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藤原 進之介

株式会社数強塾 代表取締役。数強塾グループ(日本数学塾・日本英語塾・日本国語塾・英論会)創設者。現役時代に数学で挫折し浪人を経て「なぜそうなるか」を徹底追求する指導哲学を確立。一生の役に立つ勉強を全国にオンライン展開。

土佐日記を完全読解|紀貫之が女性に仮託した理由と入試頻出場面

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はじめに|土佐日記はなぜ入試に頻出なのか

数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!

「土佐日記って、男性が書いたのに女性のふりをしているんですよね?なぜですか?」

毎年、生徒や保護者の方からこの質問をいただきます。土佐日記は、高校入試・大学入試を問わず頻出中の頻出作品です。しかし、ただ「紀貫之が書いた」「最初の仮名日記」と丸暗記しているだけでは、入試問題には対応できません。

この記事では、以下の3点を徹底的に解説します。

  • 紀貫之がなぜ「女性に仮託」して書いたのか、その深い理由
  • 入試で頻出の場面と、そこで問われるポイント
  • 実際の問題形式での解き方の実演

「土佐日記を読んだけれど、何を問われているのかわからない」という受験生も、この記事を読み終えるころには、入試本番で得点できる実力がついているはずです。ぜひ最後まで読んでください。

基礎知識|まず土佐日記の全体像を掴もう

作品の基本データ

まず、絶対に覚えておくべき基本情報を表でまとめます。

項目 内容
作者 紀貫之(きのつらゆき)
成立年代 平安時代中期・935年ごろ
文体 仮名文字(ひらがな)による日本語散文
ジャンル 日記文学(紀行文的要素も持つ)
内容 土佐国(現・高知県)から京都への帰路55日間の記録
視点 「女性」として書かれている(男性作者が女性に仮託)
文学史上の意義 日本初の仮名文字による日記文学

紀貫之はどんな人物か

紀貫之は、古今和歌集の撰者のひとりとして知られる、平安時代を代表する歌人です。古今和歌集の「仮名序(かなじょ)」を書いたことでも有名で、当時すでに文学の第一人者でした。

935年ごろ、紀貫之は土佐国(現在の高知県)の国司(地方長官)の任期を終え、京都へ帰る旅に出ます。その55日間の旅の記録が土佐日記です。

旅の途中、貫之にはある深い悲しみがありました。土佐で亡くなった娘のことです。この悲しみが、土佐日記の根底に流れる最も重要なテーマになっています。

詳細解説|入試で使える知識を体系的に

①紀貫之が女性に仮託した理由|最重要ポイント

土佐日記の冒頭には、有名な一文があります。

「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」

【現代語訳】
「男もするという日記というものを、女もしてみようとしてするのだ。」

ここで紀貫之(男性)は「女もしてみむ」と言い、自分が女性であるかのように書き始めています。では、なぜ男性である貫之があえて女性のふりをして書いたのでしょうか。入試でも頻繁に問われる最重要ポイントです。

理由①:当時の文章表現の慣習

平安時代、男性の知識人が「公的な記録」を書く場合は、漢字・漢文で書くのが常識でした。仮名文字(ひらがな)は「女手(おんなで)」と呼ばれ、女性が使うものとされていました。紀貫之は仮名文字で日記を書くために、「女性として書いている」という設定にする必要があったのです。

理由②:仮名文学・国語文化の確立への意志

古今和歌集の仮名序でも示したように、貫之は「日本語(仮名)による文学」の価値を強く信じていました。漢文に対抗しうる仮名の散文文学を作り上げるために、あえて仮名で、あえて女性の視点で書くという文学的挑戦をしたのです。

理由③:感情を自由に表現するための「仮面」

男性、しかも元国司という立場では、悲しみや感傷を素直に書くことには社会的な制約がありました。「女性」という仮面をかぶることで、亡き娘への深い悲しみや、旅の感情をより自由に、より率直に書けたと考えられています。これは翔先生が生徒によく話す視点で、「貫之にとって女性への仮託は、感情解放の装置だった」と表現できます。

この3つの理由は、入試の記述問題でそのまま使えます。必ず自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

②土佐日記の構成と流れ

土佐日記は承平4年(934年)12月21日から始まり、翌935年2月16日に京都に到着するまでの55日間が描かれています。

  • 出発前後(12月):送別の宴、土佐の人々との別れ
  • 海上の旅(1月):嵐・船待ち・海賊の脅威・和歌の応酬
  • 帰京前後(2月):亡き娘への追慕・京都の自宅の荒廃

入試では特に「海上での場面」と「帰京後の場面」が頻出です。

③入試頻出場面①|「亡き子を思う場面」

土佐日記の中で最も入試に出やすく、かつ最も感動的な場面が「亡き娘を思う」場面です。

帰京の途中、船の上で誰かが詠んだ和歌が引き金となり、貫之は土佐で亡くなった娘のことを思い出します。

「都へと思ふをものの悲しきは帰らぬ人のあればなりけり」

【現代語訳】
「都へ帰ろうと思うのに、それでも悲しいのは、(一緒に)帰れない人がいるからなのだなあ」

この歌は、娘が亡くなっていることへの深い悲しみを詠んでいます。帰れる喜びと、娘が帰れないという悲しみが対比されており、入試では

  • 誰のことを詠んでいるか(亡き娘)
  • 「帰らぬ人」が指すもの
  • 作者の心情説明

などが問われます。

④入試頻出場面②|「帰宅後の場面」と対句的表現

旅の終わり、貫之が京都の自宅に帰りついた場面も非常に重要です。

「家に至りて、門に入るに、月明かければ、いとよく有様見ゆ。聞きしよりもまして、言ふかひなく ぞこぼれ破れたる。」

【現代語訳】
「家に着いて、門に入ると、月が明るいのでたいへんよく様子が見える。聞いていたよりもひどく、何とも言いようがないほど荒れ果てている。」

長い旅を終えてやっと帰ってきた自宅が、荒れ果てていた。さらにそこで貫之はまた娘のことを思い出します。

「生まれしも帰らぬものを我が宿に小松のあるを見るが悲しさ」

【現代語訳】
「(娘は)生まれたのに帰らないというのに、我が家に(娘が植えた)小松が生えているのを見るのが悲しいことよ」

この場面では「帰る」という動詞が「自分たちは帰ってきた」「娘は帰らない」という対比構造で使われていることが入試頻出ポイントです。

⑤重要文法事項|入試で問われる文法まとめ

表現・文法 例文 入試での問われ方
「む」(意志・推量) 「女もしてみむ」 助動詞の意味・活用の識別
「なり」(断定・伝聞推定) 「男もすなる」 「なり」の識別(伝聞推定の「なり」)
「ぞ〜ける」(係り結び) 「ぞこぼれ破れたる」 係り結びの法則
「なりけり」(詠嘆) 「あればなりけり」 「けり」の意味(詠嘆か過去か)
掛詞・縁語 和歌の中の表現 和歌の修辞技法の説明

特に冒頭の「男もすなる」の「なる」が伝聞推定の助動詞「なり」の連体形であることは、最頻出の文法問題です。「男もする(という)日記」と訳せるかどうか、必ず確認してください。

入試での出題パターンと対策法

出題パターン①|書き下し・現代語訳問題

土佐日記の現代語訳問題で最も出るのは、冒頭の一文です。

「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」

解き方の実演:

  1. 「すなる」→「す(する)+なる(伝聞推定の助動詞)」=「するという」
  2. 「みむ」→「み(見る・する)+む(意志の助動詞)」=「してみよう」
  3. 「とて」→「と言って・〜しようとして」という目的を表す
  4. 「するなり」→「する(している)+なり(断定)」

「男もするという日記というものを、女もしてみようとしてするのだ。」

出題パターン②|心情説明問題

「亡き娘を思う場面」での心情説明は記述問題の定番です。

解答の型:
「都に帰れる喜びはあるものの、土佐で亡くなった娘は一緒に帰れないという悲しみ・無念さを感じている。」

ポイントは「喜びと悲しみの対比」を必ず入れること。片方だけ書くと減点されます。

出題パターン③|文学史・知識問題

以下の選択肢形式の問題は毎年のように出ます。

【例題】土佐日記についての説明として正しいものを選べ。

  1. 漢文で書かれた日本初の日記文学である
  2. 紫式部が書いた作品である
  3. 仮名文字で書かれた日本初の日記文学である
  4. 奈良時代に成立した作品である

答え:C
Aは「漢文」が誤り(仮名文字)。Bは作者が誤り(紀貫之)。Dは時代が誤り(平安時代)。

出題パターン④|和歌の解釈問題

「都へと思ふをものの悲しきは帰らぬ人のあればなりけり」の和歌では、

  • 「帰らぬ人」が誰を指すか →土佐で亡くなった娘
  • なぜ「悲しき」のか → 娘は一緒に帰れないから
  • 「なりけり」の文法的説明 → 断定の助動詞「なり」+詠嘆の助動詞「けり」の連用形

藤原&翔先生のここだけの話

藤原からの視点|「仮名序」と土佐日記はセットで理解せよ

私が生徒に必ず伝えるのは、古今和歌集の仮名序と土佐日記はセットで理解するということです。

仮名序の冒頭「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」という有名な一文。ここで貫之は「和歌(日本語の言葉)は人の心から生まれる」と宣言しています。

土佐日記も同じです。漢文・漢字という「輸入された表現」ではなく、日本語・仮名という「心の言葉」で書くこと。それが貫之の一貫したメッセージでした。「女性に仮託した」のは単なる奇抜な工夫ではなく、「仮名で日本の心を書く」という文学的宣言だったのです。

この視点を持っていると、入試の記述問題でワンランク上の答えが書けます。「当時の文字文化の慣習上、仮名は女性のものとされていたため、仮名で書くには女性として書く必要があったから」という説明に加えて、「紀貫之が仮名文学の価値を示そうとした文学的意図があったから」と書けると満点解答になります。

翔先生からの視点|「帰る」という動詞の二重性に注目せよ

私が授業で必ず取り上げるのが、土佐日記全体を貫く「帰る」という言葉の二重性です。

旅の全体を通して「京都に帰る」ことが目標として描かれます。しかし、娘だけは「帰れない」。

帰宅後の場面で貫之は「生まれしも帰らぬものを」と詠みます。「生まれたのに帰らない」——これは娘だけでなく、「かつてあった幸せな日常」「家族が揃っていた過去」にも帰れないという意味にも読めます。

授業では「土佐日記の真のテーマは何か?」と生徒に問いかけます。「旅の記録」ではなく、「失われたものへの哀悼」だと気づいたとき、生徒たちの表情がはっと変わります。入試の心情説明問題でも、この「何かが永遠に帰らない」という悲しみの核心に触れられると、格段に説得力のある解答になります。

実践演習|覚えたことをすぐ試そう

演習問題①(文法)

次の文の「なる」の文法的意味を答えよ。

「男もすなる日記といふものを」

解答:伝聞推定の助動詞「なり」の連体形。「男もするという日記」と訳す。

演習問題②(現代語訳)

「都へと思ふをものの悲しきは帰らぬ人のあればなりけり」を現代語訳せよ。

解答例:「都へ帰ろうと思っているのに、それでも悲しいのは、(一緒に)帰ることのできない人がいるからなのだなあ。」

演習問題③(内容理解)

紀貫之が土佐日記を「女性として」書いた理由を2つ説明せよ。

解答例:

  1. 当時、仮名文字(ひらがな)は「女手」と呼ばれ女性が使うものとされていたため、仮名で書くにあたって女性の立場を装う必要があったから。
  2. 仮名による日本語文学の価値を示すという文学的意図があり、また男性という立場の制約を超えて感情を自由に表現するため。

受験生・保護者へのアクション3ステップ

  1. Step1:冒頭一文の完全暗記 ── 「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」を現代語訳付きで完全に覚える。文法の「なる=伝聞推定」も必ずセットで。
  2. Step2:頻出2場面の心情把握 ── 「亡き娘を思う場面」「帰宅後の場面」の和歌の意味と、その場面での作者の心情(悲しみ・喪失感)を言葉で説明できるようにする。
  3. Step3:文学史知識の確認 ── 「日本最初の仮名日記」「作者:紀貫之」「成立:平安時代中期・935年ごろ」「舞台:土佐〜京都」を他の作品と混同しないよう整理する。

まとめ|土佐日記を制する者が入試の古文を制す

土佐日記は、単なる「旅の日記」ではありません。紀貫之という平安時代最高の歌人が、仮名文学の価値を示すため、そして亡き娘への深い愛と悲しみを書き残すために創り上げた、日本文学史上の傑作です。

入試で問われるポイントをまとめると:

  • ✅ 冒頭一文の文法(「なる」=伝聞推定)
  • ✅ 女性仮託の理由(仮名文字の慣習+文学的意図+感情表現の自由)
  • ✅ 亡き娘への追慕場面の和歌解釈と心情説明
  • ✅ 帰宅場面の「帰る」の二重性と対比構造
  • ✅ 文学史(日本初の仮名日記・作者・時代)

この5点を完璧にすれば、土佐日記に関する入試問題はほぼ満点が取れます。ぜひこの記事を繰り返し読み、演習問題を自力で解けるようになるまで練習してください。


日本国語塾トップは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
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また、数学・理系科目は数強塾(sukyojuku.com)もあわせてご利用ください。

💡 藤原先生からの学習アドバイス

# 学習アドバイス

紀貫之が女性になりすました意図を理解することで、作品全体の主題(身分や性別の既成概念への問い)が見え、登場人物の言動や場面の選別理由が論理的に把握でき、入試の記述・選択問題で出題者の「なぜそこを出したのか」という意図を読み取る力が養われます。

📚 この記事について|日本国語塾・数強塾グループ

本記事は、数強塾グループ代表 藤原進之介の監修のもと作成しています。
藤原は情報教育の専門家としてKADOKAWAより
藤原進之介の ゼロから始める情報I』『ライバルに差をつける 情報I 鉄板の100題』、
Gakkenより『きめる!共通テスト情報I』など10冊以上の著書を刊行(累計10万部超)。
「本質を捉える理解」という指導哲学は、国語教育にも一貫して反映されています。

日本国語塾では一流講師が担任として専属で指導します。
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