はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
「古文の主語判定がいつも間違えます。確実に当てるコツはありますか?」
これは本当によく届く質問です。模試の解説授業でも、個別指導の場でも、保護者面談でも、一年を通じて途切れることなく出てくるテーマです。中学生から難関大を目指す高校3年生まで、学年を問わず多くの受験生がこの問題で苦しんでいます。
先日も、横浜校に通う高校2年生のAさんが、こんなことを言っていました。
「源氏物語の問題を解いたんですけど、光源氏がしたのか、それとも別の人がしたのか、全然わかなくて……。勘で書いたら全部外れました」
Aさんは英語や数学は得意で、現代文の読解もある程度できる子です。それでも古文の主語判定だけはどうしても引っかかる。このパターン、実は非常に多いんですね。
古文の主語判定は、単に「慣れ」や「勘」の問題ではありません。正しい手順とルールを知っていれば、確実に精度を上げることができます。今回はその具体的な方法を、惜しみなくお伝えします。
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結論から言います|藤原の答え
ズバリ結論を言います。
古文の主語判定を確実に当てるには、「敬語」「接続助詞」「文脈の人物関係」の3つを組み合わせて読む習慣をつけることが全てです。
「コツ」という言葉を使うと、なんとなく一発で解決できる魔法のテクニックを期待してしまいがちですが、残念ながらそういうものではありません。ただし、この3つを正しく使いこなせれば、主語判定の正答率は劇的に上がります。
それぞれについて深く掘り下げる前に、まず根本的な話をしておきます。
古文で主語判定が難しい最大の理由は、日本語が主語を省略する言語だからです。現代の日本語でも「今日、映画見てきた。面白かった。帰りにラーメン食べた」という文に主語はありませんよね。古文でも全く同じことが起きており、むしろ現代文以上に主語が省略されます。だから「主語を補いながら読む」技術が必要になるわけです。
そして、その技術の核心が「敬語」「接続助詞」「文脈の人物関係」の三本柱なのです。
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詳しく解説|なぜそうなのか
① 敬語で主語を絞る|これが最強の武器
古文における主語判定のテクニックの中で、最も確実性が高いのが敬語の利用です。
古文の敬語には大きく3種類あります。
- 尊敬語:動作をする人(主語)を高める。つまり、尊敬語の動詞の主語は「偉い人」になる。
- 謙譲語:動作を受ける人(対象)を高める。動作をしているのは「目下の人・語り手」になる。
- 丁寧語:語り手が聞き手を丁重に扱う。主語の特定よりも文体の判断に使う。
たとえば「宮、宮中へおはします」という文では、「おはします」は尊敬語ですから、主語は身分の高い「宮(みや)」です。これは明確に判断できます。
一方、「中将、大臣に申し上ぐ」という文では、「申し上ぐ」は謙譲語ですから、動作をしているのは「中将」、動作を受けているのは「大臣」だとわかります。
さらに一歩進んで、二方向の敬語(二重敬語)にも注意が必要です。「帝に奏したてまつる」という場合、「奏す」は天皇に対する謙譲語、「たてまつる」も謙譲語が重なっていることから、主語は非常に身分が低い人物であり、動作の対象は最高位の天皇である、という判断ができます。
敬語の種類と代表的な語彙をしっかり覚えることが、主語判定精度を上げる第一歩です。
② 接続助詞で主語の「変化」を読む
次に重要なのが接続助詞による主語判定です。これは多くの参考書でも触れられていますが、実際に使いこなせている受験生は意外と少ない。
特に重要なのが以下の2つです。
「て・して・つつ」→ 主語が変わらない(同一主語)
例:「男、走りて、逃げにけり」→「走り」も「逃げた」も同じ「男」が主語。
「ば・が・に・を(逆接・対比)」→ 主語が変わることが多い(主語交代)
例:「姫君の泣きたまへば、乳母おどろきて参りぬ」→「泣いた」のは姫君、「おどろいて参った」のは乳母。
ただし、これはあくまでも「傾向」であって「絶対ルール」ではありません。たとえば「〜が」は順接の確定条件として使われることもあり、その場合は主語が変わらないケースもある。ここが受験生のつまずきポイントになります。
だからこそ、接続助詞だけで判断を完結させようとしてはいけません。あくまでも「手がかりのひとつ」として使い、敬語や文脈と組み合わせて総合的に判断することが大切です。
翔先生はこれを授業でよくこう表現しています。「接続助詞は信号機みたいなもので、青信号(て・して・つつ)は同じ主語が続く、黄信号(が・ば・に・を)は主語が変わるかもしれないから確認しよう、という合図として使う感じ」。この表現、生徒にもとても好評です。
③ 文脈の人物関係を事前に把握する
敬語も接続助詞も、「そもそもこの文章に誰が登場しているか」がわかっていないと機能しません。
古文を読む際は、最初の数行で必ず「登場人物の整理」をしてください。具体的には、
- 誰が主人公か
- 主人公と他の登場人物の関係(親子、主従、恋愛関係など)
- 身分の上下(どちらが偉いか)
この3点を把握した上で読み進めることで、敬語の向きや接続助詞の判断が格段にしやすくなります。
試験でも、問題文の前に人物紹介の注が付いていることが多いですよね。あれを「読み飛ばしてOK」と思っている受験生が非常に多いのですが、むしろ注は宝の地図です。本文を読む前に必ず確認してください。
④ 「係り結び」と「和歌の前後」も見落とさない
少し発展的な話になりますが、主語判定に関連して見落としがちなポイントが2つあります。
ひとつめは係り結び。「こそ〜已然形」「ぞ・なむ・や・か〜連体形」という係り結びが文中にある場合、その文の強調・疑問の焦点は係助詞の近くにあることが多く、主語もそこに連動しています。流し読みすると主語を取り違えやすいので注意が必要です。
ふたつめは和歌が挿入される前後。物語文では会話の中に和歌が詠まれることが多く、その前後で主語が誰かがわかる場合があります。「〜と詠みたまふ」なら尊敬語から主語が判断できますし、返歌がある場合はその相手が次の主語になります。和歌の場面は得点に直結する設問も多いので、ここで主語をしっかり確定させる習慣をつけておきましょう。
⑤ 繰り返し出てくる人物は「視点キャラ」として意識する
これは私が長年の指導の中で気づいたオリジナルの視点なのですが、古文の物語文には「視点キャラ」が存在します。
物語の語りが誰の視点を中心に進んでいるか、つまり最も多く主語になっている人物を意識してください。源氏物語なら光源氏、竹取物語なら翁(おじいさん)や姫、伊勢物語なら「男」。この「視点キャラ」が省略された主語の正体であることが非常に多い。
主語が省略されていて誰かわからないとき、まず「視点キャラではないか?」と疑ってみる。これだけで正答率がぐっと上がります。
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翔先生の補足・現場からの声
藤原先生の解説を踏まえて、私・翔からも現場の指導で気づいていることをお伝えします。
「敬語を覚えているのに使えない」問題について
意外と多いのが、「尊敬語・謙譲語はわかる」と言っているのに、いざ問題になると主語を間違える生徒さんです。これはなぜかというと、敬語の「向き」を意識していないからです。
尊敬語は「その動作をする人を高める」語です。つまり主語が偉い人になる。謙譲語は「その動作を受ける人を高める」語です。つまり動作をしている人(主語)は、偉くない人になる。この向きを体に染み込ませてください。
授業でよくやる練習が、「敬語の矢印ゲーム」です。文中の敬語語彙を丸で囲んで、「誰から誰への敬意か」を矢印で書いていく。最初は時間がかかりますが、10文くらいこれをやると感覚がつかめてきます。
「ば・が・に・を」の後に必ず一瞬止まる習慣を
前橋校で指導していたBくん(高校3年生、MARCH志望)は、模試で古文の主語判定問題を毎回半分以上落としていました。一緒に解答を見直したところ、「ば・が・に・を」の後でなんとなくそのまま同じ主語で読み続けているパターンが多かった。そこで「接続助詞の後は必ず0.5秒止まって『主語変わった?』と自問するクセをつけよう」と伝えたところ、次の模試で古文の点数が12点アップしました。
シンプルですが、この「一瞬の自問自答」は本当に効きます。
「注を読まない」問題について
藤原先生も触れていましたが、これは本当に多い失敗です。私が担当する生徒たちの答案を見ていると、注に「〇〇は中納言の娘のこと」と書いてあるのに、本文で全く別の人物と混同しているケースが頻繁にあります。
試験本番では「注を読む→人物を整理する→本文を読む」の順番を徹底してください。この手順だけで、主語を間違えるリスクが大幅に減ります。
「古文は感覚で読む」という誤解を捨てる
「古文って結局慣れじゃないですか?」という言葉、毎年必ず誰かから聞きます。確かに慣れは大切ですが、正しい手順なしに読む量を増やしても効果は限定的です。誤ったまま慣れても、誤ったまま速く読めるようになるだけ。
まず「敬語で主語を絞る→接続助詞で主語の変化を確認する→文脈・人物関係を照合する」という手順を意識的に踏む訓練をして、それが無意識にできるようになって初めて「慣れ」が活きてきます。
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こんな場合はどうする?|ケース別アドバイス
ケース①:敬語が全然わからない場合
まず基本語彙の暗記から始めましょう。尊敬語の代表として「おはす・たまふ・のたまふ・おぼす・ご覧じる」、謙譲語の代表として「申す・奏す・啓す・参る・たてまつる・うけたまはる」を優先的に覚えてください。
これらをカード化して毎日見る、単語帳に書いて持ち歩くなど、繰り返し接触する環境を作ることが大切です。最初は10語だけでも構いません。まず使える敬語を増やすことが先決です。
ケース②:人物が多くて誰が誰かわからなくなる場合
「人物相関図」を本文の余白に書きながら読む練習をしましょう。丸の中に人物名を書いて、矢印や線で関係性を示す。これを本番でも使えるよう、練習段階から習慣化しておきます。
特に源氏物語や大鏡のような登場人物の多い作品を扱う学校(例:東大・京大・早稲田・青山学院など)を志望している人は必須のテクニックです。
ケース③:単語・文法は覚えているのに点が取れない場合
このパターンの多くは「知識はあるが統合できていない」状態です。解いた後の復習を「主語を全部確認する」という観点でやり直してみてください。本文中の全動詞に対して「誰がしたのか」を書き込む作業をしてみる。これを10題やると、どこで主語を取り違えているかのクセが見えてきます。
ケース④:試験中に時間が足りなくなる場合
主語判定に時間がかかりすぎているなら、「設問に関係ある部分だけ丁寧に確認する」戦略も有効です。全文完璧に主語を確定しようとするのではなく、設問の傍線部前後だけを集中的に分析する。この取捨選択の練習も実力向上には不可欠です。
ケース⑤:長文になると途中から主語がわからなくなる場合
これは「直近の主語を忘れてしまう」ことが原因の場合が多いです。段落ごと・場面ごとに余白へ「今の主語:〇〇」とメモする習慣をつけましょう。本番でも余白に書いて構いません。試験は「何も書かずに頭の中だけで解く」ものではありませんから、積極的にメモを活用してください。
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すぐできる!主語判定トレーニング3ステップ
最後に、今日から実践できるトレーニングをまとめておきます。
ステップ1:敬語語彙10語マスター(1週間)
尊敬語5語・謙譲語5語を毎日確認。語義だけでなく「誰を高めるか(主語か対象か)」もセットで覚える。
ステップ2:接続助詞チェック音読(2週間)
教科書や問題集の古文を音読しながら、「て・して・つつ」の後は同じ主語、「ば・が・に・を」の後は「変わる?」と声に出して自問する習慣をつける。
ステップ3:主語書き込み復習(継続)
解いた問題の本文に戻り、全動詞の主語を鉛筆で書き込んでいく。解説の訳と照合して、どこで間違えたかを分析する。
この3ステップを1〜2ヶ月継続すれば、古文の主語判定の精度は確実に上がります。地味に見えますが、これが最短ルートです。
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まとめ・日本国語塾トップのご紹介
今回は「古文の主語判定がいつも間違える」というお悩みに対して、藤原と翔先生で徹底的に解説しました。
まとめると、古文の主語判定を確実に当てるコツは以下の3本柱です。
- 敬語(尊敬語・謙譲語)で主語を絞る
- 接続助詞で主語の変化を読む
- 文脈と人物関係を事前に把握する
そしてこれらは個別に使うのではなく、常に組み合わせて総合的に判断することが大切です。古文の主語判定は、正しい手順を知れば必ず上達します。諦めずに取り組んでください。
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