数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
環境学部・農学部・生命科学部の入試小論文は、「なんとなくSDGsっぽいことを書けばいい」という甘い認識では太刀打ちできません。出題者である教授陣は、日々最前線の研究に携わる専門家です。彼らが求めているのは、専門的知識を背景にした論理的・批判的思考です。本記事では、環境・農学部の小論文で頻出テーマとなる「SDGs」「食料問題」「生態系」を中心に、実際に高得点を取るための具体的な思考法・書き方・表現技術を徹底解説します。受験生はもちろん、指導にあたる保護者の方にも役立てていただける内容です。
はじめに:なぜ環境・農学部の小論文は難しいのか
環境学部や農学部の小論文がほかの学部と大きく異なる点は、「知識の深さ」と「視点の広さ」の両方を同時に求められることです。
たとえば「食料問題について論じなさい」という設問が出たとき、多くの受験生は「世界では飢餓が起きている」「日本の食料自給率は低い」という一般論に終始してしまいます。しかし環境・農学部の教授が見たいのは、そこから先の分析です。
- 食料不足はなぜ起きているのか(気候変動・土壌劣化・政治的要因)
- 食料廃棄問題とフードロスの矛盾
- 緑の革命が生態系にもたらした光と影
- 持続可能な農業モデルとして何が有効か
このように、環境・農学部の小論文対策では、課題の「多層的な構造」を把握し、自分なりの立場を論理的に述べる力が不可欠です。翔先生と私が毎年多くの受験生を指導してきた経験から言えば、この「多層的思考」こそが合否を分けています。
核心情報:頻出テーマの本質を理解する
まず、環境・農学部の小論文で繰り返し出題される3大テーマの「核心」を整理しましょう。ここを押さえることが、環境・農学部の小論文対策の出発点です。
① SDGs(持続可能な開発目標)の本質
SDGsは2015年の国連サミットで採択された17の目標です。しかし「SDGsが大切です」と書くだけでは、小論文の評価はゼロに等しい。重要なのは、SDGsの「トレードオフ」と「相互依存」を理解していることです。
たとえば目標2「飢餓をゼロに」と目標15「陸の豊かさも守ろう」は、時に矛盾します。農地を拡大して食料生産量を増やせば、森林が破壊されて生物多様性が失われます。この緊張関係を認識したうえで「では何が最善の選択か」を論じる姿勢が、高評価につながります。
また、SDGsはあくまでも「目標」であり、達成手段が自動的に決まるわけではありません。「SDGsのために○○すべき」という論述は、「なぜその手段が有効か」という根拠なしには説得力を持ちません。
② 食料問題の多面性
食料問題は「量」だけの問題ではありません。「質」「分配」「持続可能性」という三つの軸で考える必要があります。
量の問題:世界人口は2050年に約97億人に達すると予測されており、食料需要は現在の約1.5倍になると言われています。しかし現在でも、生産された食料の約3分の1(約13億トン)がフードロスとして廃棄されています。つまり「量が足りない」のではなく「分配の歪み」が問題の核心です。
質の問題:先進国では「飽食」による肥満・生活習慣病が深刻な一方、途上国では微量栄養素不足(隠れ飢餓)が問題です。カロリーは足りていても、鉄分・ビタミンが不足している状態は、慢性的な健康被害をもたらします。
持続可能性の問題:現代の集約農業は、大量の農薬・化学肥料・水資源に依存しています。土壌の有機物は年々減少し、地下水の枯渇も深刻です。現在の生産方式を維持できる期間には限りがあります。
③ 生態系サービスという概念
「生態系を守ろう」という主張だけでは不十分です。小論文で差をつけるには、「生態系サービス」という概念を使いこなすことが有効です。
生態系サービスとは、生態系が人間社会にもたらす恩恵のことで、主に四つに分類されます。
- 供給サービス:食料・水・木材・医薬品の原料など
- 調整サービス:気候調整・洪水防止・水質浄化・花粉媒介など
- 文化的サービス:景観・精神的充足・観光・教育的価値など
- 基盤サービス:土壌形成・栄養循環・光合成など他サービスの基盤
この枠組みを使うと、「なぜ生態系を守る必要があるのか」を経済的・社会的・科学的に根拠を持って説明できます。ミツバチの減少が農業生産に与える影響、マングローブ林が津波被害を軽減する機能など、具体的な事例と結びつけると論述に説得力が増します。
具体的な方法:高得点小論文の書き方
ステップ1:設問の「問い」を正確に解析する
小論文で最も致命的なミスは、「問いに答えていない」ことです。たとえば「日本の農業が抱える課題と解決策について論じなさい」という設問であれば、「課題」と「解決策」の両方を均等に論じなければなりません。課題だけ詳しく書いて解決策が一行、という答案は減点対象です。
設問を読んだら必ず次の確認をしてください。
- 何について(テーマ)
- 何を(問われていること:原因・課題・解決策・賛否・比較など)
- どのような立場から(自分の意見か、客観的分析か)
ステップ2:「問題提起→分析→主張→根拠→反論への対応→結論」の構成を守る
環境・農学部の小論文対策として最も効果的な構成は以下の通りです。
- 問題提起(導入):テーマの現状と問題の本質を提示する(全体の約15%)
- 現状分析:具体的なデータや事例を使い、問題の多面的な構造を明らかにする(約25%)
- 自分の主張:解決策・立場・提言を明確に述べる(約15%)
- 根拠の提示:主張を支える論拠を複数挙げる(約25%)
- 反論への対応:予想される反論を自ら取り上げ、それに答える(約10%)
- 結論:主張を再確認し、将来への展望を述べる(約10%)
特に「反論への対応(譲歩と反駁)」のパートは、論述の成熟度を示す重要な部分です。「確かに~という側面もある。しかし~」という形で使いましょう。
ステップ3:専門用語を正確に使う
環境・農学部の小論文で評価される答案は、適切な専門用語が使われています。以下の用語は最低限マスターしておきましょう。
- カーボンニュートラル:二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させること
- 生物多様性(バイオダイバーシティ):地球上の生物の多様性。遺伝的・種・生態系の3レベルがある
- フードマイレージ:食料の重量×輸送距離。食料輸送が環境に与える負荷の指標
- アグロエコロジー:生態学的知識を応用した持続可能な農業システム
- プラネタリーバウンダリー:地球が安全に機能できる限界値。9つの境界が設定されている
- フードシステム:食料の生産・加工・流通・消費・廃棄にわたる全体的なシステム
ステップ4:具体的な数値・事例を必ず盛り込む
抽象的な主張は説得力が弱い。以下のような具体的な事実を組み込んでください。
- 日本の食料自給率はカロリーベースで約38%(2023年度、農林水産省)
- 世界の温室効果ガス排出量のうち、農業・食料システムが占める割合は約3分の1
- ミツバチの個体数は過去数十年で大幅に減少しており、世界の食料生産の約70%は花粉媒介動物に依存
- 日本のフードロスは年間約472万トン(2022年度、農林水産省・環境省推計)
- 2023年のCOP28では農業・食料システムの脱炭素化が重要議題として取り上げられた
ステップ5:結論に「自分の学びたいこと」を接続する
環境・農学部の小論文では、結論部分で「だからこそ自分はこの学部でこの問題に取り組みたい」という姿勢を示すと、志望動機と一体化した答案になり、読み手に強い印象を残します。ただし過度な自己アピールは禁物。あくまで論述の延長として自然に書きましょう。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原より:私が長年の指導経験から確信しているのは、「知識があることと、論じられることは別物だ」ということです。SDGsについて詳しい受験生でも、いざ小論文を書かせると「大切です」「取り組むべきです」という感想文になってしまう例を数多く見てきました。
大切なのは「なぜ」を繰り返す習慣です。「食料自給率が低い→なぜ?→農業の担い手不足→なぜ?→農業の収益性の低さ→なぜ?→流通構造の問題」というように、問題の根っこまで掘り下げることで、表面的ではない論述が生まれます。
翔先生より:僕がよく生徒に言うのは「自分の意見に対して最も鋭い反論を自分でしてみよう」ということです。たとえば「有機農業を推進すべきだ」という主張をするなら、「有機農業は生産コストが高く、食料価格が上昇して低所得者が困る」という反論を想定できますか?その反論に答えられて初めて、主張が完成するんです。
また、環境・農学部の小論文対策として、新聞のコラムや農林水産省・環境省のウェブサイトの白書を週に一度読む習慣をつけることを強くお勧めします。生きた情報が論述に厚みをもたらします。
よくある失敗と解決策
失敗①:「SDGsは大切です」で終わる感想文
解決策:SDGsの特定の目標番号(例:目標14「海の豊かさを守ろう」)を取り上げ、「なぜその達成が難しいか」「どのようなトレードオフがあるか」を具体的に論じましょう。感想ではなく分析に徹することが重要です。
失敗②:データを列挙するだけで分析がない
解決策:データは「証拠」です。証拠を出したら必ず「このことは何を意味するか」「この数値が示す問題の本質は何か」という解釈を続けてください。データ→解釈→主張の流れを意識しましょう。
失敗③:解決策が楽観的・抽象的すぎる
解決策:「テクノロジーで解決できる」「国際協力が必要だ」という解決策は抽象的すぎます。具体的にどのテクノロジーが(例:垂直農法・精密農業・代替タンパク質)、どのような形の協力が(例:食料貿易ルールの改定・農業技術の移転)有効かを示しましょう。
失敗④:字数を埋めるために同じ内容を繰り返す
解決策:字数が足りなくなるのは、論点が一つしかないからです。事前に「経済的側面」「環境的側面」「社会的側面」という複数の角度から問題を整理する習慣をつけてください。論点が多ければ、字数は自然と増えます。
失敗⑤:一方的な断言で終わる
解決策:現実の環境・食料問題に「完全な正解」はありません。「○○が唯一の解決策だ」という断言は、読み手に思慮の浅さを印象づけます。「最も有望な選択肢の一つは○○であるが、同時に△△という課題への対応も不可欠だ」という複眼的な結論の方が、学術的誠実さを示せます。
今日からできるアクション
環境・農学部の小論文対策を今日から具体的に始めるために、以下のアクションを実践してください。
アクション①:「食料自給率」でテーマ練習をする(今日中に)
「日本の食料自給率の低さは問題か。あなたの考えを600字で述べなさい」という設問で、今すぐ書いてみましょう。書いたら「問題提起→分析→主張→根拠→反論対応→結論」の6段構成が揃っているか確認します。
アクション②:農林水産省の「食料・農業・農村白書」の概要版を読む(今週中に)
農林水産省のウェブサイトに毎年公開されています。最新の数値・政策・課題が整理されており、小論文の「現状分析」パートに使える情報が豊富です。
アクション③:生態系サービスの4分類を使って身近な例を考える(今週中に)
自分の住む地域の里山・川・海について、供給・調整・文化・基盤の4つのサービスを具体的に列挙してみましょう。これにより、抽象的な概念が身近な現実として定着します。
アクション④:志望校の過去問を3年分分析する(今月中に)
環境・農学部の小論文対策において、志望校の出題傾向の把握は必須です。「資料読み取り型か、テーマ論述型か」「字数は何字か」「どの分野が繰り返し出るか」を分析し、対策を絞り込みましょう。
アクション⑤:書いた小論文を必ず第三者に添削してもらう(継続的に)
自分では気づけない論理の飛躍・説明不足・表現の誤りは、必ず存在します。国語専門塾や学校の先生に定期的に見てもらい、フィードバックを受ける習慣をつけることが、実力向上の最短経路です。
まとめ・日本国語塾トップについて
環境・農学部の小論文対策は、「SDGsに関心がある」「自然が好き」というだけでは乗り越えられません。専門的な知識の裏付け・論理的な構成・具体的な根拠・複眼的な視点——この四つが揃って初めて、高評価の答案が生まれます。
SDGs・食料問題・生態系サービスというテーマは、一見難しそうに見えて、正しい学習法で取り組めば必ず書けるようになります。翔先生と私が指導してきた受験生の多くが、「知識を論述に変える技術」を身につけることで、志望校の合格を勝ち取ってきました。
今日からの一歩を、ぜひ具体的なアクションとして踏み出してください。そのために本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
日本国語塾トップは、数強塾グループ代表・藤原進之介が監修する国語専門塾です。
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