③練習を続けたい気持ちを抑えきれずにいる
④後輩の態度に不満を持ち、去り際を惜しんでいる
第6問
※学習用に作成した文章です。
兄と口をきかなくなって半年が過ぎた。ある夜、兄が部屋の前で「これ、お前の好きな雑誌」と言って一冊置いて去った。翔太はしばらく雑誌を見つめてから、そっと手に取り、表紙を何度もなぞった。
問:傍線部「表紙を何度もなぞった」ときの翔太の心情として最も適切なものを選べ。
①雑誌の内容に強い興味を持っている
②兄への怒りがまだ収まらず、気を紛らわせている
③兄の歩み寄りを感じ取り、素直に喜べない思いを抱いている
④兄の贈り物が間違っていたことに落胆している
第7問
※学習用に作成した文章です。
発表会でピアノを弾いていた奈々は、途中で音を外し、そのまま最後まで弾き切った。舞台を降りると、先生が「最後まで止まらなかったのがすごいよ」と声をかけたが、奈々は「ありがとうございます」と言いながら、目を合わせずに頭を下げた。
問:傍線部「目を合わせずに頭を下げた」ときの奈々の心情として最も適切なものを選べ。
①先生の言葉を疑い、信じられない気持ちでいる
②失敗した悔しさと恥ずかしさが残り、素直に受け止めきれずにいる
③先生への感謝の気持ちでいっぱいになっている
④次の発表会のことばかり考え、気持ちがそこにない
第8問
※学習用に作成した文章です。
進路相談で、担任は「本当にこの学校で大丈夫か」と聞いた。健は少し黙ってから、「はい、自分で決めました」と答えた。担任は資料に丸をつけながら、「なら、応援するよ」と言った。健は席を立つとき、深く一礼した。
問:傍線部「深く一礼した」ときの健の心情として最も適切なものを選べ。
①決定を認めてもらえたことへの安心と感謝の気持ち
②担任の心配が的外れだったことへの不満
③これ以上何も言われたくないという焦り
④礼儀として形式的に行っただけの動作
第9問
※学習用に作成した文章です。
真奈は友人の由紀が家庭の事情で塾を辞めることを、たまたま職員室の前で聞いてしまった。翌日、由紀に会ったとき、真奈はいつもの話題を選び、塾の話には一切触れなかった。
問:傍線部「塾の話には一切触れなかった」ときの真奈の心情として最も適切なものを選べ。
①塾のことに興味がなくなってしまった
②由紀の事情を知ったことを隠しつつ、由紀を傷つけないよう気遣っている
③由紀に何を話せばいいか分からず、無関心を装っている
④由紀との関係を終わらせたいと考えている
第10問
※学習用に作成した文章です。
卒業式前日、教室に残った拓也は、誰もいない席に座り、黒板の隅に残る自分たちの落書きを見つめていた。窓から夕日が入り込み、拓也はしばらく動かずにそこにいたが、やがて席を立ち、黒板の落書きだけをそのままにして教室を出た。
問:傍線部「黒板の落書きだけをそのままにして教室を出た」ときの拓也の心情として最も適切なものを選べ。
①落書きを消す時間がなかっただけである
②教室での思い出を形として残しておきたいという気持ち
③掃除を怠ったことへの後ろめたさ
④誰かに落書きを見つけてほしいという期待
解答・解説
第1問の解答と解説
解答:②
太郎は選手に選ばれなかった悔しさを抱えながらも、健への拍手や「一緒に走ろうな」への「うん」という返事から、健への好意的な気持ちも失っていないことが分かります。それでも視線をすぐグラウンドに逸らす行動は、複雑な感情を表に出さないための動作と読み取れます。①や③は本文にない敵意を過剰に読み込んでおり、④は根拠となる描写がなく誤りです。「拍手」と「うん」という肯定的な行動があることを見落とすと、①③のような否定的な選択肢に流されやすいので注意しましょう。
第2問の解答と解説
解答:②
「いつもより丁寧に握られたおにぎり」という描写は、母の言葉にならない気遣いを示す重要な根拠です。花はその背中を見て何も言わないという行動から、感謝や愛情を強く感じつつも言葉にできない様子が読み取れます。①③④はいずれも本文の温かい描写と矛盾するため誤りです。台詞が少ないことを「不満」や「恥ずかしさ」と結びつけるのは早計で、行動の丁寧さから心情を読む練習になる一問です。
第3問の解答と解説
解答:②
歩が意見を譲ったことに対して、美咲は自分の主張を押し通すのではなく「二人で見直そう」と提案しています。これは歩の歩み寄りに応え、より良い形を一緒に作りたいという気持ちの表れです。①は「案でいいよ」という言葉だけを見ての誤読、③④は本文の協調的な行動と矛盾します。傍線部の直前にある歩の発言を根拠として結びつける読解力が問われています。
第4問の解答と解説
解答:③
教室を見回し、最後に戸口で立ち止まるという一連の動作は、名残を惜しむ心情の典型的な表現です。すでに会話を続けチャイムを無視してまで教室にいたことからも、去りがたい思いが強調されています。①は「後悔」という描写がなく飛躍、②は本文の雰囲気と逆で誤りです。④は動作の意味を軽く扱いすぎており、情景描写全体から心情を読む姿勢が求められます。
第5問の解答と解説
解答:②
「あとは頼んだ」という言葉とボールを渡す行動から、後輩への信頼が読み取れます。一方で振り返り、練習の音を確認してから歩き出す動作には、離れることへの寂しさがにじんでいます。安心と寂しさという二つの要素が同時に表れている点が本問のポイントです。①④は本文の信頼関係の描写と矛盾し、③は「歩き出した」という行動と逆方向の心情のため誤りです。
第6問の解答と解説
解答:③
半年間口をきかなかった兄からの贈り物という状況設定が、翔太の複雑な心情を理解する鍵になります。表紙を何度もなぞる動作は、素直に喜びを表現できないものの、確かに心が動いている様子を示しています。①は感情の対象を取り違えており、②は動作の丁寧さと矛盾し、④は本文にない解釈です。関係性の背景(半年間の断絶)を必ず踏まえて読むことが重要です。
第7問の解答と解説
解答:②
音を外したという失敗と、先生の励ましの言葉に対して目を合わせられないという行動から、悔しさと恥ずかしさが強く残っていることが分かります。「ありがとうございます」という言葉自体は礼儀として発せられていますが、態度からは素直に受け止められていない様子がうかがえます。①③④は本文の失敗の描写や態度の描写と矛盾するため誤りです。言葉と態度が一致しない場合、態度の方に本音が表れることを学べる一問です。
第8問の解答と解説
解答:①
担任の「応援するよ」という言葉を受けて深く一礼するという行動は、自分の決断を認めてもらえたことへの安心と感謝を示しています。健が黙った後に「自分で決めました」とはっきり答えていることからも、迷いを乗り越えた末の心情であることが読み取れます。②③は本文にない対立的な解釈であり誤りです。④は動作を軽視した選択肢で、文脈全体を読めば選びにくくなっています。
第9問の解答と解説
解答:②
真奈が偶然知った由紀の事情に対して、あえて話題に触れないという行動は、由紀を気遣う思いやりの表れです。「たまたま聞いてしまった」という設定から、真奈自身も動揺や気遣いを抱えていることが推測できます。①③④はいずれも本文の状況設定を無視した読み違いです。知った事実をどう扱うかという行動から心情を読み取る、応用度の高い一問です。
第10問の解答と解説
解答:②
夕日の中でしばらく動かずにいるという行動と、落書きだけを残して去るという行動を合わせて読むと、思い出を形として残しておきたいという心情が浮かび上がります。掃除や落書きの是非を問う内容ではないため、①③のような現実的な理由付けは誤りです。④も本文に描かれていない他者の視点を勝手に補っているため誤りです。情景描写と行動の両方から心情を統合的に読み取る力が試されています。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:今回の10問を通して感じてほしいのは、「セリフの少なさ」や「動作の変化」にこそ本音が表れるということです。台詞だけで心情を判断すると、④や②のような紛らわしい誤答に引き寄せられてしまいます。
藤原:そうですね。選択肢を選ぶときは、必ず「本文のどの一文がこの選択肢を支えているか」を指で押さえてから答えるようにしてください。根拠を言葉で説明できない選択肢は、たとえ雰囲気が合っていても選ばないという習慣をつけましょう。この積み重ねが、初見の長文でも安定して心情を読み取る力につながります。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は「行動描写から心情を読み取る」ことに重点を置いた10問をお届けしました。台詞よりも動作や情景描写に注目する練習を積むことで、より正確な心情読解ができるようになります。次回はさらに難易度を上げた場面設定に挑戦しますので、ぜひ楽しみにしていてください。
日本国語塾TOPは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
前橋校・横浜校・オンラインで全国対応しています。nihonkokugojuku.comからお気軽にお問い合わせください。
また、数学・理系科目は数強塾(sukyojuku.com)もあわせてご利用ください。
💬 数強塾グループ 公式LINEに登録しよう
情報I・数学・英語・国語に関する有益な情報発信や無料授業の告知をLINEで行っています。英検合格保証の英論会もこちら👇
プレゼント付き公式LINEを友だち追加