数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
今回のテーマは、大学入試現代文において近年ますます出題頻度が高まっている「グローバリズムとナショナリズム」です。共通テストから難関私大・国公立二次試験まで幅広く登場するこのテーマを、読み解くための知識・語彙・論理構造をまるごと解説します。「なんとなく難しそう」で終わらせず、得点源に変えていきましょう!
はじめに|なぜ「グローバリズムとナショナリズム」が頻出なのか
現代文の入試問題は、現代社会が抱える「問い」を文章の素材として取り上げます。なかでも「グローバリズムとナショナリズム」は、21世紀の世界が正面から向き合わざるを得ない根本的な対立軸です。
EUの成立と揺らぎ、Brexit(英国のEU離脱)、移民・難民問題、トランプ現象、さらにはコロナ禍での国境封鎖——これらはすべて、「国境や国家とはいったい何か」「人・モノ・文化が自由に行き来する世界は本当に豊かさをもたらすのか」という問いを社会に突きつけてきました。
こうした社会的リアリティが背景にあるからこそ、入試出題者は「グローバリズムとナショナリズム」をテーマにした評論文を好んで選びます。受験生のみなさんがこのテーマを深く理解しておくことは、文章読解力のアップだけでなく、小論文・面接・総合型選抜にも直結する重要な学習です。
【翔先生より】「このテーマは『知識ゼロで読む』と一気に難しく感じます。でも、核心となる概念を5〜6個押さえておくだけで、文章の骨格が見えるようになります。今日はその武器を一緒に揃えましょう!」
核心情報|グローバリズムとナショナリズムを理解する6つの基礎概念
まず、このテーマの文章に必ず登場する重要概念を整理します。これらをしっかり頭に入れておくことが、現代文読解の土台になります。
① グローバリズム(globalism)とは
国境を越えて、経済・情報・文化・人の流れを自由化・統合しようとする思想・運動・体制のことです。市場原理を重視し、「国家の壁」を低くすることで効率・豊かさを追求します。多国籍企業によるビジネス展開、インターネットによる情報の瞬時共有、留学・移住の活発化などがその具体的な現れです。
② ナショナリズム(nationalism)とは
「国民」「民族」「国家」への帰属意識・連帯意識を基盤にした思想・運動です。単純に「愛国主義=危険な排外主義」と捉えるのは誤り。本来は、共通の言語・文化・歴史を持つ人々が「自分たちの共同体を守り、自己決定する」という権利の主張でもあります。入試文章では、この複雑さ・多義性が問われます。
③ 国民国家(nation-state)
近代ヨーロッパで生まれた「国民(nation)=国家(state)」という枠組みです。「同じ言語・文化・歴史を共有する人々が、一つの主権国家を形成する」という近代の基本原理ですが、現実には多民族・多文化が混在しており、この枠組みは常に「虚構」「構築物」という批判にさらされています。
④ 想像の共同体(imagined community)
社会学者ベネディクト・アンダーソンの概念。国民は「直接会ったことのない人々と、心の中で同じ仲間だと想像することで形成される共同体」だと論じました。国旗・国歌・教科書・新聞などのメディアが「国民意識」を作り出す装置として機能します。入試頻出の概念です。
⑤ 境界(ボーダー)の問題
国境という「線」は、誰がどこに引くか、誰が越えられて誰が越えられないかをめぐって、常に政治的・倫理的な争点になります。グローバリズムは資本・情報の国境を消しながら、一方で人(特に貧しい国の人々)の移動には厳しい壁を設けるという矛盾を抱えています。
⑥ 文化的均質化 vs. 文化的多様性
グローバリズムが進むと、世界中でマクドナルドが食べられ、英語が共通語になり、文化が均質化するという批判があります。一方で、ローカルな文化・言語・アイデンティティを守ろうとするナショナリズム・地域主義の動きが対抗軸として生まれます。
具体的な方法|入試文章の読み方・解き方
ステップ1:対立軸を図式化して読む
「グローバリズムとナショナリズム」をテーマにした評論文は、必ずといっていいほど「Aという立場」vs「Bという立場」の対立構造を持っています。読み始めたらすぐに、次の問いを意識してください。
- 筆者はグローバリズムを肯定しているか、批判しているか?
- ナショナリズムをどのように評価しているか(単純な否定?複雑な再評価?)
- その対立を超える「第三の視点」を筆者は提示しているか?
多くの入試文章では、筆者は「単純なグローバリズム礼賛」にも「単純なナショナリズム擁護」にも与せず、その両方の問題点を指摘しながら、新たな視座を提示しようとします。この「ひっくり返し」の構造を素早く見抜くことが読解の核心です。
【具体例】「グローバル化は確かに経済的繁栄をもたらした。しかしそれは、誰かの文化的アイデンティティを犠牲にすることで成り立っていたのではないか」——こうした「逆接の展開」が出てきたら、そこが筆者の主張の核心に近い部分です。傍線が引かれやすい箇所でもあります。
ステップ2:キーワードの「定義」を本文から探す
入試文章では、筆者が「グローバリズム」「ナショナリズム」「国家」「境界」などの言葉を独自に定義・再定義して使っていることがあります。辞書的な意味で固定せず、「この文章でこの言葉はどう使われているか」を常に本文に戻って確認する習慣が必要です。
特に注意すべきパターン:
- 「〜とは、ここでは〜を指す」という明示的定義
- 「いわゆる〜ではなく、〜という意味での〜」という再定義
- カギかっこ(「」)付きで使われている語(筆者が通常の意味から距離を置いているサイン)
ステップ3:具体例と抽象論の往復を意識する
評論文は「抽象的な主張→具体例による説明→再度抽象的な主張で締める」という構造を繰り返します。「グローバリズムとナショナリズム」テーマの文章でよく登場する具体例には次のようなものがあります。
- Brexit:EUという超国家的枠組みへの反発として起きたイギリスの離脱は、グローバリズムへの民衆の「ノー」の象徴として論じられる
- 移民・難民問題:資本は自由に動けるのに、なぜ人間は動けないのかという矛盾の象徴
- 英語の覇権:グローバル標準語としての英語が他言語・文化を周縁化するという文化帝国主義批判
- 先住民族の権利運動:国民国家の「均質化」に対してローカルなアイデンティティを主張する動き
問題で「具体例として最も適切なものを選べ」「傍線部を説明せよ」と問われた際、これらの知識があると選択肢の判断や記述の肉付けに大きく役立ちます。
ステップ4:記述・論述問題への対応
国公立二次試験や難関私大では、100〜200字程度の記述説明が求められます。このテーマの記述では、次の型が有効です。
【記述の型】
「〜という問題(背景)を踏まえ、筆者は〜と定義する〇〇が、〜という点で△△と対立しており、その結果〜という問題が生じると論じている。」
特に「グローバリズムとナショナリズムの関係」を問う設問では、単純な二項対立で終わらせず、筆者が両者をどのような関係として捉えているか(補完関係・矛盾関係・相互依存関係など)を本文の言葉を使いながら説明することがポイントです。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原進之介より:「テーマ学習は現代文の最強の武器」
受験生を長年指導してきて確信していることがあります。それは、現代文のテーマ知識は「読む速さ」と「正答率」の両方を同時に上げるという事実です。
「グローバリズムとナショナリズム」というテーマを全く知らない状態で文章を読むのと、今日お伝えしたような基礎概念を頭に入れて読むのでは、文章のスピード感・理解度が全然違います。初めて読む文章でも「ああ、この筆者はグローバリズムの経済的恩恵を認めつつ、文化的均質化の問題を批判したいんだな」とすぐに見当がつく。この「見当をつける力」こそが、現代文の本当の実力です。
テーマ学習は「カンニングペーパー」ではなく、文章と対話するための「共通言語」を身につける作業です。ぜひ積極的に取り組んでください。
翔先生より:「評論文の『問い』を先に探せ」
「グローバリズムとナショナリズム」系の文章を読むとき、私が生徒にいつもアドバイスするのは「筆者が何を問い直そうとしているのかを最初に探す」ということです。
多くの場合、文章の冒頭や第一段落に「問い」が潜んでいます。「国境とはいったい誰のためにあるのか」「私たちが『国民』であるとはどういうことか」——こうした問いを最初に捕まえると、後の論述が「その問いへの答え」として整理されて見えてきます。
また、このテーマでは「肯定→否定」だけでなく「否定→再肯定(より深いレベルでの肯定)」という構造も頻出です。たとえば「ナショナリズムは危険だという常識を一度否定した上で、しかし〇〇という意味でのナショナリズムには△△という価値がある」という展開。この「再肯定」のパターンを見逃さないようにしましょう。
よくある失敗と解決策
失敗①:自分の政治的意見を答えに混ぜてしまう
「グローバリズムは良いことだと思う」「ナショナリズムは危険だ」——受験生の中には、自分の意見や社会科の知識を現代文の解答に持ち込んでしまう人がいます。現代文はあくまで「筆者の主張を読み取る」科目です。自分の考えは横に置き、徹底的に「本文根拠主義」を貫いてください。
解決策:解答を書いたら必ず「この答えは本文のどこに根拠があるか」を確認する習慣をつける。
失敗②:対立軸を単純化しすぎる
「グローバリズム=悪、ナショナリズム=善」あるいはその逆という単純な図式で文章を読んでしまうと、筆者の微妙なニュアンスを読み落とします。特に難関大の文章ほど、両者の関係は複雑に論じられています。
解決策:「逆接の接続詞(しかし・だが・ところが・一方で)」の前後を特に丁寧に読む。筆者の立場の揺れや転換点を追う。
失敗③:カタカナ語・専門用語で止まってしまう
「ポストコロニアリズム」「コスモポリタニズム」「トランスナショナル」——こういった専門用語で読むスピードが落ち、文章の流れを見失う受験生が多くいます。
解決策:専門用語が出てきたら、まず前後の文脈から「この文章での意味」を推測する。完璧に定義を知らなくても、文脈で意味を補いながら読む練習を積む。もちろん、頻出語句は事前にインプットしておくのがベスト。
失敗④:具体例の段落で力を使い果たす
Brexitや移民問題などの具体例が登場すると、そこに意識が集中して「で、筆者の主張は何だったか」を見失う受験生がいます。具体例はあくまで主張を支えるための「素材」です。
解決策:具体例の段落を読むときは「この例は何を説明するために使われているのか」という問いを常に持ちながら読む。具体例の後に来る「まとめ・結論の一文」を必ず探す。
今日からできるアクション
知識を学んだだけでは得点は上がりません。今日学んだことを実際の読解力に変えるための、具体的な行動プランを提示します。
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【今日】キーワードノートを作る
この記事で登場した6つの基礎概念(グローバリズム・ナショナリズム・国民国家・想像の共同体・境界・文化的均質化)を、自分の言葉でノートにまとめる。できれば例文も一つずつ書いてみる。 -
【今週】関連評論を1本読む
水村美苗『日本語が亡びるとき』、姜尚中『ナショナリズム』、内田樹『日本辺境論』などは、このテーマを扱った入試頻出著者の著作です。全部読まなくていい。目次・まえがき・第一章だけでも触れておくと、文章を読む際の「地図」になります。 -
【今週】過去問を1題解く
「グローバリズム」「国民国家」「ナショナリズム」をキーワードに過去問を探してみましょう。東大・一橋・早稲田・慶應・京大など難関大の過去問には良質な素材が揃っています。今日学んだ「対立軸を図式化する」「逆接に注目する」「具体例と抽象の往復を意識する」の3点を実践しながら解いてみてください。 -
【継続】新聞・ニュースのテーマ読みを習慣化
移民問題・多文化共生・SDGs・国際機関の動向などのニュースを、「グローバリズムとナショナリズムの対立軸」で解釈する練習をする。これが長期的な現代文力の底上げになります。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回は現代文頻出テーマ「グローバリズムとナショナリズム」について、核心概念の整理から文章の読み方・解き方・よくある失敗まで徹底解説しました。
最後にポイントを整理します。
- ✅ グローバリズムとナショナリズムは「単純な善悪対立」ではなく、複雑な相互関係として論じられる
- ✅ 国民国家・想像の共同体・境界などの基礎概念を事前にインプットしておくことが読解を加速させる
- ✅ 入試文章では「逆接の展開」「第三の視点の提示」に筆者の主張の核心が宿る
- ✅ 記述解答は本文根拠主義を徹底し、自分の意見を混ぜない
- ✅ 具体例(Brexit・移民問題・英語覇権など)の知識は選択肢判断・記述の肉付けに直結する
「グローバリズムとナショナリズム」というテーマは、世界と日本が今まさに直面している問いです。このテーマを深く理解することは、受験を超えた知的財産になります。ぜひ今日から取り組んでみてください!
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