はじめに:なぜ「因果関係」の問題で迷うのか
国語の読解問題のなかで、「傍線部の理由を答えなさい」という形式の問題に苦手意識を持つ生徒は少なくありません。とくに、文章の中に「なぜなら」という言葉が直接書かれていない場合、どこを根拠にすればよいのか迷ってしまいがちです。
今回取り上げるのは、「因果関係」をテーマにした文章読解です。傍線部「順番を並べるだけでは、因果を読んだことにはならないのである」をめぐる問いで、どのように根拠を探し、どの選択肢を選ぶべきかを、手順を追って確認していきます。また、この思考プロセスが数学における条件の読み取りとも共通することも後半で整理します。
今回の問題:本文の概要と設問
日本国語塾オリジナル問題の本文を引用します。
ある町で、駅前の文具店のノートの売り上げが増えた月に、図書館の利用者数も増えたとする。この二つの数字だけを見ると、「ノートが売れたから、図書館に行く人が増えた」と考えたくなるかもしれない。しかし、その月が近隣の学校の定期試験前であったなら、話は変わってくる。試験が近づいたために、ノートを買う生徒も、図書館で勉強する生徒も増えた可能性があるからである。
因果関係を考えるときに注意すべきなのは、二つの出来事が同じ時期に起きたという事実だけで、一方が他方を生み出したと決めつけないことである。時間的に近く起きた出来事は、互いに関係しているように見えやすい。しかし、本当に原因を考えるには、その結果を生んだ別の条件がないかを確かめる必要がある。順番を並べるだけでは、因果を読んだことにはならないのである。
(日本国語塾オリジナル問題)
傍線部「順番を並べるだけでは、因果を読んだことにはならないのである」とあるが、その理由として最も適切なものを、次の中から一つ選べ。
| 番号 | 選択肢 |
|---|---|
| 1 | 先に起きた出来事が、必ずしも後の出来事を生み出したとは限らないから。 |
| 2 | ノートの売り上げと図書館の利用者数は、どちらも正確な数字ではないから。 |
| 3 | 文具店と図書館は役割が違うため、そもそも比べることができないから。 |
| 4 | 定期試験前には、すべての生徒が必ず図書館で勉強するから。 |
| 5 | 原因を考えるよりも、出来事を時間順に覚えることの方が大切だから。 |
正解:1「先に起きた出来事が、必ずしも後の出来事を生み出したとは限らないから」
この選択肢が正解である理由を、本文との対応を確認しながら解説します。
本文全体の論理を整理する
本文の論理の流れを整理すると、次のようになります。
| 段落 | 内容 |
|---|---|
| 第1段落 | 具体例の提示。ノートの売り上げと図書館利用者数が同時に増えた。「ノートが売れたから利用者が増えた」と考えたくなるが、定期試験前という共通の条件が存在する可能性がある。 |
| 第2段落 | 本文の主張。「時間的に近い=因果関係がある」とは限らない。真の因果を確かめるには「別の条件がないかを確かめる」必要がある。 |
本文の核心は「時間的な順序と因果関係は別物である」という主張です。
設問箇所の分析:傍線部理由問題の3ステップ
ステップ1:傍線部の直前・直後を丁寧に読む
傍線部「順番を並べるだけでは、因果を読んだことにはならないのである」の直前の文を確認します。
本当に原因を考えるには、その結果を生んだ別の条件がないかを確かめる必要がある。
ここに「なぜ順番を並べるだけでは不十分か」の答えが書かれています。「別の条件が存在する可能性があるから、順番だけで因果を決めてはいけない」が傍線部の理由です。
ステップ2:本文の表現と選択肢を対応させる
| 本文の表現 | 選択肢1の表現 |
|---|---|
| 一方が他方を生み出したと決めつけないこと | 必ずしも後の出来事を生み出したとは限らない |
選択肢1は本文の主張を正確に言い換えたものです。「決めつけないこと」→「必ずしも~とは限らない」という対応が成立します。
ステップ3:根拠のない選択肢を消去する
本文の趣旨と選択肢の意味が一致するかを一つずつ確認します。
最も迷いやすい選択肢:5「時間順に覚える方が大切」の逆方向トラップ
選択肢5「原因を考えるよりも、出来事を時間順に覚えることの方が大切だから」は典型的な「逆方向トラップ」です。
傍線部には「順番を並べるだけでは」という言葉があります。「順番」という言葉が選択肢5の「時間順」と一見つながりがあるように見えます。しかし本文の主張は「順番だけを見ていては因果はわからない=原因を考えることが重要だ」というものです。選択肢5は「原因を考えるよりも時間順に覚える方が大切」と述べており、本文の主張と真逆の内容になっています。
全選択肢の検討:消去法
| 番号 | 選択肢(要約) | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 先に起きた出来事が必ずしも後の出来事を生み出したとは限らない | ○ | 本文「一方が他方を生み出したと決めつけないこと」に正確に対応。 |
| 2 | ノートの売り上げ・図書館利用者数は正確な数字ではない | × | 本文は数字の正確さについて言及していない。無根拠トラップ。 |
| 3 | 文具店と図書館は役割が違うので比べられない | × | 本文の話題は「役割の違い」ではなく「因果関係の読み取り方」。全体テーマトラップ。 |
| 4 | 定期試験前にはすべての生徒が必ず図書館で勉強する | × | 本文は「可能性がある」と述べているのみ。「すべての生徒が必ず」は断定が強すぎる。言い過ぎトラップ。 |
| 5 | 時間順に覚えることの方が大切 | × | 本文の主張と真逆。「原因を考えること」の重要性を主張している本文と矛盾する。逆方向トラップ。 |
国語の解き方と数学の解き方——同じ構造をしている
今回の問題のテーマである「因果関係の誤読」は、数学的な思考とも深く結びついています。
「AのあとにBが起きた」という事実は、「AがBの原因である」ことを意味しません。これは数学における証明や場合分けの考え方と同じ構造です。証明問題では、「この条件があれば必ずこの結論が導ける」という関係を丁寧に確かめることが求められます。「なんとなく使えそうな条件」を並べただけでは証明にはなりません。それぞれの条件が結果に対してどのような役割を果たしているかを一つずつ確認する必要があります。
国語で「別の条件が両方に影響している可能性がある」と考える訓練は、数学で「この条件は本当に必要か・十分か」と問い直す思考と重なります。読解の精度が上がると、数学の答案の論理的な精度も上がる可能性があります。
数強塾グループ・日本国語塾が育てる力
日本国語塾は、数強塾グループが運営する国語専門の指導機関です。国語は「なんとなく読んでなんとなく選ぶ」教科ではありません。文章には論理の構造があり、設問には解くための手順があります。その構造と手順を丁寧に学ぶことで、感覚ではなく根拠で答えを選べるようになります。
「因果関係の読み取り」を丁寧に学ぶことは、論理的に考える習慣を育てることでもあります。その習慣は、国語にとどまらず、理科の実験の考察、数学の文章題・証明問題にも生きてきます。
まとめ
- 「順番が前後している」ことと「因果関係がある」ことは別物である
- 傍線部理由問題は、傍線部の直前・直後に根拠がある場合が多い
- 本文の表現と選択肢の言葉を対応させることで、正確な解答が可能になる
- 「言葉が似ている」選択肢は逆方向トラップの可能性がある
- 因果関係を見極める論理は、数学の証明や場合分けの思考と共通する構造を持つ
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