数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
今回は、近年の大学入試現代文で頻出中の頻出テーマ、「グローバリズムとナショナリズム」を完全攻略します。センター試験時代から引き続き共通テスト、そして難関私大・国公立二次試験においても繰り返し出題されるこのテーマ。「なんとなく意味はわかるけど、問題になると解けない……」という受験生が非常に多いです。
この記事を読めば、グローバリズムとナショナリズムの対立構造・背景・筆者の主張パターンをしっかり把握でき、初見の評論文でも正確に読み解けるようになります。受験生・保護者の方はぜひ最後までお読みください。
はじめに:なぜ「グローバリズムとナショナリズム」が頻出なのか
現代文の評論文は、「現代社会の問題意識」を反映した文章が選ばれます。グローバリズムとナショナリズムというテーマは、1990年代以降の冷戦終結・IT革命・経済のボーダーレス化によって急浮上し、2010年代以降はブレグジット(イギリスのEU離脱)やトランプ政権の登場などによって、ますます現実的な問いとして世界中で議論されるようになりました。
日本の大学入試でも、内田樹・柄谷行人・西谷修・鷲田清一・大澤真幸といった論者の文章が繰り返し出題されており、これらの著者はほぼ例外なく「グローバリズムとナショナリズム」の緊張関係を論じています。
翔先生からひと言:
「このテーマは『どちらが正しいか』という二択ではなく、両者の矛盾・葛藤の中に現代社会の本質がある、という視点で出題されることがほとんどです。だから『グローバリズム=悪、ナショナリズム=善(またはその逆)』という単純な読み方は危険です。」
核心情報:グローバリズムとナショナリズムの基本構造
グローバリズムとは何か
グローバリズム(globalism)とは、国境・民族・文化の違いを超えて、人・モノ・情報・資本が自由に行き来する世界を目指す考え方・動きのことです。経済的には自由貿易・多国籍企業の拡大として現れ、文化的には「世界標準(グローバルスタンダード)」への収斂として現れます。
評論文では以下のキーワードと一緒に登場することが多いです:
- ボーダーレス化・脱領域化(deterritorialization)
- 新自由主義・市場原理主義
- 均質化・標準化・同質化
- 帝国・覇権(アメリカニズム)
- コスモポリタニズム(世界市民主義)
ナショナリズムとは何か
ナショナリズム(nationalism)とは、国民・民族・国家への帰属意識を重視し、その独自性・主権・文化的同一性を守ろうとする考え方・運動のことです。グローバリズムへの反動として再浮上することが多く、「自国第一主義」「排外主義」と結びつく危険性も論じられます。
評論文では以下のキーワードと一緒に登場します:
- 国民国家(ネーション・ステート)
- アイデンティティ・帰属意識
- 境界線(ボーダー)・領土・主権
- 排他性・他者の排除
- エスニシティ・民族的純粋性
「境界と国家」という問いの核心
このテーマで最も重要な概念が「境界(ボーダー)」です。国家とは何か、と問うとき、多くの論者は「境界線を引く行為そのもの」に注目します。国境とは物理的な線引きであると同時に、「誰が内側で、誰が外側か」を決める政治的・文化的・象徴的な装置でもあります。
グローバリズムは「境界を消そうとする力」、ナショナリズムは「境界を強化しようとする力」と捉えると、両者の対立が鮮明になります。現代の評論文は、この二つの力が単純な対立ではなく、複雑に絡み合っていることを問題にするのです。
具体例を挙げましょう。EUは「国境を越えた統合」というグローバリズムの理念で作られましたが、域外からの移民・難民に対しては厳格な「外との境界」を維持しています。つまり「内なるボーダーレス化」と「外へのボーダー強化」が同時進行しているわけです。これはまさに、評論文が問いかける矛盾の典型例です。
具体的な方法:グローバリズムとナショナリズムの評論文を読み解く技術
①対立軸を最初に確認する
このテーマの評論文を読むとき、まず「筆者がどちらの立場に批判的か」を確認しましょう。多くの場合、日本の評論家はグローバリズムの「均質化・覇権性」を批判し、かといってナショナリズムの「排他性・暴力性」も否定します。つまりどちらにも一定の批判的距離を置きながら、第三の視点(多様性・他者性・共生)を模索するというのが典型的な論調です。
読み始めたら、次の問いを意識してください:
- 筆者はグローバリズムのどの側面を問題視しているか?
- 筆者はナショナリズムをどう評価しているか(全否定か、部分肯定か)?
- 筆者が最終的に提案・模索している「第三の道」は何か?
②頻出論点パターンを覚える
このテーマには、入試で繰り返し登場する論点パターンがあります。以下の5つを押さえておきましょう。
パターン1:「均質化への抵抗」論
グローバリズムが進むと、世界中の文化がアメリカナイズ・均質化される。これに対して地域固有の文化・言語・生活様式を守ることの意義を説く論調。
パターン2:「想像の共同体」論
ベネディクト・アンダーソンの議論を踏まえ、「国民」とは歴史的・政治的に「想像」され「構築」されたものだという論調。ナショナリズムを相対化する議論の基盤になります。
パターン3:「他者との共存」論
グローバリズムによって異質な他者と隣り合わせになった現代社会において、「他者を排除せず、しかし同化もせずに共存する」ことの難しさと可能性を論じる。
パターン4:「難民・移民問題」から見る国家論
国籍を持たない人々・難民の存在が、国民国家の矛盾を可視化するという議論。「人権は普遍的なのに、それを保障するのは国家である」というパラドックスが核心。
パターン5:「帝国vs.国家」論
ネグリ&ハートの『帝国』的な議論を踏まえ、グローバリズムは単なる「国境の消滅」ではなく、新しい形の権力(帝国的支配)の拡大だという視点。
③筆者の「問い直し」に注目する
このテーマの評論文では、筆者が常識的な概念を「問い直す」構造が頻出です。たとえば:
- 「国家とは本当に自然な存在なのか?」→国民国家の歴史的構築性を示す
- 「グローバリズムは本当に自由をもたらすか?」→格差拡大・文化的支配を示す
- 「ナショナリズムは必ず危険なのか?」→弱者の抵抗運動としての側面を示す
このような「問い直し」の構造を読み取ることが、記述・論述問題の解答作成に直結します。
④キーワードの定義を本文中で確認する
グローバリズムとナショナリズムの評論文では、筆者独自の定義でキーワードが使われることが多いです。たとえば「帝国」「共同体」「他者」「同一性」といった語は、日常語と異なる意味で使われる場合があります。問題を解く際は「この文章においてこの語はどう定義されているか」を本文から必ず確認しましょう。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原進之介からのアドバイス
私が受験生に強調したいのは、「背景知識は武器だが、諸刃の剣でもある」ということです。グローバリズムとナショナリズムについて予備知識があると、「あ、これはあの論者の議論だな」とすぐわかる。しかし注意してほしいのは、あくまでも解答の根拠は本文にあるということです。
知識があると、本文ではなく自分の知識で答えてしまう「知識先行ミス」が起きやすい。背景知識はあくまで「本文を速く・深く読むための補助線」として使い、答えは必ず本文の言葉・論理から導いてください。
翔先生からのアドバイス
私が授業でよく使うのは「筆者の地図を描く」という方法です。読みながら、余白に次のような簡単な図を描きます:
グローバリズム(均質化・市場原理)←→ ナショナリズム(境界・排除)
↓ 筆者の視点
「第三の道」(多様性・他者との共生・etc.)
このシンプルな図を描くだけで、論文全体の構造が一目瞭然になります。特に記述問題で「筆者の主張を踏まえて論じなさい」というタイプの問題に非常に有効です。ぜひ試してみてください。
また、このテーマの文章は抽象度が高いので、具体例が出てきたときに「これは何の具体例か」を必ずメモすることをおすすめします。難民問題が出てきたら「これはパターン4の議論だな」と紐づけると、論旨を見失わずに読めます。
よくある失敗と解決策
失敗①「グローバリズム=正しい・進歩的」と思い込む
失敗内容:グローバリズムを「現代の常識・正しい方向」として無批判に受け入れ、筆者がグローバリズムを批判していても「え、なぜ批判するの?」とついていけなくなる。
解決策:グローバリズムは「均質化・格差拡大・文化的覇権主義」という側面を持つ、という視点を事前に持っておく。「進歩=善」という価値観を一旦カッコに入れて読む訓練をしましょう。
失敗②「ナショナリズム=危険・悪」と決めつける
失敗内容:ナショナリズムをすぐ「排他主義・ファシズム」と直結させてしまい、筆者がナショナリズムの肯定的側面を論じている場面で誤読する。
解決策:ナショナリズムには「文化的アイデンティティの保護」「グローバル経済の均質化への抵抗」「弱小国・少数民族の自決運動」という肯定的側面もある、と知っておく。
失敗③抽象的な議論に引きずられて具体例を読み飛ばす
失敗内容:抽象的な議論が続く中で、具体例(難民問題・EU・特定の国の政策など)を「具体的な話だから読み飛ばしていい」と判断してしまう。
解決策:評論文の具体例は「抽象論の証拠・説明」として必ず機能しています。具体例が出てきたら「これは何を示すための例か」を必ず確認する習慣をつけましょう。
失敗④記述問題で「自分の意見」を書いてしまう
失敗内容:「グローバリズムとナショナリズムについて論じなさい」という問いに対し、自分の政治的意見を書いてしまう。
解決策:現代文の記述問題は「筆者の論理に基づいて答える」のが原則です。「私はグローバリズムが大切だと思う」ではなく、「筆者によれば〜であり、それゆえ〜という結論が導かれる」という形で答えてください。
今日からできるアクション
グローバリズムとナショナリズムのテーマを今日から攻略するために、以下の5ステップを実践してください。
-
用語カードを作る(今日中)
「グローバリズム」「ナショナリズム」「国民国家」「ボーダー(境界)」「コスモポリタニズム」「想像の共同体」の6語について、それぞれ3行程度の定義カードを作りましょう。 -
頻出論者の名前と主張を確認する(今週中)
内田樹・大澤真幸・柄谷行人・西谷修の名前と、それぞれの大まかな主張傾向を調べておきましょう。過去問でこれらの著者の文章が出たとき、素早く論旨を掴めるようになります。 -
過去問を1題解く(今週中)
センター試験・共通テスト・志望大学の過去問から、このテーマの評論文を1題選んで解いてみましょう。解いた後は「筆者の地図」を描いて論旨を整理する練習をしてください。 -
ニュースと結びつける習慣をつける(継続)
移民問題・難民問題・自国第一主義の動き・多文化共生などのニュースを見たとき、「これはグローバリズムとナショナリズムのどの論点に関係するか」を考える習慣をつけましょう。背景知識が自然に蓄積されます。 -
記述練習を1問やる(今週中)
「グローバリズムが進む現代においてナショナリズムが台頭する理由を、本文の論旨に沿って100字で説明しなさい」という形式の問題を自分で作り、答えを書いてみましょう。自問自答練習は記述力強化に非常に有効です。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回は、現代文頻出テーマ「グローバリズムとナショナリズム」を完全攻略するための解説をお届けしました。ポイントをまとめます。
- グローバリズムとナショナリズムは「均質化の力」と「境界を守る力」の対立として捉える
- 評論文の筆者は多くの場合、どちらにも批判的距離を置きつつ「第三の道」を模索している
- 「境界(ボーダー)」という概念が、このテーマ全体を貫く核心キーワードである
- 5つの頻出論点パターンを把握し、読みながら照合する習慣をつける
- 背景知識は「速く深く読む補助線」として使い、答えの根拠は必ず本文から取る
- 記述問題では「筆者の地図」を描き、筆者の論理に基づいて答える
グローバリズムとナショナリズムのテーマは、これからも大学入試現代文の最重要テーマであり続けます。今回の解説を武器に、初見の評論文でも自信を持って読み解いていきましょう。
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