はじめに
数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
「古文を読んでいると、誰が何をしているのかわからなくなる」「主語の判定でいつもミスをしてしまう」——このご相談、本当によく届きます。模試の結果を持って来塾する生徒さんの答案を見ると、内容はなんとなく読めているのに、主語のズレが原因で設問の正答率がガクッと落ちているケースが非常に多いです。
先日も、横浜校に通う高校2年生のAさんが「古文が大嫌いです。誰が誰に何をしているのか、全然わからないんです」と相談に来てくれました。話を聞いてみると、単語も文法もある程度勉強しているにもかかわらず、主語が飛びすぎてついていけないとのこと。これは彼女だけの問題ではありません。古文の主語判定は、多くの受験生が「知識はある、でも読めない」という壁にぶつかるポイントです。
この記事では、古文の主語判定がなぜ難しいのか、そして確実に主語を当てるための具体的なコツをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。読み終えた後には、今日からすぐに使えるアクションが必ず手に入ります。ぜひ最後まで読んでください。
結論から言います|藤原の答え
ズバリ答えます。古文の主語判定を確実に当てるコツは、「敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)」と「接続助詞(て・ば・に・を)」の2点を軸にすることです。
この2つさえマスターすれば、主語判定の正確さは劇的に上がります。
よくある誤解として「前後の文脈から雰囲気で読む」というものがありますが、それだけでは高校入試・大学入試の複雑な文章には通用しません。「なんとなく主人公っぽいから」「話の流れからして主語はこれだろう」という感覚頼りのアプローチが、古文の主語判定ミスを生む最大の原因です。
感覚ではなく、文法的な根拠を持って主語を特定する習慣をつけること——これが全てのスタートです。
詳しく解説|なぜそうなのか
① 古文は「主語の省略」が当たり前の言語だから
現代語では「私は〜した。彼は〜した」と主語をいちいち書くのが普通ですが、古文の世界では主語は徹底的に省略されます。これは当時の文章作法であり、読み手も「わかっているはず」という前提で省略するのが当然でした。
つまり、古文において主語の省略は「バグ」ではなく「仕様」なのです。これを知らずに「書いていないからわからない」と諦めてしまうのはもったいない。ルールを知れば、省略されていても確実に補うことができます。
特に日記文学(土佐日記・蜻蛉日記・更級日記)や物語(源氏物語・竹取物語)では、場面の主人公が前の段落から数行にわたって主語として扱われ続けることが多いです。逆に言えば、「主語が変わる瞬間」にはそれを示すシグナルが必ず埋め込まれています。
② 敬語の種類が主語を教えてくれる
古文の主語判定において、敬語は最も信頼できる根拠です。特に尊敬語と謙譲語の区別が重要です。
- 尊敬語:動作の主体(主語)が目上の人であることを示す。例:「給ふ」「おはす」「おはします」「のたまふ」「御覧ず」
- 謙譲語:動作の受け手(目的語)が目上の人であることを示す。例:「申す」「奉る」「参る」「うけたまはる」
- 丁寧語:話し手(書き手)が聞き手・読み手に敬意を示す。例:「侍り」「候ふ」
たとえば、「帝、御簾のうちに入り給ひて、女御に申し給ふ」という文があったとします。「給ふ」は尊敬の補助動詞なので、主語は帝(目上の人物)です。「申し」は謙譲語なので、帝が誰か(ここでは女御)に対して申し上げている、つまり帝の行為です。
このように、敬語を正確に識別できれば、文中に主語が書かれていなくても「誰の行為か」が確定できるのです。これは他のどんな読解テクニックよりも強力な根拠になります。
③ 接続助詞が「主語の切り替わり」を示している
古文の主語判定において、接続助詞の役割は非常に大きいです。特に以下の法則は試験で直接使える重要知識です。
【接続助詞と主語の関係】
- 「て・して・つつ」→ 主語が変わらない(同一主語)
- 「ば・が・に・を」→ 主語が変わりやすい(主語転換)
例文で確認しましょう。
「男、女のもとに文を書きて、使ひをつかはしたり。」
→「て」があるので、「文を書いた」のも「使いをつかわした」のも同一人物(男)。
「女、文を読みて、涙を流して、返事を書きて、使ひに持たせたり。」
→「て」が連続しているので、すべての動作の主語は「女」。
「男、女のもとに文を書き送りたれば、女いたく泣きにけり。」
→「ば」があるので、前半「文を書き送った」のは男、後半「泣いた」のは女と主語が切り替わっている。
この「て→同一、ば→転換」の法則は、古文の主語判定における最も使いやすいルールの一つです。100%ではありませんが、判定に迷ったときの有力な手がかりになります。
④ 登場人物の「身分・関係性・立場」を先に整理する
古文の主語判定で失敗する生徒の多くが、文章を読み始める前に登場人物の整理をしていません。古文、特に物語や日記に登場する人物には明確な身分や役割があります。
読み始める前に確認すべきこと:
- 誰が最も身分が高いか(帝・上皇・貴族など)
- 主な登場人物は何人か(2〜3人が多い)
- 人物間の関係性(主従関係、恋愛関係、親子関係など)
身分の高い人物には尊敬語が使われ、身分の低い人物が目上に行う行為には謙譲語が使われます。登場人物の身分関係を先に把握しておくことで、敬語の方向性が一気に明確になります。
また、「誰が誰に何をしている場面か」というシーンの状況を先読みすることも有効です。たとえば、宮中の場面なら帝や中宮が主語になりやすく、使者が走り回る場面なら下位の者が主語になる可能性が高い——こうした文脈読みと文法根拠を組み合わせることが、主語判定の精度を高めます。
⑤ 「読み返し」より「読み進み」——主語メモを取る習慣
「主語がわからなくなったら前に戻る」という対処をしている人は要注意です。読み返しが増えれば増えるほど、試験本番での時間ロスが深刻になります。
おすすめの対策は、本文を読みながら、主語が明らかになった瞬間に「(男)」「(女)」などと鉛筆で書き込んでいく「主語メモ」の習慣です。これは特に試験本番で威力を発揮します。
主語メモのポイント:
- 登場人物が初めて出てきたときに名前・身分を丸で囲む
- 接続助詞「ば」「が」「に」「を」の前後で主語を確認し、書き込む
- 尊敬語・謙譲語が出てきたら「誰の行為か」をその場で特定する
- 会話文は「誰が誰に話しているか」を括弧の外にメモする
前橋校でこの主語メモを徹底指導したところ、記述式の読解問題で「主語が誰か答えよ」という設問の正答率が、指導前の約40%から指導後は約80%近くまで向上したという実績があります。地道に見えますが、この習慣は確実に結果につながります。
翔先生の補足・現場からの声
翔先生:藤原先生の解説、本当にその通りですね。現場で生徒さんを教えていて感じるのは、「敬語の方向性」をきちんと理解している生徒とそうでない生徒では、古文の主語判定の精度がまったく違うということです。
特に私がよく使う指導法は、「敬語は矢印で考える」という方法です。
たとえば「奏す」という謙譲語は、「天皇・上皇に申し上げる」という意味です。この場合、動作の主体(主語)は天皇より身分が低い人物で、動作の向かう先(目的語)は天皇・上皇です。これを「主体→天皇・上皇」という矢印で視覚化すると、主語が誰なのかが一瞬でわかります。
謙譲語の「奏す」が出てきた→主語は天皇・上皇以外の誰か、というように逆算できるわけです。これは特に複数の人物が絡む宮廷もののシーンで効果抜群です。
また、もう一つ現場でよく伝えているのが「会話文の主語は直前の人物と変わる」の傾向です。日本語の会話では「Aが言った。Bが答えた」というやり取りが基本なので、会話文が続く場面では主語が交互に変わる可能性が高いです。この傾向を知っておくだけで、会話シーンの主語判定がかなり楽になります。
生徒さんの中には「試験本番で焦ると全部忘れてしまう」という方もいます。そういう方には、「まず敬語を見る、次に接続助詞を確認する」という2ステップを呪文のように体に染み込ませてもらいます。焦ったときほど、この2ステップに立ち戻ってほしいです。
また、主語判定が苦手な生徒さんは往々にして「現代語訳を先に頭の中で作ろうとしすぎている」傾向があります。完璧に訳そうとするより、「誰が、何をした」という骨格だけを先に拾う読み方に切り替えると、一気に読みやすくなります。ぜひ試してみてください。
こんな場合はどうする?|ケース別アドバイス
ケース① 「敬語が全然わかりません」という場合
まずは最重要敬語を10語だけ完璧に覚えることから始めてください。全部覚えようとして結局何も定着しない、というのが一番の失敗パターンです。
最優先で覚える敬語10語:
- 給ふ(尊敬の補助動詞/本動詞)
- おはす・おはします(尊敬「いる・行く・来る」)
- のたまふ(尊敬「言う」)
- 御覧ず(尊敬「見る」)
- 召す(尊敬「呼ぶ・着る・食べる・乗る」)
- 申す(謙譲「言う」)
- 奉る(謙譲「差し上げる・着せ申し上げる」)
- 参る(謙譲「参上する・差し上げる」)
- 候ふ(丁寧「あります・います」)
- 侍り(丁寧「あります・います」)
この10語を使いこなせるようになるだけで、多くの入試問題の主語判定に対応できます。まずここを固めてから、語彙を広げていきましょう。
ケース② 「接続助詞の法則を知っているのに判定を間違えてしまう」という場合
「て→同一主語、ば→転換」の法則は大切ですが、例外もあります。特に注意が必要なのが「自敬表現(最高敬語)」の場面と、「主語が文脈上明らかな場合に省略が続く場面」です。
接続助詞の法則はあくまでも「主語転換の可能性が高い/低い」という確率的なルールです。法則に頼り切らず、必ず敬語の種類も同時に確認する習慣をつけてください。「敬語で決め打ちし、接続助詞で補強する」という優先順位が正解です。
ケース③ 「文章が長くなると後半で主語がわからなくなる」という場合
これは多くの受験生が経験する悩みです。対策は2つあります。
1つ目は、先述の「主語メモ」をこまめに書き込むこと。特に主語が変わるタイミングで書き込んでおけば、後半でも振り返りがすぐできます。
2つ目は、段落(意味のかたまり)ごとにシーンを把握する読み方を練習することです。「この段落は、○○が△△に〜している場面だ」と一言でまとめる癖をつけましょう。長文でも場面ごとに区切って整理することで、主語の迷子を防げます。
ケース④ 「入試まで時間がない、どこから手をつけるべきか」という場合
時間がないなら迷わず「敬語の識別→接続助詞の確認」の2ステップに絞って集中練習してください。他の文法事項や単語の拡充は、この2点の後回しでOKです。
具体的には、手持ちの問題集や過去問を使い、主語判定に関する設問だけをピックアップして解き直すという「テーマ別解き直し」が効果的です。1週間で10〜15問を集中してこなすだけで、確実に精度が上がります。
ケース⑤ 「古文が初学者で何もわからない」という場合
基礎から固めたい方は、まず「歴史的仮名遣い→基本単語50語→文法(活用と助動詞の基本)→敬語」の順番で学習してください。いきなり主語判定に取り組む前に、この順番で基礎を積み上げると、主語判定の理解がスムーズになります。
また、初学者の方ほど「現代語訳付きの古文を声に出して読む」練習をおすすめします。耳と口で文章のリズムや構造を体で覚えることが、古文読解の土台になります。
まとめ・日本国語塾トップのご紹介
この記事でお伝えした、古文の主語判定を確実に当てるコツをまとめます。
- 敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)を正確に識別する——これが主語判定の最強の武器。
- 接続助詞「て→同一主語、ば→主語転換」の法則を活用する——敬語と組み合わせて使うと精度が上がる。
- 読む前に登場人物の身分・関係性を整理する——シーンの把握で敬語の方向性が見えやすくなる。
- 主語メモを書き込みながら読む——感覚ではなく文法根拠で主語を確定する習慣を。
- 会話文の主語は交互に変わる傾向を意識する——翔先生直伝の現場ノウハウ。
古文の主語判定は、感覚や雰囲気ではなく、敬語と接続助詞という明確な文法ルールで解決できます。「なんとなく読む」から「根拠を持って読む」へのシフトが、得点アップへの最短ルートです。今日からぜひ実践してみてください。
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