数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
今回のテーマは、大学入試・高校入試でも頻出の江戸時代の近世随筆、特に新井白石の「折たく柴の記」と本居宣長の「玉勝間」に絞って、徹底解説します。「古文は苦手…」「近世の文章って何が違うの?」という受験生にこそ読んでほしい内容です。読み終わる頃には、近世随筆の読み方の軸がしっかり身につくはずです。
はじめに|なぜ「折たく柴の記」「玉勝間」が入試で重要なのか
江戸時代の随筆は、センター試験・共通テスト・難関大の二次試験でも繰り返し出題されている頻出ジャンルです。特に「折たく柴の記」(新井白石)と「玉勝間」(本居宣長)は、近世随筆の代表作として入試問題集や過去問でも頻繁に登場します。
しかし多くの受験生は、平安・鎌倉時代の古典(源氏物語・徒然草など)ばかりを勉強して、近世随筆を後回しにしがちです。実はここが大きなチャンスです。近世随筆は文語と口語の中間に位置する文体で、読み慣れてしまえばむしろ得点源になります。
翔先生も毎年の授業でこう言っています。
「近世随筆を制する者が、古文全体を制すると言っても過言ではありません。特に『玉勝間』は現代の評論に近い論理構造を持っているので、現代文が得意な生徒ほど読みやすいはずです。」
まずは二つの作品の基本情報から確認しましょう。
核心情報|「折たく柴の記」と「玉勝間」の基礎知識
「折たく柴の記」(おりたくしばのき)とは
作者:新井白石(あらいはくせき)
成立:江戸時代中期(1716年頃)
ジャンル:自叙伝的随筆(回想録)
新井白石は、徳川家宣・家継に仕えた儒学者・政治家です。「折たく柴の記」は、白石が晩年に書いた自伝的随筆で、父への追慕、自らの政治的経験、学問への情熱が綴られています。
タイトルの「折たく柴」は、「折り焚く柴の煙のようにはかなく立ち消える命や思い出」を表すイメージで、紀貫之の和歌「大空はむかしながらに変はらねど 折たく柴の煙へにけり」に由来します。哀愁漂う題名からも、作品全体の情調が伝わってきます。
入試で問われる主なポイント:
- 白石の父親像・家族への敬愛の描写
- 漢文訓読調と和文が混ざり合う独特の文体
- 場面の状況説明と心情描写の読み取り
- 語彙:「はべり」「侍り」などの丁寧語・謙譲語の理解
「玉勝間」(たまかつま)とは
作者:本居宣長(もとおりのりなが)
成立:江戸時代後期(1793〜1812年)
ジャンル:学問的随筆・随想
本居宣長は、国学の大成者として知られ、「古事記伝」などの大著で有名です。「玉勝間」は宣長が晩年に書き続けた随筆集で、全14巻に及びます。学問論・文学論・日常の観察・批評が収録されており、論理的な文章展開が特徴です。
タイトルの「玉勝間」は、「玉を入れる籠(かごま)」を意味し、さまざまな思いや考えを詰め込んだ随筆集というイメージです。
入試で問われる主なポイント:
- 宣長の学問・著述に対する姿勢(「師の説でも疑うべき」という独立の精神)
- 接続語・指示語を使った論理展開の把握
- 「もし〜ば」「〜こそ〜なれ」などの係り結びや条件表現
- 現代文的な読み方(主張・根拠・反論の構造)との融合
具体的な方法|近世随筆の読み方と入試対策
①文体の特徴を理解する:近世随筆は「漢文+和文の融合体」
近世随筆を読む上で最初の壁は文体の独特さです。平安時代の和文(源氏物語など)と違い、漢文訓読の影響を強く受けています。
「折たく柴の記」の例文を見てみましょう。
「わが父は、その人となり剛毅にして、しかも温良なる者にてありき。学を好み、書を愛し、終日読書を事とせられき。」
「〜にして」「〜ありき」「〜せられき」という表現は、漢文訓読調の語尾です。平安古文の「〜なりけり」「〜ぞありける」とは異なる質感を持っています。慣れないうちは「なんか硬いな」と感じるかもしれませんが、逆に意味が取りやすいという側面もあります。
実践ポイント:
近世随筆を読む際は「訓読調の語尾に慣れること」が最優先です。「〜き(過去)」「〜けり(詠嘆・過去)」「〜たり(完了・存続)」の違いを意識しながら読み進めましょう。
②「玉勝間」は論理構造を図式化して読む
「玉勝間」の最大の特徴は、現代評論に近い論理展開です。宣長の主張は常に「問題提起→主張→根拠→結論」という形を取っています。
有名な一節、学問論の部分を例に取ります。
「師の説なりとも、いかにも我こころに得心のゆかざることは、師の説なりとも、信ずべからず。(中略)師の説を信ずることなく、ただ道理のある方を取るべし。」
この箇所の論理構造を図式化すると:
- 問題提起:師の説をどこまで信じるべきか?
- 主張:師の説でも、自分が納得できなければ信じてはいけない
- 根拠:学問の目的は真理を求めることであり、権威に従うことではない
- 結論:道理のある方を取るべきである
このように現代文の読解技術(論理マップ)を古文に応用するのが、「玉勝間」攻略の核心です。
③頻出語彙・文法を集中的に押さえる
近世随筆に頻出の語彙・文法をまとめます。
「折たく柴の記」頻出表現:
- 「はべり・侍り」→ 謙譲・丁寧の補助動詞
- 「いかにも」→ どうあっても・本当に
- 「〜にてありき」→ 〜であった(漢文訓読調)
- 「おぼしめす」→ (貴人が)お思いになる
「玉勝間」頻出表現:
- 「いかが」→ どのように・いかに(問いかけ)
- 「〜こそ〜なれ」→ 係り結び(強調)
- 「さるは」→ そうではあるが・しかし(逆接の接続詞)
- 「うけひく」→ 承認する・受け入れる
- 「よしなし」→ 理由がない・つまらない
④設問別・解き方の戦略
入試では以下のような設問形式が多く出ます。
【傍線部の解釈問題】
近世随筆では「漢文訓読調の語尾」を現代語に直す練習が必要です。例えば「〜せらるること多かりき」は「〜されることが多かった」とスムーズに訳せるようにしておきましょう。
【筆者の主張・心情把握問題】
「玉勝間」では宣長の「主張の根拠」を問う設問が頻出です。傍線部の直前・直後に必ず根拠が書かれているので、接続詞(「さるは」「されば」「かくて」)を目印にして段落構造を把握しましょう。
【文法・語彙問題】
助動詞「き・けり・たり・り」の意味識別、係り結びの法則は必ず出ます。特に「こそ〜已然形」の係り結びは「玉勝間」に頻出です。
藤原&翔先生の実践アドバイス
藤原進之介より
私が受験生・保護者の方々に強調したいのは、近世随筆は「現代文の読解力」と「古文の文法知識」の両輪で読むという点です。
「玉勝間」は特に顕著で、宣長の文章は論理的に整然としています。現代文で鍛えた「主張と根拠を分ける読み方」をそのまま持ち込めば、古文が苦手な生徒でも驚くほど読めるようになります。
一方「折たく柴の記」は感情・情景の描写が豊かなので、「誰が、誰に対して、どんな感情を持っているか」という人物関係の把握を最優先してください。白石の父への敬愛と追慕の感情を軸に読むと、文章全体の意味がスッと入ってきます。
翔先生より
授業で生徒によく言うのですが、近世随筆の音読は絶大な効果があります。
特に「折たく柴の記」は、声に出して読むことで漢文訓読調のリズムが体に馴染みます。「〜にてありき」「〜せられき」という語尾の音を耳で覚えてしまえば、初見の文章でも引っかかることなく読み進められます。
また「玉勝間」については、段落ごとに「一言でまとめる練習」が非常に有効です。各段落を読んだら、「つまりこの段落は○○と言っている」と10字以内で要約してみる。これを繰り返すと、宣長の論理の流れが見えてきて、記述問題にも強くなります。
よくある失敗と解決策
失敗①「近世だから現代語に近いだろう」と油断する
近世随筆は確かに読みやすい面もありますが、漢文訓読調の語彙・文法・語順で躓く受験生が多いです。「ありき」を「ある木?」と誤解したり、「〜せられ」の受け身・尊敬の判断ができなかったりするケースが典型的です。
解決策:「き・けり・たり」などの文語助動詞は必ず文語文法の教材で確認してください。近世文語だからといって現代語の感覚のみで読むのは危険です。
失敗②「玉勝間」を感覚で読んで論理を見失う
宣長の文章は長い。そして接続詞が多い。「されど」「しかれども」「さるは」などが連続すると、主張の方向性を見失いがちです。
解決策:接続詞を○で囲みながら読む習慣をつけてください。逆接なのか順接なのかを意識するだけで、論理の流れが格段に見えやすくなります。
失敗③「折たく柴の記」の人物関係を混乱させる
白石の回想録は複数の人物が登場し、誰が誰に何を言っているのか混乱しやすいです。特に敬語表現(尊敬・謙譲)の主語判定を誤ると、設問でも大きく失点します。
解決策:読み始めたらまず「登場人物リスト」をメモしましょう。名前・関係・立場を整理してから本文に戻ると、敬語の方向性も自然に判断できます。
今日からできるアクション
難しく考えず、今日からすぐに実践できることを3つにまとめます。
-
「玉勝間」の有名章段(師の説・学問論)を1段落だけ音読する
音読しながら接続詞を○で囲み、「主張→根拠→結論」の流れを矢印でつなぐ。1段落10分もあれば十分です。 -
「折たく柴の記」の冒頭部分(父の回想場面)を現代語訳する
訳した後で「誰の心情が書かれているか」「どんな場面か」を1〜2行でまとめてみましょう。記述力が鍛えられます。 -
漢文訓読調の語尾リストを単語帳にまとめる
「〜にてありき」「〜せられき」「〜べし」などを自分なりの単語帳に整理。これを繰り返し見ることで文体感覚が身につきます。
この3アクションを1週間続けるだけで、近世随筆への苦手意識がかなり薄れるはずです。
まとめ・日本国語塾トップについて
今回は江戸時代の近世随筆「折たく柴の記」(新井白石)と「玉勝間」(本居宣長)の読み方と入試対策を解説しました。
ポイントをおさらいします:
- 「折たく柴の記」は漢文訓読調の文体・人物関係の把握・感情描写の読み取りが鍵
- 「玉勝間」は論理構造を図式化し、現代文の読解技術と組み合わせて読む
- 近世随筆に頻出の語彙・文法(助動詞・係り結び)は必ず整理しておく
- 音読・段落要約・登場人物リストの作成が実践的な対策の柱
近世随筆は対策すれば必ず得点できるジャンルです。「折たく柴の記」「玉勝間」を制して、入試本番で大きなアドバンテージを手に入れてください!
翔先生もいつも言うように、「どの科目も、正しい方法で繰り返せば必ず伸びる」。国語も例外ではありません。一緒に頑張りましょう!
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