数強塾グループの国語専門塾、日本国語塾TOPの藤原進之介です。講師の翔先生と一緒に解説します!
はじめに
藤原:翔先生、今回は「課題文要約」の演習第3回ですね。
翔先生:はい。第1回・第2回で要約の基本フォーム、つまり「話題提示→筆者の主張→根拠→結論」の骨組みを学びましたが、今回はその型を実戦形式で10本ノックしていきます。
藤原:今回のテーマは「減点されない要約」です。要約は満点を取りに行くというより、いかに減点を避けるかという発想が大事なんですよね。
翔先生:そうですね。字数オーバー、具体例のそのまま書き写し、筆者の主張と自分の意見の混同、指示語の丸写しなど、よくある失点パターンを一つひとつ潰していきましょう。全問オリジナルの短い課題文で、要約する練習をしていきます。
問題(全10問)
第1問
次の文章を60字以内で要約しなさい。
言葉は単なる伝達の道具ではない。人は言葉を用いて世界を切り分け、名づけることによって初めて、そのものを認識できるようになる。虹の色の数が文化によって異なるのは、色そのものが違うからではなく、色を区切る言葉の体系が異なるからである。つまり言葉は、思考を成立させるための枠組みそのものなのである。
第2問
次の文章を80字以内で要約しなさい。
科学技術の進歩は、私たちに多くの利便性をもたらしてきた。しかしその一方で、原子力発電の事故や遺伝子操作をめぐる議論に見られるように、技術が社会に与える影響を予測しきれないという問題も生じている。技術は使い方次第で益にも害にもなる。だからこそ、技術を開発する専門家だけでなく、社会全体でその是非を議論する仕組みが必要とされている。
第3問
次の文章を70字以内で要約しなさい。
インターネットの普及により、私たちは膨大な情報に瞬時にアクセスできるようになった。しかしそれは同時に、自分の見たい情報だけを選び取り、異なる意見に触れにくくなるという弊害も生んでいる。検索やSNSの仕組みが、利用者の興味に合わせて情報を絞り込むためである。情報化社会の豊かさは、視野の狭さと表裏一体である。
第4問
次の文章を90字以内で要約しなさい。
地球温暖化への対策として、個人の努力に期待する声は根強い。節電やごみの削減は確かに大切である。しかし、温室効果ガスの排出量を統計で見ると、その大部分は大企業や発電所などの大規模な排出源によるものであり、個人の生活習慣の改善だけでは焼け石に水である。真に効果のある対策のためには、企業活動や国の政策を変える制度設計こそが優先されるべきだ。
第5問
次の文章を60字以内で要約しなさい。
優れた芸術作品は、鑑賞者に「わかりやすさ」を与えることを目的としない。むしろ、見る者を戸惑わせ、これまでの価値観を揺さぶることにこそ、芸術の本質的な役割がある。すぐに理解できてしまう作品は、既にある常識をなぞっているにすぎない。芸術とは、私たちの認識の枠組みそのものを問い直す営みなのである。
第6問
次の文章を80字以内で要約しなさい。
近年の教育現場では、正解を素早く導く力が重視されがちである。しかし社会に出れば、そもそも正解の定まっていない問題に直面することの方が多い。必要なのは、答えを暗記する力ではなく、問い自体を立て、複数の視点から検討し続ける姿勢である。学校教育は、この「問いを育てる力」をこそ育むべきではないか。
第7問
次の文章を70字以内で要約しなさい。
歴史とは、過去に起きた出来事をそのまま記録したものではない。同じ出来事であっても、後世の人々がどのような視点からそれを見るかによって、意味づけは大きく変わる。ある時代には英雄とされた人物が、別の時代には侵略者と評価されることもある。歴史とは、常に現在の視点から過去を解釈し直す営みなのである。
第8問
次の文章を90字以内で要約しなさい。
会話において、相手の発言をただ聞き取ることと、相手の意図を理解することとは別の行為である。言葉の意味を正確に受け取っていても、相手がなぜその言葉を発したのかという背景や状況を汲み取れなければ、真の意味でのコミュニケーションは成立しない。円滑な対話のためには、言葉そのものだけでなく、その言葉が発せられた文脈を読み取る力が求められる。
第9問
次の文章を80字以内で要約しなさい。
効率化を追求する社会では、成果を数値で測れる仕事が高く評価されやすい。しかし、介護や保育のように、人と人との関わりそのものに価値がある労働は、その成果を数値化することが難しい。数値で測れないからといって、その労働の価値が低いわけではない。労働の評価軸を数値だけに頼ることには、大きな限界がある。
第10問
次の文章を100字以内で要約しなさい。
私たちは、他者と関わることによって初めて自分自身を知ることができる。一人で内省しているだけでは、自分の考え方の癖や価値観の偏りに気づくことは難しい。他者という異なる視点にぶつかることで、自分の輪郭がはっきりと浮かび上がってくるのである。したがって、自己理解を深めたいのであれば、むしろ積極的に他者との対話に身を投じるべきだと言える。
解答・解説
第1問の解答と解説
解答例:言葉は思考の枠組みであり、世界を名づけ区切ることで人は初めて物事を認識できる。(39字)
この文章の骨格は「言葉=単なる伝達道具ではない」という否定+「言葉=思考を成立させる枠組み」という主張です。虹の色の例はあくまで主張を支える具体例なので、要約には入れません。よくある失点は、虹の色の話を要約に取り込んでしまい、抽象化されていない点です。「〜ではない」という否定表現を落とさず、筆者が本当に言いたい肯定的な主張を中心に据えることが大切です。
第2問の解答と解説
解答例:科学技術は使い方次第で益にも害にもなり、社会への影響を予測しきれないため、社会全体で是非を議論する仕組みが必要だ。(56字)
原子力発電や遺伝子操作は具体例なので固有名詞は要約に含めません。「利便性をもたらす」「予測しきれない問題がある」「だから社会全体で議論する仕組みが必要」という3段構成を圧縮するのがポイントです。多くの受験生は具体例の面白さに引きずられて、結論部分の字数を削ってしまいがちなので注意しましょう。結論文(最後の一文)は必ず要約に残す意識を持ってください。
第3問の解答と解説
解答例:情報化社会は膨大な情報へのアクセスを可能にした一方、興味に合わせた情報の絞り込みにより視野を狭める弊害も生んでいる。(58字)
この文章は「豊かさ」と「視野の狭さ」という対比構造が核です。最終文「表裏一体である」は対比のまとめなので、要約では対比関係が伝わるように「一方」「反面」などの接続語で明示するとよいでしょう。検索やSNSという具体的な仕組みの説明は、理由づけとして残しても削っても大きな減点にはなりませんが、字数が厳しい場合は思い切って削ります。
第4問の解答と解説
解答例:温室効果ガスの排出量の大部分は大企業や発電所など大規模排出源によるものであり、個人の努力より企業活動や国の政策を変える制度設計こそ優先すべきだ。(74字)
この文章の構造は「一般論(個人の努力が大切とされる)→筆者の反論(実は大規模排出源が原因)→結論(制度設計が優先)」という譲歩構文です。譲歩部分(節電やごみの削減は大切)は要約に入れず、逆接以降の筆者の本当の主張を中心にまとめるのが鉄則です。譲歩部分をそのまま要約に入れてしまうと、筆者の主張と正反対の印象を与えてしまうため、大きな減点対象になります。
第5問の解答と解説
解答例:芸術の本質は理解しやすさではなく、鑑賞者の認識の枠組みを揺さぶり問い直すことにある。(41字)
「わかりやすさを与えることを目的としない」という否定と、「価値観を揺さぶる」「認識の枠組みを問い直す」という肯定的主張を対比的にまとめます。最終文が結論の言い換えになっているので、最終文を軸にすると要約しやすい典型例です。「すぐに理解できる作品は常識をなぞっているにすぎない」という具体的説明は、主張を補強する理由なので優先度は下がります。
第6問の解答と解説
解答例:正解の定まらない問題が多い社会では、答えを暗記する力より問いを立て多角的に検討する姿勢が必要であり、学校教育はその力を育むべきだ。(65字)
「近年の教育現場では〜重視されがちである」は現状批判の前置きなので簡潔にとどめ、「しかし」以降の逆接部分に主張の重心があります。最終文が疑問形(〜ではないか)になっていますが、これは婉曲的な主張の提示なので、要約では断定形に直して書くのが基本ルールです。疑問形をそのまま要約に残すと、筆者の主張が定まらない印象を与えてしまいます。
第7問の解答と解説
解答例:歴史とは過去の出来事の単なる記録ではなく、現在の視点から絶えず解釈し直される営みである。(44字)
英雄と侵略者の評価が分かれるという具体例は、あくまで「意味づけが視点によって変わる」ことを示す一例に過ぎません。冒頭の否定(単なる記録ではない)と末尾の肯定(現在の視点から解釈し直す営み)という対の構造をつかめば、中間の具体例を削っても要約は成立します。固有名詞や具体例をそのまま書き写す解答は、この設問では大きな減点対象です。
第8問の解答と解説
解答例:言葉を正確に聞き取ることと相手の意図を理解することは別であり、円滑な対話には言葉の意味だけでなく発言の背景や文脈を読み取る力が求められる。(71字)
この文章は「聞き取ること」と「理解すること」を区別する対比構造が骨格です。前半の対比を落とさず、後半の「文脈を読み取る力が必要」という結論につなげることが要求されています。「言葉の意味を正確に受け取っていても」という譲歩部分を落とさずに要約に組み込む点が、この問題のやや難しいポイントです。
第9問の解答と解説
解答例:介護や保育のように成果を数値化しにくい労働もあり、労働の価値を数値だけで測る評価軸には限界がある。(48字)
「効率化を追求する社会」という前置きは背景説明なので、要約では簡略化して構いません。核となる主張は「数値化できないからといって価値が低いわけではない」「数値だけに頼る評価には限界がある」という2文です。介護・保育という具体例は、抽象的な主張の理解を助ける役割なので、字数に余裕がなければ「数値化しにくい労働」と抽象化して処理します。
第10問の解答と解説
解答例:人は他者という異なる視点にぶつかることで自分の輪郭を知ることができ、一人での内省だけでは気づきにくい自分の癖や偏りに気づけるため、自己理解には他者との対話が必要だ。(83字)
この文章は「他者との関わりの重要性→一人の内省の限界→結論として他者との対話を推奨」という三段構成です。「したがって」以降の結論文を必ず要約の最後に置くことが重要で、これを省略すると筆者の主張の言い切りが弱くなり減点されます。また、「べきだと言える」という婉曲表現は、要約では「必要だ」のように断定形に直すのが望ましい処理です。
藤原&翔先生のワンポイント
翔先生:10問通してみると、共通するパターンが見えてきますね。
藤原:その通りです。要約でまず探すべきは「逆接(しかし・だが)」と「結論を示す語(だから・したがって・こそ)」です。この2つを見つければ、譲歩部分と本当の主張部分を切り分けることができます。
翔先生:そして固有名詞や具体例は、原則として抽象化して落とすか、字数に余裕があるときだけ短く残す。これも徹底したいですね。
藤原:疑問形や婉曲表現(〜ではないか、〜べきだと言える)を要約でそのまま使わず、断定形に言い換える練習も重要です。この3つのルールを意識するだけで、要約の得点は大きく安定します。
まとめ・日本国語塾TOPについて
今回は課題文要約の演習第3回として、10題のオリジナル短文を使い、実戦形式で要約の型を確認してきました。逆接の後ろに主張がある、具体例は抽象化する、婉曲表現は断定形に直す——この3原則を意識するだけで、要約の答案は格段に安定します。ぜひ繰り返し解き直して、自分の言葉でスムーズに要約が書けるようになるまで練習してみてください。
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