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戦国策・国語(こくご)を読む|縦横家の弁舌と漢文の面白さ

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はじめに|漢文が「難しい」と感じるすべての受験生へ

数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!

「漢文って、ただ返り点を追って訓読すればいいんじゃないの?」――そんなふうに思っていませんか?実はこれ、漢文が苦手な受験生のほぼ全員が陥る最大の落とし穴です。漢文は、ルールを覚えれば点が取れる科目である一方、「何が書かれているのか・なぜその言葉が使われているのか」を深く理解しないと、読解問題や記述問題で得点できないという側面を持っています。

今回は、そんな漢文の世界に「面白さ」という入口から踏み込んでもらうために、『戦国策(せんごくさく)』を取り上げます。戦国策は、中国の戦国時代(紀元前403年〜紀元前221年ごろ)に活躍した「縦横家(じゅうおうか)」と呼ばれる弁舌家・策士たちの言動をまとめた書物です。彼らの舌先三寸の外交術、巧みなレトリック、そして人間の本質をえぐるような洞察が詰まった戦国策は、漢文読解の演習素材としても、そして純粋な読み物としても、最高クラスの面白さを誇ります。

この記事では、戦国策に登場する縦横家の弁舌を実際の原文・書き下し文とともに紹介しながら、漢文の楽しさと入試で使える読解のコツを、藤原・翔先生の塾現場からの声とともにお届けします。最後まで読めば、「漢文って、こんなに面白かったのか!」と感じていただけるはずです。


核心情報・基礎知識|戦国策とは何か、縦横家とは何者か

戦国策の成立と構成

『戦国策』は、前漢の学者・劉向(りゅうきょう)が諸国に散らばっていた策士たちの言行録を編集した書物です。全33篇、国別(東周・西周・秦・斉・楚・趙・魏・韓・燕・宋・衛・中山)に編まれており、各国の外交・内政をめぐる議論や弁論が収録されています。

内容の中心は、戦国時代の列国が覇を競うなかで、各国の君主や将に向けて「こうすれば国が強くなる」「この同盟は危険だ」「あの将軍をこう説得しろ」と縦横無尽に提言する「策士」たちの言葉です。ドラマチックな比喩、鋭い人間観察、緻密な論理構成――どれをとっても一流の説得術の教科書といえます。

縦横家とは?

縦横家とは、戦国時代に諸国を遊説して歩いた弁舌家・外交家の集団です。「縦」とは合従(がっしょう)=南北に同盟を組んで強国・秦に対抗すること、「横」とは連衡(れんこう)=各国が東西に秦と個別同盟を結ぶことを指します。

代表的な縦横家としては、

  • 蘇秦(そしん):六国合従を成功させた合従の元祖
  • 張儀(ちょうぎ):秦のために連衡を推進した策士
  • 范雎(はんしょ)蔡沢(さいたく)なども登場

彼らに共通するのは、「言葉だけで国を動かす」という圧倒的な弁舌力です。剣も軍隊も持たず、ただ「話す力」だけで歴史を動かした人物たちの言葉は、2000年以上の時を超えて私たちに届いています。これが戦国策を漢文の学習素材として最高に面白い理由のひとつです。

入試における戦国策の位置づけ

戦国策は、難関大学の漢文入試でも頻出の素材です。東大・京大・早稲田・慶應などをはじめ、センター試験(現・共通テスト)でも過去に出題されています。「人物の主張を読み取る」「比喩の意味を説明する」「対話の構造を理解する」という漢文読解の核心的な力が問われるため、戦国策を読むことは、漢文対策として非常に効率的です。


具体的な方法・解説|戦国策の名場面を読む

①「狐借虎威(こしゃこい)」――比喩の天才的な使い方

戦国策の中でも最も有名な話のひとつが、楚策に収録された「狐借虎威」です。原文と書き下し文を見てみましょう。

【原文(抜粋)】

虎求百獣而食之、得狐。
狐曰、「子無敢食我也。天帝使我長百獣。今子食我、是逆天帝命也。」
虎以為然、故遂与之行。獣見之皆走。
虎不知獣畏己而走也、以為畏狐也。

【書き下し文】

虎、百獣を求めてこれを食らふ。狐を得たり。
狐曰はく、「子、敢へて我を食らふなかれ。天帝、我をして百獣に長たらしむ。今、子、我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。」と。
虎以て然りと為し、故に遂にこれと行く。獣これを見てみな走る。
虎、獣の己を畏れて走るを知らず、以て狐を畏るると為せり。

【現代語訳】
トラが百獣を求めて食っていたところ、キツネを捕まえた。キツネは言った。「あなたは私を食ってはいけません。天帝が私を百獣の長としたのですから。もし私を食べれば、天帝の命令に背くことになります。」トラはもっともだと思い、キツネと一緒に歩いた。獣たちはみな逃げた。トラは、獣たちが自分(トラ)を恐れて逃げることを知らず、キツネを恐れていると思い込んだ。

この話は、楚の将軍・昭奚恤(しょうけいじゅつ)が王の権威を借りて威張っているのではないか、という文脈で語られる比喩です。「虎=楚王、狐=昭奚恤」という対応を読み取ることが読解のカギです。

翔先生のポイント:「比喩の問題では、必ず『何が何に対応しているか』を本文中から根拠を持って答える習慣をつけてください。戦国策の比喩は構造が明確なので、練習素材として最高です。」

②蘇秦の合従説――論理構成の美しさを読む

蘇秦が趙王を説得する場面は、論理の組み立て方の見本として入試でも頻出です。蘇秦はまず現状の危機を数字と事実で示し、次に「合従すれば勝てる」という論拠を展開し、最後に感情に訴えて決断を促します。

この「現状分析→論拠提示→感情訴求」という三段構成は、現代の小論文・説得的文章の書き方にも通じます。漢文で学んだ論理構成が、そのまま現代文・小論文の得点力に直結するのです。

藤原先生のポイント:「戦国策の説得文を読むとき、私はいつも受験生に『この人は今、相手のどんな感情・利益に訴えているのか』を意識して読むよう指導しています。これが記述問題の要旨把握に直接つながります。」

③「鄒忌諷斉王納諫(すうきふうせいおうのうかん)」――自己分析と説得の技法

斉策に収録されたこの話も非常に有名です。鄒忌という美男子が、自分が本当に美しいかどうかを妻・妾・客人に聞いてみます。全員が「あなたが一番美しい」と答えますが、鄒忌は冷静に分析します。妻は愛しているから、妾は恐れているから、客人は何か頼みたいことがあるから――それぞれ本心ではなく自分に都合よく答えているのだと気づきます。

そして斉王にこう説きます。「王の周りにいる者たちも同じです。真実を言わない者ばかりです。諫言を受け入れる仕組みを作ってください。」

この話の面白さは、自分の身近な体験から出発して、国家レベルの問題に展開する論法にあります。身近→普遍という論の運び方は、現代文の評論文でも頻繁に使われる手法です。戦国策を読むことで、「文章の展開パターン」が自然と身につきます。

④漢文の文法ポイント:使役・反語・否定の読み方

戦国策を読むうえで押さえておきたい文法ポイントを整理します。

  • 使役「使A~」「令A~」:「AをしてBせしむ」→「AにBさせる」
    例:「天帝使我長百獣」=天帝が私に百獣の長たらしめた
  • 反語「豈~哉」「何~哉」:「どうして~であろうか、いや~ではない」
    縦横家の弁舌には反語が多用される。語気の強さに注目。
  • 否定「非~也」「無~」:断定的な否定。策士たちは断定することで相手の反論を封じる。
  • 条件「若~則」「苟~」:「もし~ならば」。論理的な条件提示に頻出。

これらの句形は、戦国策の文章を読み込むことで自然に体に染み込んでいきます。文法書を丸暗記するより、生きた文章の中で繰り返し出会う方が定着が早いというのが私たちの指導経験からの確信です。


藤原&翔先生の実践アドバイス|塾現場からの声

藤原進之介からのアドバイス

私が日本国語塾TOPで漢文指導をしていて強く感じるのは、「漢文が苦手な生徒ほど、漢文を言語ではなく暗号として扱っている」ということです。句形を暗記して、機械的に訓読して、それで終わり。でも、戦国策のような「人間くさい」テキストを読むと、漢文が急に「言葉」に変わります。

ある高3の生徒が、センター模試の漢文で毎回4〜5割しか取れていませんでした。そこで私は戦国策の「狐借虎威」を一緒に読むことにしました。「なんでキツネはトラに嘘をついたんですか?」と聞いたら、「生き残るためですよね」と即答。「そう!その登場人物の意図・目的を読み取る力が漢文読解のすべてです」と伝えたところ、次の模試では8割超えを達成しました。

漢文は「人間を描いた文学」です。登場人物が何を考え、何を目的として発言しているかを常に意識して読む――これが最強の漢文読解法です。

翔先生からのアドバイス

私が授業で戦国策を使うとき、必ず受験生にやってもらうことがあります。それは、「説得している人物の立場で、その主張を50字でまとめる」という作業です。

例えば蘇秦の合従説なら「秦が強すぎる今、六国が個別に対抗しても滅ぼされる。団結して初めて互角に戦える」という具合です。これができると、記述問題の要旨把握がものすごく楽になります。

また、縦横家の弁舌を読むと「接続表現の重要性」がよく分かります。「然則(しからばすなわち)=そうであるならば」「是故(ここをもって)=だから」「雖然(しかれども)=しかしながら」――これらの接続表現は、現代文の論説文でも同様の役割を果たします。漢文と現代文を横断的に学ぶ絶好のチャンスです。


よくある疑問・失敗パターンと解決策

Q1:戦国策は難しすぎませんか?

A:まず有名な話から読めば大丈夫です。「狐借虎威」「鄒忌諷斉王納諫」など、教科書や参考書に掲載されているものは注釈も充実しています。いきなり原文だけで読もうとせず、現代語訳と対照しながら読む「多読」スタイルから始めましょう。

Q2:句形の暗記と読解、どちらを先にすべきですか?

A:両方同時進行が正解です。句形だけ先に覚えても、文脈のない暗記はすぐ忘れます。戦国策のような面白い文章を読みながら「あ、これが反語か」と気づく体験を積む方が、記憶の定着率が圧倒的に高いです。

Q3:戦国策は史実なのですか?それとも創作?

A:史実と創作が混在しています。実際に起きた外交的事件を記録したものもあれば、後世に書き加えられた誇張や創作も含まれていると研究者は指摘します。ただ、漢文読解の観点からは「書かれた内容の論理構造を読む」ことが目的ですから、史実かどうかより「何をどう主張しているか」に集中しましょう。

Q4:戦国策と史記はどう違いますか?

A:スタイルと目的が異なります。史記は歴史家・司馬遷が記した正史であり、客観的な叙述を重視します。一方、戦国策は弁論・説得の言葉そのものが中心で、よりレトリカル(修辞的)な文章が多いです。漢文の「言語の美しさ」を楽しむなら戦国策、「歴史の全体像」を掴むなら史記、という使い分けが効果的です。

失敗パターン:「比喩の意味を聞かれているのに、表面的な内容しか答えない」

「狐借虎威」で「虎が狐に騙された話を書きなさい」と答えてしまう生徒は少なくありません。しかし入試問題では「この比喩が何を意味するか」が問われます。比喩問題では必ず「現実の文脈での対応関係」を答えること――これを習慣にしてください。


今日からできるアクション

この記事を読んだその日からできる、具体的なステップを紹介します。

  1. 「狐借虎威」を音読する(10分)
    書き下し文を声に出して3回読む。読むたびに「誰が」「誰に」「何を目的として」言っているかを意識する。
  2. 比喩の対応表を作る(15分)
    「虎=楚王」「狐=昭奚恤」「獣=他国の君主たち」のように、比喩の登場人物と現実の対応をノートに書き出す。
  3. 説得の論理構造を分析する(20分)
    蘇秦や鄒忌の弁論を読み、「現状分析→論拠→結論」の三段構成がどこに当たるかを線引きしてみる。
  4. 接続表現に蛍光ペンを引く(5分)
    「然則」「是故」「雖然」などの接続表現を探してマーキングし、論の流れを視覚的に把握する。
  5. 「この話を50字で要約する」練習(15分)
    翔先生おすすめの要約練習。1話読むごとに50字以内でまとめる習慣をつけると、要旨把握力が飛躍的に伸びる。

これらを週3回、1ヶ月続けるだけで、漢文の読解スピードと正確さが目に見えて向上します。試してみてください。


まとめ|戦国策が漢文の面白さへの最高の入口

今回は『戦国策』と縦横家の弁舌を通じて、漢文の面白さと読解力向上の方法をお伝えしました。改めてポイントを整理します。

  • 戦国策は縦横家の外交・説得の言葉を集めた漢文の宝庫
  • 「狐借虎威」「鄒忌諷斉王納諫」などの比喩表現は入試頻出
  • 登場人物の「意図・目的・立場」を読み取ることが漢文読解の核心
  • 使役・反語・否定・条件の句形は生きた文章の中で覚えるのが効率的
  • 戦国策の論理構成は、現代文・小論文の力にも直結する

漢文は「難しい暗号」ではなく、「2000年前の人間たちが本気で生き抜こうとした知恵の言葉」です。その言葉の熱量を感じながら読むとき、漢文は最高に面白い科目に変わります。ぜひ今日から戦国策を開いてみてください。


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