はじめに|その悩み、よく聞きます
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
「返り点の読み順はわかった。レ点は一個戻る、一二三点は数字の順番に読む……でも、日本語に直してみても意味がさっぱりわからない!」
これ、本当によく聞く悩みです。毎年、定期テスト前や入試直前期になると、保護者の方からも「うちの子、返り点の読み方は覚えたと言っているのに、漢文の問題で点が取れなくて困っています」というご相談が届きます。
実はこれ、「返り点を正しく読む」ことと「漢文の意味を取る」ことは、別のスキルであるという根本的な誤解が原因です。返り点の読み順を正確になぞれても、それだけでは意味は取れません。今日は、その「見えない壁」を完全に壊す解説をお届けします。
藤原からの結論|ズバリ答えます
結論をひと言で言います。
「返り点は読む順番を示すだけ。意味を取るには『書き下し文→現代語訳』の2ステップが別途必要です。」
多くの受験生が「返り点通りに読んだ=漢文を読んだ」と思っています。しかし実際には、返り点はあくまでも「この漢字とこの漢字をどの順番で読むか」を指示する記号にすぎません。
意味を取るためには、その後に以下の2つの作業が必要です。
- ① 返り点に従って書き下し文(日本語の語順に整えた文)を作る
- ② 書き下し文の各単語の意味・文法を理解して現代語訳する
この2ステップのどこかが欠けている、あるいは漢文特有の語法・単語の知識が不足しているために「意味が取れない」という状態が生まれています。では、詳しく見ていきましょう。
詳しく解説|なぜそうなのか・どうすればいいのか
① 返り点が示しているのは「語順の入れ替え指示」だけ
まず、返り点の役割を正確に理解しましょう。
漢文(中国語の古典文)は、基本的に主語→述語→目的語という語順で書かれています。これは英語のSVO構造に似ています。ところが日本語は主語→目的語→述語(SOV)の語順です。
たとえば「我読書」という漢文があったとします。
- 中国語の語順:我(私は)→ 読(読む)→ 書(本を)
- 日本語の語順:我(私は)→ 書(本を)→ 読(読む)
この語順のズレを修正するために使う記号が返り点です。「読」と「書」を逆の順に読みなさい、という指示をレ点や一二点で視覚化しているわけです。
つまり、返り点を正確に読めたとしても、それは「語順を日本語に直した」というだけ。各単語の意味も、文法も、まだ解決していません。
② 書き下し文を作れても「意味が取れない」3つの原因
書き下し文まで作れているのに意味がわからない場合、原因は主に次の3つです。
【原因1】漢字の意味を現代日本語で解釈してしまっている
漢文の漢字は、現代日本語とは意味が異なるものが多数あります。代表的な例を見てみましょう。
| 漢字 | 現代日本語の意味 | 漢文での意味 |
|---|---|---|
| 走 | 走る | 逃げる・駆ける |
| 妻 | 妻(結婚相手の女性) | 妻・女性全般(文脈による) |
| 去 | 去る(離れる) | 行く・立ち去る(日本語と近いが、「過去に行く」ではない) |
| 勉 | 勉強する・努力する | 無理にする・しいて行う |
| 愛 | 愛する・好き | 惜しむ・大切にする(恋愛に限らない) |
こうした「意味のズレ」を知らないと、書き下し文を作っても意味が取れません。漢文頻出語彙を100語程度は覚えておく必要があります。
【原因2】漢文特有の句法(文法)を知らない
漢文には日本語にはない独特の表現パターン(句法)があります。この句法を知らないと、返り点通りに読んでも意味が全く取れません。
代表的な句法を確認しましょう。
- 否定形:不・非・無・莫などの位置と意味(「不読書」=書を読まず)
- 疑問形:乎・哉・耶などの末尾助字(「是鳥也乎」=これは鳥であるか)
- 反語形:豈〜乎、何〜哉(「豈可忘乎」=どうして忘れることができようか、いや忘れられない)
- 使役形:使・令・教(「使人読書」=人に書を読ませる)
- 受身形:被・見・為〜所(「被人笑」=人に笑われる)
- 比較形:A不若B・A莫若B(「百聞不如一見」=百聞は一見に如かず)
- 仮定形:若・苟・仮(「若有之」=もしこれがあれば)
- 限定形:唯〜耳・独〜耳(「唯読書耳」=ただ書を読むのみ)
特に反語形は要注意です。「どうして〜か」と疑問に訳すのではなく、「〜できない・〜でない」という強い否定を表します。ここを間違えると意味が180度逆になります。
【原因3】返り点を読むのに必死で、文全体の流れを見失っている
これは特に初学者に多いパターンです。返り点の記号を一つ一つ追うことに集中しすぎて、「この文は誰が誰に何をしているのか」という全体像を把握できていません。
漢文を読むときは、まず主語・述語・目的語(誰が・どうする・何を)を大まかに把握してから、返り点の細かい読み順を確認するという順番が大切です。
③ 具体例で実演します|入試頻出の文で練習
では、実際の入試で出やすい文を使って解き方を実演します。
例文:「学而不思則罔、思而不学則殆」(論語)
ステップ1:返り点を確認して読み順を整理
この文には「而」(しこうして・〜て)「不」(〜ず)「則」(すなわち)「罔」(くらし・ない)「殆」(あやうし)などの重要語があります。
ステップ2:書き下し文を作る
「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆し」
ステップ3:単語の意味を確認して現代語訳する
- 罔=くらし→何も得られない・無駄になる
- 殆=あやうし→危険である・不安定になる
現代語訳:「学んでも考えなければ何も身につかない。考えてばかりで学ばなければ危険である。」
この文は論語の中でも最頻出の一文で、多くの高校入試・大学入試で出題されています。返り点を正しく読むだけでなく、「罔」「殆」という語の意味を知っていて初めて訳せます。
翔先生の実践アドバイス|現場からの声
ここからは、実際に生徒たちと向き合ってきた翔先生からのアドバイスです。
「私が授業で必ず言うのは、『返り点はカーナビのルート案内だ』ということです。カーナビが『次の交差点を右に曲がってください』と教えてくれても、目的地のお店が何屋さんかは教えてくれませんよね。返り点も同じで、読む順番を教えてくれるだけ。そのお店(漢字)が何を意味するかは、自分で覚えていないといけない。」
翔先生が実際に指導している中で気づいたこととして、「返り点の読み方で詰まる生徒」と「意味が取れない生徒」はタイプが違うというポイントがあります。
- 返り点で詰まる生徒:上下点・甲乙点・レ点の複合パターンを練習すれば改善する
- 意味が取れない生徒:句法と語彙の暗記が足りていない。勉強の方向性を変える必要がある
「自分がどちらのタイプかを見極めることが大事です。返り点の読み順は合っているのに意味が取れないなら、それは語彙・句法の問題です。そこをずっと返り点の練習で補おうとしても、絶対に解決しません。」(翔先生)
また翔先生がよく使うテクニックとして、「句法の型を10個先に叩き込む」という方法があります。
「漢文の入試問題に出る句法は、実は10〜15パターンに集約されます。この型を先に覚えてしまえば、知らない単語が混じっていても『ああ、これは使役の文だな』『これは反語形だな』と構造が見えるようになります。構造が見えれば、単語の意味がわからなくても大体の意味は推測できます。」
ケース別|タイプ別の対処法
ケース1:書き下し文は作れるが、訳せない
原因:漢文語彙の知識不足
対処法:
- 漢文頻出語彙100語の暗記リストを用意する(「漢文頻出語彙」でノートを作る)
- 現代語と意味が異なる漢字(異義語)を重点的に覚える
- 教科書の脚注・注釈を必ず読む習慣をつける
ケース2:返り点の複雑なパターンで読み順が混乱する
原因:上下点・甲乙点・レ点複合の理解不足
対処法:
- まずレ点→一二点→上中下点→甲乙点の優先順位を表で整理する
- 複雑な返り点の問題を5〜10問、丁寧に解いて慣れる
- 読む順番を数字で書き込む練習(①②③…と振っていく)を繰り返す
ケース3:句法の種類は知っているが、文中で見つけられない
原因:句法のシグナル語(キーワード漢字)を認識できていない
対処法:
| 句法の種類 | シグナル漢字(見たらすぐ反応) |
|---|---|
| 使役 | 使・令・教・遣 |
| 受身 | 被・見・為〜所・於 |
| 否定 | 不・非・無・莫・勿・未 |
| 二重否定 | 不〜不・無〜不・非〜不 |
| 反語 | 豈・何・安・寧(文末に乎・哉・耶) |
| 比較 | 不若・不如・莫若・莫如 |
| 仮定 | 若・苟・使・仮・設 |
| 限定・累加 | 唯〜耳・不唯〜亦・非唯〜亦 |
このシグナル漢字を見た瞬間に「この句法だ!」と反応できるようになると、返り点を読む前から文の骨格が見えてきます。
ケース4:文章全体の内容・文脈がつかめない
原因:漢文の背景知識(時代・ジャンル・人物)の不足
対処法:
- 入試頻出の漢文ジャンル(儒家・老子・史記・唐詩など)を把握しておく
- 孔子・孟子・荘子・韓非子などの思想の概要を掴んでおく
- 設問の注釈や文章の前書きを最初にしっかり読む(人物・場面の情報が入っている)
今日からできる3ステップ
ここまでの内容を踏まえて、今日からすぐ実践できる行動を3つにまとめます。
ステップ1:「返り点の読み」と「意味の理解」を切り分けて練習する
今日から漢文を勉強するとき、以下の3段階を意識して分けてください。
- 返り点の読み順確認(読む順番を数字で振る)
- 書き下し文の作成(ひらがな交じりの日本語に直す)
- 現代語訳(単語・句法の知識を使って意味を取る)
この3段階のどこでつまずいているかを自己診断することが、最初の一歩です。
ステップ2:句法10パターンを1週間で覚える
上の表にある句法のシグナル漢字を、1日2パターンずつ5日間で覚えましょう。覚え方のコツは、例文と一緒に音読することです。
例:「使人読書」→「人をして書を読ましむ」→「人に本を読ませる」
目で見るだけでなく、声に出して体に覚えさせると定着が格段に速くなります。これは古文・現代文にも共通する、翔先生が強くすすめる学習法です。
ステップ3:語彙ノートを作り、週3回見直す
漢文を読んでいて「意味が取れなかった漢字・単語」を専用のノートに書き留めましょう。
- 左側:漢字・熟語
- 中央:漢文での意味
- 右側:出てきた文・例文
このノートを週3回、5分ずつ見直すだけで、1か月後には語彙力が大きく変わります。返り点の読み方は機械的に練習すれば身につきますが、語彙は繰り返しの接触なしには定着しません。量より頻度が重要です。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回のQ&Aをまとめます。
- 返り点は「語順の入れ替え指示」であり、意味を与えてくれるものではない
- 漢文の意味を取るには「返り点→書き下し文→現代語訳」の3段階が必要
- 意味が取れない原因は「①漢文語彙の不足」「②句法の知識不足」「③文全体の流れを見失っている」の3つ
- 句法のシグナル漢字を覚えれば、返り点の前に文の骨格が見えてくる
- 語彙は「量より頻度」で覚える。語彙ノートを繰り返し見直すことが最短ルート
漢文は、正しい順番で正しい知識を積み上げれば、必ず得点源になります。「返り点は読めるのに意味が取れない」という壁は、多くの受験生が経験する壁ですが、今回の内容を実践すれば必ず突破できます。
もし「自分はどのステップで詰まっているのかわからない」「句法や語彙の効率的な覚え方を直接教えてほしい」という方は、ぜひ日本国語塾トップにご相談ください。一人ひとりのつまずきポイントを丁寧に診断し、最短で得点につながる指導を行っています。
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